ギルドNPCのモニカさん、エロいです。
わたしをトイレに置き去りにした裏切り者の弟が、布団を敷いていました。やっと寝れる。ぺとんと敷布団に座っていたわたしの手首を、涙目の弟が握ります。
「おねえちゃん、おじいちゃんとおばあちゃんの家に電話してよ」
「もう、夜中だから、明日の朝にしようね」
現在のわたしの部屋は当時、空き部屋でした。弟に、布団を持たせて、閉じ込めようとしました。ドアを閉めようとしたら、わたしのパジャマの生地を、引っ張って話しません。
腕をドアで挟んだら大変です。
今なら、ドスの効いた声で手を放させるだけです。しかし、当時、弟は保育園児でした。仕方なく、リビングへ、一緒に舞い戻りました。電話機を手にします。受話器はコードレスです。
電話帳登録されている、祖父母の家にわたしが電話しました。呼び出し音が20回以上鳴ってますが、でません。私の横では弟が、拳で自分の頬を伝わる涙を器用に拭きながら、見上げてます。
やっと電話に、祖父がでました。
「――もしもし、こんな時間に、どちらさまですか?」
声は野暮ったいですが、わたしも心が和らぎましたが、わたしから、深夜に電話したと思われたくありません。無言で、弟に受話器を突き出します。
弟が受話器にすがるようにしながら、耳に当てます。
「おばあちゃん?」
おじいちゃんだよ、わたしが出そうになった声を、喉で近くで止めました。
「どうしたの、こんな夜遅くに! 何かあったの?」
わたしも受話器から漏れる声に、耳をそばだてます。
「おとうさんとおかあさんが、けんかしてて、わかれるって。ううぇーん……」
弟が、受話器を下げて、口を開いて大泣きしてしまいました。しゃっくりがとまらないように、喋れないようです。しょうがないので、受話器をわたしが手に取ります。
「もしもし、おじいちゃん。わたしは夜遅くの電話は、わたしは反対しての。『明日の朝にしようね』って言ったんだけど、どうしても、言うこと聞かなくて、勝手に電話しちゃったみたい。代わりに謝る。ゴメンね」
「お父さん、お母さんが喧嘩しているの?」
「うん、隣の部屋で怒鳴り合いしている。どうしたら良い?」
「お父さん、電話に出して」
わたしから、両親に切り出せる雰囲気ではありません。膝で弟を、突きます。
「おじいちゃんがね。お父さん。呼んできてって言ってる」
「う、うん」
鼻水を手の甲で拭いながら、弟がドアを開きました。その瞬間、怒鳴り声が数倍の音量に跳ね上がりました。
母が目を三角形にしたまま、弟に駆け寄り、目線を合わせています。弟は恐怖で仰け反っています。
「お姉ちゃんと一緒に、向こうの部屋で寝てなさい」
ドアは内側から母によって、ピシャッと閉められました。扉の向こう側では、また、言い争いです。まるで、獣が叫んでいるようです。もう少し声を潜めていれば、弟か妹を作っている最中かと、思えたかもです。
「もしもし、おじいちゃん、電話に出ないって」
「電話変わったよ。おじいちゃんから事情を聞いたよ」
祖母の声でした。
「あの二人バカだから、放っておいて、寝ようね」
「うん分かった」
答えたのは弟です。受話器に耳を当てて、肩が触れ、気持ち悪いです。しかめっ面でわたしは、電話を切りました。
リビングで弟の分まで、布団を敷き直してやります。そこで隣の布団でわたしは、横になりました。
まだ、寝れない様子の弟は、明日になったら仲直りしているから、心配ないと言ったんです。ですが、またグダグダ言ってるので、後頭部を軽く叩いてしまいました。
これは、どう夫婦喧嘩が、最終的に収まるのか、面白いことになった。当時のわたしは楽観視していたんです。両親を信頼しているいい子です。静かに眠りにつきました。
しかし、翌日の朝わたしが起きても、夫婦喧嘩続いていたんです。両親は、暴力は振るいませんが、言葉や動作が荒れる父。ぞんざいに適当な菓子パンを出すだけで、朝食と言い切る母。
かなり、ヤバいかなーって思いました。わたしは平静を装って小学校に登校します。誰にも夫婦喧嘩のことは、話しませんでした。
あろうことか、保育園に通う弟は、両親の権力に逆らう愚か者だったんです。
しんじれれないことに、保育園の先生に、「お父さんとお母さんがわかれる! 家に帰る」と、泣きじゃくったそうです。
心配した先生が、母に電話したそうです。夫婦喧嘩しましたか、でなく、家で何かありましたか、と聞いたそうです。言葉とは便利なモノです。使い手次第で、ストレートで聞かずに済むのです。母も賢く対応したそうです。
「息子の勘違いです」
保育園の先生にお願いして、電話口に弟を出してもらったそうです。母が優しい声で、「お母さんとお父さん、別れないよ」と伝えたそうです。
夕方、わたしが帰宅したら、保育園の制服姿のまま、部屋着でない弟が座っていました。母と、テーブルに向かい合って、話しています。
「お母さん、おじいちゃんとおばあちゃんの家に電話した」
コイツ、とわたしが弟を指差します。母の顔は絶望にとらわれていました。怒鳴った母に更なる反省を促す必要があります。わたしが立て続けに言います。
「おばあちゃんが、お父さんとお母さんを、バカって言ってた」
「うん、バカって言ってた」
弟、ナイス。母はどうして電話をしたの、とか言い訳がましく、頭を抱えていました。無理やり笑顔を作りながら、緩い動作で、電話機に手を伸ばします。
「あ、お義母さん。昨日は、子どもたちが夜遅くに電話してしまったみたいで、すみません」
謝る順番が違う! 寝れないほどの大喧嘩をしたのを、まず謝ってるべきです。“電話をした"という結果には、“両親が喧嘩をしているから”いう、原因が存在しているのです。
「ご迷惑と、ご心配をおかけしました」
「ううん、気にしてないよ。孫の声が聞けて嬉しかったかな」
おばあちゃんの声が、受話器から小さくても聞こえます。おばあちゃん、社交辞令な声だって、孫なら分かります。猛烈なる反省を父と母に促すため、あっけらかんと、もう一回、わたしは言い放ちました。
「おばあちゃんが、『あの二人はバカ』て言ってた」
「うん、バカッ言ってた」
弟も追従します。昨日、わたしが布団を敷いてやったので、弟を手懐けれたのでしょう。電話の向こう側の祖母にも、わたしと弟の声が届きました。
「い、言ってないよ。そんなこと言ってません」
「……すみませんでした」
母は祖父母に電話したら、わたしたちに受話器をいつもなら渡すのです。しかし、自分の居場所がなさそうに、電話を切ってしまいました。
夜、帰宅した父は、祖母か祖父から、お叱りのメールか電話を受けたようです。苛立ちを隠しながらも、わたしと弟には、笑顔でした。
その後、数日間は父と母は、子どもの前では、よそよそしい関係でした。今、思えば、解散するか悩んでいるゲームギルドに似ています。少なくとも、わたしや弟の前では、がなったりしませんでした。
***
ギルドNPCのモニカさん。ただ、ハケで地面の土を前後左右に、除いているだけです。しかし、バニーガール姿で、カモシカのような足を、見せつけています。交互に、足の前後を交代させながら、太ももの内側がもじもじ、動いてます。
内股を強調しすぎです。
SNSでこんな画像をアップしたら、遠まわしにパパ活をしてそうな人です。蠱惑と呼ぶのでしょう。わたしが逆の立場なら、見られたらイヤなので視線をそらせたんです。
でも、モニカさんの頬が朱色になり、わたしを上目遣いで見つめています。
「どうかなさいましたか?」
それ、こっちのセリフ! モニカさんを、指で差してしまいました。
「再現ドラマで、わたしを演じるなら、少し羽織って」
清楚で素直なわたしを、モノマネしていた女優さんがいたとします。別の映像作品で、不良や、エンコーしている子を、演じられている気分です。
わたしのイメージが崩れない範囲でのお仕事なら、全力で応援します。わたし基準では、基本脱がないことですが、ハリウッド映画、名作映画、その他ヒット作品。また、前後のストーリーや、テーマ性によっては、多少の逸脱は、許せます。
女優さんの人気が出て、かつて演じたわたし本人に、注目が集まれば、無問題です。
「はい! 畏まりました」
モニカさんは、目を輝かせて、部活で尊敬する先輩に接する、後輩のようです。返事はしているのに、上を羽織りません。長距離を走り終わった陸上部の方のように、パーカーなどを羽織って欲しいです。
話聞いてないの? 言いたいですが、これはまた、面白いことになりそうです。優しい先輩風に接してみることにしました。バニーガール服の埃を払う、モニカさんの対面に立ちます。
「モニカさん」




