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再現ドラマの、カメラワークやだ。みんな立ち上がれ……。

「こうして、二人は明るく活気づく繁華街を楽しく広場に向って歩く」

 二人が歩いていますが、繁華街にあったはずの、女の人が出窓に座っている店は、存在しません。店が会った場所は飲食店に変更されています。

 活気のある飲食店の開いた扉から、照明が路上を照らしています。窓辺に席では、テーブルで向かい合ってる。あの店は再現ドラマでは、最初から存在しては、いけないのでしょう。

 男女の迷彩服姿のみなさんが、楽しそうに会話が盛り上がっています。

 昨日まであったお店が、翌日、突然、看板だけ変えて、別の店としてオープンしているような、不思議感です。

 声は聞こえませんが、豪華なフランス料理を食べているようです。ワイングラスを目線に上げている女性は、ドレスアップしたギルドのNPC門番さんです。

 門番をしていたのときは、真顔だったのに別人のような笑顔です。エキストラの男性陣は、タキシードを着込んだNPC門番です。

 セバスチャンのナレーションが入ります。

「パーティードレスやタキシードは、簡単にお買い求めいただけます。その種類は数ええ切れないほどです。繁華街の店はどこも、活気があり人々の笑いが絶えない。まさに不夜城ふやじょう、美女二人は広場に到着した」

 このあと、わたしは、広場で怖いお姉さんに絡まれたのです。先にちょっかい出したのは、わたしですが。

 再現ドラマ内では、広場には、なかったはずの野球場のような、夜間照明設備があります。広場は高校のグランドほどの広さだったはずです。再現ドラマでは、地平線に続くかのように広々としています。

 セバスチャンが露店のおじさんみたいな、快活な声を上げます。

「さあさあ、いらっしゃい、見てらっしゃいなど、広場は活気のある声で溢れています」

 モニターの背景に焦点を合わせれば、照明設備も立ち並ぶ自動販売状態のプレイヤーも、CG合成です。

 このギルドのNPCたちが、衣装を変えたり、背中を向けたりしているんです。延々と広場の奥まで、露店があるようにしています。メイクが得意な担任の先生のような、素晴らしいトリックです。

 わたしもメイク、もっと研究しよう。

 怖いお姉さんの登場です。美人メイド三人組の一人が、バイクを乗る人のような黒いスーツを着ています。現実なら、体のラインを強調しすぎ。オーダメイドのスーツです。

 いえ、胸の膨らみを入れる部分を、意図的に作った変わった服です。わたしは目をごしごししました。ボディーペイントのインクを、布に変えたみたい? よくよく見れば、現実では、あり得ない服です。

 わたし役とネエネエ先輩役のメイドさんが、露店が居並ぶ広場で立ち止まりました。

 怖いお姉さん役のメイドさんが、微笑みながら声をかけてきました。

「いらっしゃい。あら? お友達かしら。お綺麗な方、こちらの花束がお似合いよ」

 手に大きな花束を持っています。本当は地面に、花とナイフを置いてあったはず?

「せっかくだけど、辞退させてもらういます」

 わたし役のメイドさんが、にこやかに応じました。

「ねえねえ、もしかして」

 ネエネエ先輩役のメイドさんが、仲良しの顔見知りモードになります。メイド三人で話し込んでいます。

 芝居抜きで仲良しに違いないです。小学校、中学校でクラスで演劇をしたり、ほかのクラスの演劇をみていました。理屈では説明が難しい、経験側による判断です。


***


 中学生の頃、学習発表会なるモノがありました。高校で言えば文化祭に近似することでしょう。体育祭のように、保護者を客として呼ぶ行事です。

 体育館を使い、観客は全校生徒と保護者。クラスごとに出し物をします。演劇、合唱など、どれにするか、ホームルームで多数決で選びます。

 わたしのクラスは、ピアノ演奏の子以外、事前の練習が少なくてらくそうです。わたしも、練習時間が少ない合唱に賛成です。

 わたしは、合唱にするよう提案をしました。ほかの出し物希望の子と、角が立たないようにするのが一番大事です。かなり頷いたり、熱心に意見を聴いたり、困った顔をして黙ったりでした。多数決で、合唱に決ったのです。

 ホームルームの後、演劇が希望だった子には、廊下でゴメンと謝っておきました。本当に申し訳なさそうに、泣きそうなくらい感情がないのに、全身で示します。うなだれ、ぎゅっと体の前で重ねた手を握り締めていました。

「もともと気にしてないよ」

 イラッとくる言い方でした。

 しかし、合唱を選んだクラスが多すぎたのです。数日後の放課後、生徒会役員と全クラス委員が、集合させられました。わたしはこれは、一波乱ひとはらんありそうな予感がしていました。

 これは面白そうと、理科委員の代表として参加しました。

 担任を受けもたない、偉い先生から話がありました。

「学習発表会の説明プリントに間違いがありました。今年から、演劇、合唱、ダンス、その他から、各クラスの代表が、くじ引きで、クラスの出し物を、決めることになりました」

〈えー!〉

 抗議と呆れが混ざった声が教室を覆います。ホームルームでの話し合いは、時間の浪費で、意味がなくなったのです。

 そもそも、偉い先生の話、嘘っぽい。

 内申点に影響したくないので、わたしは無表情を貫きます。わたしのクラスで、クラス委員をする女子生徒が先生に挙手します。背の高さと、ハキハキした話し方が印象的です。

「先生、ホームルームで話し合ってクラスで決めたんです。くじ引きで出し物決めるなら、どうしてもっと早く教えてくれなかったんですか?」

 わたしも思った。せめて翌日には、担任経由で伝えるべきです。

 言わなくても、誰かが文句を言うでしょう。あえて、最初に発言して泥をかぶる必要などない。わたしは、しないのです。

「学習発表会担当の先生が、数日間、出張中だったのです。プリントの行き違いがありました」

「担当の先生はどなたですか?」

 クラス委員の子、引きません。偉い先生が、生徒のくせに生意気な、と目にきわどい光がさしてました。でも、わたしが、思っただけです。気のせいかもしれません。

 偉い先生の話を、壁際で立ちながら、数人の先生が聞いています。どの先生も、集まった生徒と目線を合わせていません。

「どなたが担当かは、生徒に関係ありません。それでは、各クラスの委員は、くじ引きをしてください」

 A4用紙の束が百枚は入るような大きさの、四角いダンボール製の上下に重ねて使う、箱がありました。上だか下だか知らないのですが、片方だけ置かれました。そこには、三角に折りたたんだノートを、急いで切ったような紙が多数あります。それぞれに数字が書いてありました。

 強引なミーティングでした。クラス委員は、誰も立ち上がろうとしません。壁際の先生方も、動きません。

 室内の空気には、暗さが張りついてるみたいです。この場に、野次馬でわたしは参加するべきでは、ありませんでした。次に発言するのは誰?

 皆が誰かのアクションを、待っている状況です。

 沈黙がつづき、時間だけが流れて行きます。偉い先生が教卓前で、パンパン手を鳴らしています。

「みんな立ち上がれ!」

 そして、武器を持って戦うのだ! わたしは、反射的に心に沸きあがったギャグを呑み込みます。

 多人数参加型ゲームで、試合前に緊張をやわらげようと、ギャグを言ったりします。お約束のセリフを、想像してしまったのです。笑いが込上げてしまいます。

 笑ってはいけない。でも、噴出しそう。両手で顔を覆いました。肩を小刻みに震わせながら、口を押さえます。猫背になり、鼻息が荒くなります。ヤバい。鼻水が零れそう。

「君、3年生だろう。こんなことで泣くな! 下級生のお手本になりなさい」

 いけない。大笑いしそう。偉い先生、勘違いしてる。もう限界近くでしたが、ティッシュを出して、鼻を押さえます。出かけですが、セーフでした。

 目を閉じて鼻を拭きます。

「どうしても合唱をしたかったんだよね?」

 まぶたを上げれば、クラス委員の子が、わたしの前で悲しげに屈んでいます。クラス委員の子は、瞳に抗議の色を宿しながら、偉い先生に視線を巡らせます。

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