わたしの中学生時代と違って、メイド三人組は人間関係、楽そうです。
「1年1組のクラス委員から順番に、くじ引きをしなさい!」
1年の子は先生に従順でした。1年の子同士で、顔を見合わせながらも、前に出て、くじを引きます。2年のクラス委員も、不満そうに重い足取りで、くじを引きました。3年の順番になり、わたしのクラス委員の子は、ツカツカ歩き、毅然と偉い先生の前で対峙してます。3年のクラス委員たちはクジを引かず、遠巻きで様子見です。
「クジ引きなら、一番最後……、余ったのを引きます」
偉い先生は機嫌が悪そうに、鼻を鳴らしていました。結局、わたしのクラスは、演劇になってしまいました。
わたしが悪いのでしょうか?
ミーティングが終わり、わたしは、廊下を逃げるように早駆けします。クラス委員の子が、追いかけてきます。前へ前へ、廊下の曲がり角を目指します。しかし、振り切れず、追いつかれました。
「一緒に担任の先生に相談しよう」
困りました。めちゃくちゃ悪いことした気分です。歩みを緩めても、決して、止まれませんでした。
「もう済んだことだから、泣いたりしてゴメンね。気を使わせてゴメンね」
ゴメンを何度も繰り返しながら、逃げました。偉い先生の心証悪くして、内申点下がることも、ごめんです。
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演劇の練習は大変でした。裏方が多かったのですが、大半の生徒はやる気がなく、ミス連発です。
学習発表会本番では、舞台の上で最後、クラス全員が並んで、保護者たちからは拍手喝采でした。
1年の男子生徒席からは、「裏方多いのに、連携が悪い」とか、陰口聞こえました。
はっきり否定できます。最初から一部例外を除いて、やる気ないの!
芝居のセリフや練習をしたくなくて、裏方回ったの多いの。忙しい3年生の事情を察しろ。ばかって思いました。わたしは、ミーティングの罪滅ぼしとして、時間を割いて、必死に裏方として参加しました。
しかし、最初から演劇希望だった子とは、心の距離が縮まりません。
演劇で、架空の会社が出てくるんです。会社の看板が大道具で必要でした。紙を貼り、純白の書割を作りました。墨液が、制服についたら大変です。嫌だなって、言いながら、毛筆で文字を書きました。
演劇希望の子に、聞こえてたみたいです。教えてくれた同級生の子は、「私が言ったって絶対言わないでね」と、よく言われる言葉で、発言の最後を締めていました。
カーテンコールのときも、演劇希望の子とは、離れた位置で立ってました。近くで立つのは簡単ですが、非を認めたと勘違いされたくなかったんです。
つまり、わたしは、負けん気が強いのです。
クラス委員の子が、笑顔でわたしの手を引きます。当たり前のように、演劇希望の子の横に、わたしを立たせました。
「裏方頑張ってくれて、ありがとう」
演劇希望の子から、芝居がかった声で、感謝の言葉です。彼女の頬は緩んでも、目が笑ってません。
「お芝居、とてもうまかったよ」
わたしも負けじと、握手をしますが、視線は交差していました。
ピアノの伴奏をしてくれた子、表方の子には感謝はしてます。クラス委員の子には、卒業まで、頭が上がりませんでした。演劇希望の子とは、ほかの子がいる前では、ともかく。その後、二人きりで雑談をした記憶はありません。
クラス委員の子、演劇希望の子、ピアノ伴奏の子で、赤坂二高に入学した子、誰もいません。違う高校に行けば、近所に住んでるはずでも、全然会うことなくなりました。
中学卒業までに、演劇希望の子と、仲直りしておけば。
今更悔やんでも遅いです。
メイド三人組からは、わたしが経験した複雑そうな人間関係を、感じ取れません。
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