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バーチャルゲームは医療にも役立つようです

 部外者にカンケーない。わたしは、肘を楕円卓だえんたくにつき、組んだ両手に顎をのせてました。新美先生が話は、朝礼の校長先生と同じく、適当に聞き流します。

「――というわけで、ギルドメンバー諸氏には、最善を尽くして欲しい」

 やっと終ったようです。ネエネエ先輩はエロいし、早く帰りたいです。ですが、タミヤ自動車撃ち合い部、植田監督がいらっしゃるで、様子見です。

 新美先生の会話が終っても、誰も発言しません。みんな座ったままです。植田監督は、タバコをふかしています。全く無害であり、匂いもありません。

 禁煙治療で、タバコを耐えてる人が、どうしても吸いたくなったら、『共トレ』21歳以上サーバーで吸う方法もあるのです。

 あとは、海外では薬物依存の治療でも、使われているそうです。

 ネエネエ先輩は、コンソールのガラケーを手にして、小さなモニターを見ています。

 新美先生は、欠伸をしながら、両腕を上げて伸びをしています。

 ギルド長室は、時間がゆっくり流れる、のんびりした空気に包まれています。今こそ、はっきり言っておかないと。

「ギルド長ことニーミ3佐こと、新美先生」

「どうしましたか? あと、『共トレ』世界を楽しんでいるので、本名は言わないでください」

「すみません、ギルド長、さっき、先輩がわたしに、いやらしい誘いをしてきたんです」

「私が来る前に、生徒同士で何かあったのですか?」

 生徒って現実じゃん。その話はこっちにおいておいて、しっかり伝えます。

「ドSな先輩が、わたしを服従させようとしたんです。わたしは、トイレに行きたいと言って逃げようとしましたが、その時、ギルド長が……」

「それは、現実での話でなく、この21歳以上サーバーでのことですよね?」

「私はしてません!」

 ネエネエ先輩が、焦った声を出します。眉を吊り上げながら、わたしとギルド長の顔を、交互に見ています

「現実でないなら関係ないですね。『共トレ』に限らず、年齢制限のあるサーバーは、基本、自己責任です。何でもありです。楽しみ方は人による。エロもありです。嫌なら、全年齢対象の『共トレ』サーバーに行くべきです」

 ネエネエ先輩は、必死の形相をして、腰を浮かしてる。両手を楕円卓に置いてます。

「ですから、私はそんな酷いことしてません」

 ギルド長の新美先生は、目を細めています。喉仏が激しく揺れています。

「だからどうでも良いんですよ。現実でできないこと、ここで、思いっきりしましょう」

 ギルド長は肩を竦めています。わたしのアバターは、背中に流れないはずの汗が、ひんやりした気がします。

 新美先生のインターネット上では別の顔を、垣間見てしまったのです。

 ネエネエ先輩の声が広い、ギルド長室にこだまします。

「私、『共トレ』でも、現実でもドSじゃありません。エロ……、いやらしいことや、まして後輩を無理に誘うとか、してません」

 ニーミ3佐こと、ギルド長の新美先生が、欠伸を噛み殺しています。楕円卓を指で弾きます。

「ネットなど、あることないことが尾ひれ背ひれがついて、広がる世界です。ないことを、言いふらして、楽しむ人もいるのです。悪口を言って楽しむ。それが楽しい人もいます。現実の法律で、訴えられても、勝てる範囲で悪口言ってください」

 ギルド長こと、新美先生を、わたしは恐怖で目を点にして見ていることでしょう。

「ギルド長として、両方の言い分を聞かないんですか?」

 ネエネエ先輩は引き下がりません。現実で、部活顧問の教師と生徒なのです。現実でお付き合いないなら、思いっきり言いたい放題いって、喧嘩して、後腐れなく別れれます。あとはゲームで関わらないことができます。

 それは、相手も自分も、どこの誰だか分からないからです。

 これは少し面白くなって、いえ、どう収集するのか気になります。

 わたしはネット上では、他人の喧嘩は、対岸の火事でスルーです。ただ今回、困るのは、他人だけでなく、自分が一方の当事者なのです。どうなるか、今後も、eスポーツ、撃ち合いを続けるつもりなので、参考にしたいです。

「セバスチャン、ドリンクをギルド長室へ」

 ニーミ3佐こと、ギルド長の新美先生が、目の前にある卓上インターホンを押します。

「畏まりました」

 セバスチャンの返事がインターホンからします。数瞬して、扉をノックする音がしました。

「どうぞ」

 ギルド長が言えば、扉が開き、タキシードの紳士セバスチャンとふりふりエプロンの、美人メイドさんが入って来ます。現実と違い、NPCの家事が早いのは仕様です。

『共トレ』内で、お店に食事に行っても、注文したらすぐに出してくれます。どんなに手間がかかる料理や、ドリンクであってもできたてのです。

 まるで、事前に用意してあったのかと思うほどです。これも現実との違いです。

 美人でプロポーション抜群すぎる、メイドさんがキャスターがついた金属製の、料理を載せるような台を押しています。手伝おうと立ち上がったら、お気持ちだけと、微笑まれました。

 完璧すぎる辞退に気圧され、座ります。

「セバスチャンは私が、いやらしいことや、ましてやゲストの方を、ギルドの一室に、閉じ込めるようなことしないって、信じてくれるよね」

 ネエネエ先輩は、がっくり腰を椅子に落としてます。先輩は涙目の鼻声で、セバスチャンに訴えます。セバスチャンは無言で、ギルド長の前でドリンクを起きました。

 タミヤ自動車撃ち合い部監督。えーと、植田さんこと、ゲーム内の名前忘れちゃった。そこに茶色の液体が入ったグラスを、揺らさずに置いています。アルコール類のようです。ちゃんと灰皿も置いてます。

 ネエネエ先輩の前に半透明で黒っぽいのがグラスに入っており、置きました。胸ポケットの白いハンカチを、ネエネエ先輩に差し出しています。

「コーラで御座います」

わたくしめは、ギルドメンバーの皆様に、執事として創造していただいた者で御座います」

 つまり、ギルドメンバーでないわたしは、同じ『共トレ』プレイヤーでも格下扱いか? 

 執事さん、見た目いぶし銀なのに、エロいネエネエの言いなりですか? ドMみたいでキモい。

例えば、学校で昼休みに、お弁当を食べようとして、ほかの教室の友だちのとこへ行く。

 友だち、見つけれなくて、自分のクラスに戻ってきた。すると、わたしの席であまりお付き合いのない生徒が、他の子とおしゃべりしながら、お弁当を食べているのを、廊下から見てしまった気分です。

 気まずい沈黙をするわたしに、セバスチャンが、グラスに入った青いソーダ水を揺らさず置きます。NPC執事スキルを課金して、買ったと分かります。スキルといってもレベルがあり、レベルが高いほど、リアルマネーの円やドルがかかります。

「すみませんが、コーラの炭酸だけ、今ここで、グラスを揺らして抜いてもらえませんか?」

 炭酸水は飲めますが、ここは、セバスチャンの執事スキルのレベルを試します。

かしこまりました」

***


 わたしが保育園児の頃、コーラ好きな母が、キッチンで隠れて飲んでいるのを、見つけのが上手でした。隠れん坊のようでとても楽しかったです。

 そんなとき、母は決って二つのコップを用意して、何十回も移し変えてくれました。炭酸を完全に抜いてから、わたしに渡してくれました。

 ところが、小学校に上がったら、「やり方はお母さんが教えてでしょう、もう小学生になったんだから、自分でしようね」と、なってしまいました。

 小一の夏休みのことです。祖父と祖母の家に泊りがけで、弟ときょうだいだけで、泊りがけで遊びに行きました。

 当時、今は亡き祖母と、今は家で同居している祖父が、二人で暮らしていました。

 送ってくれた母が立ち去り、祖母が近所の酒屋さんで買ってきたと言う、ガラス瓶に入ったコーラを、わたし、と弟に、コップにいれて出してくれました。そのまま飲む弟をスルーして、祖母にわたしは言いました。

「おばあちゃん、お母さんなら、コーラの炭酸は、抜いてから出してくれるよ」

 祖母はコーラを大きな容器に入れて、零れないように両手で抱えて揺らしていました。それをコップに移し変えて、わたしが口に運びます。

「まだ炭酸残ってるよ。お母さんのほうが、炭酸抜くのうまいよ」

 祖母は悲しげな顔をしてました。祖父が、

「おじいちゃんも手伝おう」

 祖父も同じ要領で、コーラの炭酸抜きを長い時間しました。祖父が祖母に話します。

「もう炭酸抜けただろう」 

 あろうことか、祖父は止めようとする祖母を無視して、ストローをわたしが飲むコーラのコップに、突っ込んだんです。ストローで吸って炭酸が抜けたを、チェックしたんです。

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