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再現ドラマは大味すぎます。

 突如、NPCの知らない兵士が現れます。やけに重装備で、まるで、大学生で山岳部の方のようです。二人に近寄ります。母役もわたし役も、顔を向けるだけで、銃は動かしません。

「偶然、通りかかった者です」


 あり得ない。ギルド戦のマップに、無関係なプレイヤーは入れない。入ってきたらバグです。ギルド戦で現れた審判の代わりに、出演したのでしょう。


「雪がきれいで、絶景ですね。どうでしょうか、雪で撃ち合ったら?」

「撃ち合いを雪でする? どういうことです」

 わたし役が、怪訝そうに首を傾げていますが、もし、現実で、10キロもある棒を、片腕を伸ばしたまま、こんな長時間耐え抜いたら、体痛めます。

 山岳部みたいな人は、立ったまま、雪を両手で丸く固めていました。

「戦車で雪の弾を使って、撃ち合いをしませんか? そして勝った側がギルド戦の勝者としませんか?」

 聞いたこともないを通り越して、繰り返しになりますが、乗り物としての戦車は、『共トレ』で実装されてないです。

「あたいはそれでいいね」

「わたしも、賛成!」


 賛成するなよ。21歳以上サーバーAIの作ったシナリオ、無理ありすぎです。

 賛成した理由を20文字以内で書きなさいって、国語の試験のように、AIに尋ねてやりたい!

 BGMのアニメ版『共トレ』のエンディング曲は、三番の歌詞が終わり、少しづつボリュームが下がっています。

 BGMはなくなりました。

 モニターでは、いきなり、戦車が二台大写しになります。わたし役と、母役がそれぞれに乗り込みます。うーん、人の大きさと比較すれば、大きさは、小型四輪駆動車くらいなのかな。

 戦車の内側は、凄いハイテクです。パネルタッチモニターには、計器類が表示されています。シートに座れば、ゴーグルを嵌めます。なかは、小型四輪駆動車よりかなり、広いようです。

 物理法則に反しますが、再現ドラマやゲームでは、しょっちゅうあることです。

 あ、映像がゴーグルからに切り替わりました。顔を動かせば、後ろや横でも見えるのです。

 わたし役が、シートベルトをしますが、胸の下を通すとき、わざわざ胸がアップになります。ヘッドセットをしてから、四角いハンドルを、握りました。


 山岳部みたいな人が、青い旗を片腕で上げています。さっきまで、山中だったのに、また平地になってます。所々、窪地になったり、高くなったりしています。

「外から見たら、各国で使われている戦車なのに、なかはハイテク! ひとりで操縦しながら、戦闘もできる。銃や大砲が苦手。つまり、武器が嫌いなら、雪の弾で撃ち合える。わたしの乗っているのは、日本製の10式戦車」

 わたし役は、戦車ゲームの宣伝みたいなセリフを吐いてます。21歳以上サーバーさん、今度、オンライン戦車ゲームを始めるのでしょうか?


 わたし役が四角いハンドルを、額に光の粒を輝かせながら、必死の形相で動かしています。

 戦車の種類とか、詳しく知らなーい。

「くっ、負けない」

 雪を舞い散らせながら、カタピラが猛烈な早さで走ります。時速百キロ近いはずです。戦車はいきなり、窪地で急停車しました。現実なら、大怪我するはずです。

 また、わたし役に映像が切り替わります。「うっ」とつらそうな声をあげました。上体が前のめりになり、シートベルトが体に食い込みます。

 ベルトがX字になっていますが、胸のふくらみを避けるように装着しています。

 遊びが多いベルトなのか、伸びるベルトのみたいです。迷彩服なのに、腰のくびれを自慢しているかのようです。自分のスタイルを自慢する嫌な女みたいです。

「敵さんを見つけたわ。距離約二百メートル。砲弾の種類は、ゆき玉!」

 ゴーグルから覗いた映像になりました。吹雪のように雪が降ってます。十時の真ん中に、母役が乗った戦車が砂煙を上げながら、こっちへ走って来るのが見えます。

「撃て!」

 また、わたし役の座ったままで全身が、アップになります。爆音が響き、わわっ、と唇の端が上がったようです。

 戦車が映り、大砲の先端からのカメラ視点が切り替わりました。スローモーションで、雪の弾が飛び出しています。

 母役が乗っている戦車に雪の弾が当たりました。弾が雪の粉としてベッタり張り付きます。

「勝った!」

 わたし役が、戦車の上にあるハッチを開けて出ようとしています。両手で軽々と体を出す。ここまでは構いません。

 ダンスでもするかのように、両脚を真っ直ぐ水平に伸ばしてから、地上に飛び降りました。

「試合終了です。カサカーの勝利です」

 どこに隠れていたのか分からないのですが、山岳部さんが真顔で告げます。

 いきなり、わたし役の止め画像になります。バッチりメイクをして、輝く笑顔です。


***

「再現ドラマの途中で、大変恐縮で御座いますが、ここで一旦CMとなります」

 タキシード姿のセバスチャンが、背筋が真っ直ぐなままで、上体を下げてます。

 欠伸を噛み殺したような、面持ちのネエネエ先輩に質問しました。

「先輩、退屈でしたよね?」

「え、え、そんなこと、ないよ」

 人前で、本音ほんねを聞くのは難しいです。ネエネエ先輩は、ギルドNPCに気を使う必要は、ない立場なのです。現実のが出ています。

「質問しても良いですか?」

「うんうん、遠慮なく何でも聞いて」

 何でも聞いては、困ります。中学生のとき、教科担任だった先生に、何でも聞いてで、質問したんです。


***


「先生、この学校、市立ですが、先生は県で一括募集で、一括採用されているんですよね?」

「教師のこと詳しいんだ。教職に興味ある?」

 あると言えば、ありますが、ないと言えばなかったのです。

「隣の市の市立中学から転勤で来る先生って、転勤する度に、市を転勤しますよね? 市の職員ではないんですよね。でも、中学の看板に“市立”って書いてあります。先生の給料って、市立なら、市の予算から出るんですか?」

「調べてみるね」

 公立中学の先生は、県で採用されて、市町村を転勤するのです。転勤の度、給料代わるか、知りたかっただけです。

 先生、笑顔でした。調べてくれたらしくて、翌日、放課後、職員室に呼び出されました。説明を受けましたが、さっぱり分かりませんでした。

 分かったのは、県で採用されて県内を異動するそうです。隣の市の市立中学に転勤しても、給料変わらないそうです。

 帰宅して母に話したら。

「先生が興味を持ってくれたから、将来、先生になりたいならって、特別に教えてくれたんだよ。良かったね」

 キョーミがないことを、詳しく説明されても、理解が追いつかないのです。


***


 地面埋め込み式モニターでは、『共トレ』21歳以上サーバー専用、拡張パッケージのCMが流れています。

 21歳以上サーバーのトップページで、ダウンロード販売のみだそうです。ドルで金額が表示されます。買います。コンビニで、日本円でデビットカードをチャージして、支払いを済ませるつもりです。

 モニターの回りを取り囲んでいるなかで、折りたたみ椅子に座っているのは、わたしとネエネエ先輩だけです。

 プロ野球で審判のアウト、セーフの判断に監督が抗議をして、選手が輪になって集まってるみたいです。

 横目でネエネエ先輩をチラッと見ました。

 ぼんやりしています。

 分かりやすく、ネエネエ先輩の表情や、体の状態を例えます。


 音楽の授業で2限続きです。音楽の先生がファンな、偉大な作曲家がいるとします。数百年前に、お亡くなりになった方です。

 音楽室で油絵の肖像画を、印刷してポスターみたいにしてある方です。襟を立てたコートを着て、マフラーをしています。ヨーロッパは日本より、寒いと分かるポスターです。

 そんな音楽室で、クラシック音楽を黙って九十分聴いて、眠るのを耐えているかのような風です。

 どんなに眠くなっても、寝たら先生に起こされます。

 わたしはそんな感じの、ネエネエ先輩に尋ねます。

「先輩、再現ドラマの感想をお願いします!」

「うんうん、もしかしたら、練りが少し足りなかったかな」


 保険で、もしかしたら、を付け足しています。わたしの“退屈でした”が、発言を否定せず、しかし、強く肯定もしません。まだ音楽鑑賞中のような、ネエネエ先輩の眠たそうな感情を、吹き飛ばす方法を考えます。

 さっきの音楽鑑賞で言えば、やっと演奏が終わった! と喜んでいたら、授業終了間際に、全員に先生が紙質の悪い原稿用紙を配って、「感想を書いて明日までに提出」と言われたような、心のどよめきが必要です。


「先輩の言うとおり。セバスチャン。ケレンが足りない! どうせ、ドラマなんだから、これでもか、これでもかって言うくらい、演出しまくって。先輩は、じゃなくて、再現ドラマに課金したお一人で、ギルド副長が、そうおっしゃりたいのです」


 先輩は椅子に座ったまま、反応に困っているようです。私は椅子から腰を浮かして、セバスチャンに両手を交えながら、熱く語ります。


「音楽で例えます。音楽の授業でクラシック鑑賞をしたとします。普段、クラシックにキョーミない人でも、名前を知っている世界でも、一流の音楽家が作曲をしたのです。何百年を世界中、でなくて、天上界てんじょうかいで、演奏され続けた名曲だとします。しかも、世界的に有名な管弦楽団が演奏したのです。そして、指揮者も高名な方です。料理で例えれば、一流の食材を使って、一流のシェフが、一流のお店で作ったようなモノです。最高においしいとしか、言いようがありません。合唱部の子たちは、音楽の専門用語で感想を書いていました。わたしは、思ったことを素直にそして、多くの人々に感動を与えた、音楽関係の方々に感謝の気持ちを伝えたいの。それっくらいケレン味をつけて」

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