いざ“撃ち合い”へ
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撃ち合い部室では、壁かけ式モニターがありました。それでエリアを選べます。
どのエリアも、リアル過ぎです。倉庫を模したエリア、空港ターミナル風、美術館風、砂漠風などなど。
どれも本物みたい。
モニターに映る光景に目を奪われ、撃つ想像をするだけで、快楽となり、脈が早くなります。
「凄いです!」
「強豪校に比べたら貧弱な設備なんだ」
ネエネエ先輩は肩を竦めています。
「ねえ、どこが良い?」
「美術館風です」
わたしは即答しました。絵や陶芸が飾られ、インテリアがオシャレだからです。美しいものを、流れ弾で壊すことを想像しました。体が芯から熱くなります。
「オーケー、じゃあ、美術館風で撃ち合おう」
「はい」
「美術館風で大事なのは、美術品もどき、銃で撃たれても壊れないから」
知ってるけど残念です。
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ロッカー室で、いつも持ち歩いている迷彩服に着替えます。灰色を基調とした都市用迷彩です。
気合が入ります。中学3年のときに大きめを買ったのですが、少し胸のあたりが、キツくなっています。
マシンガンを手にします。落とさないよう、スリングを通します。
ネエネエ先輩は、長い睫毛をぱちくりさせています。
「ねえねえ、いつも持ち歩いてるの」
「はい、いつもです」
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ヘルメット、防弾チョッキ、プロテクター、フル装備です。ネエネエ先輩はロッカーから出した装備を身につけていました。もちろん、予備武器の拳銃とナイフも装備します。
「うんうん、似合ってる! いつもマシンガン持ち歩いてるから、使い慣れてるでしょう」
「え、先輩こそ似合ってます。わたしなんて…」
自分のウエストを見下ろせば、溜息が出ます。先輩のスタイルに遠く及びません。
一部の壁に鏡が貼り付けられています。その前で先輩と互いに顔を合わせます。事故がないよう、入念にチェックをします。
「背中見せてくれる」
「はい先輩」
両腕を水平に伸ばしながら、くるっと半回転しました。ネエネエ先輩が背中を触ったりしています。
「わたしもチェックして」
「はい、分かりました先輩、失礼します」
ネエネエ先輩は、すらりと長い足を開きます。わたしは屈み込みました。コンバットブーツを目視で確認していました。
「あははは」
突然、ネエネエ先輩が笑うので、見上げてしまいます。
「どうしたんです」
「だって、ほら、頭から確認する人多いでしょう」
人による。どっちでも一緒だろ、怒りが沸き上がりますが、頬をわざと綻ばせました。先輩だからです。
「そうですね」
上目遣いに見ても、先輩は憎たらしいほど美人です。腰を上げ、ヘルメットや胸当てを、手でチェックします。気恥ずかしい空気が流れます。先輩も瞳を泳がせ、頬がほんのり染まっています。
「背中見て」
ネエネエ先輩はすっと回れ右をして、後ろ髪がふわり揺れます。背中の装備もバッチリです。スマホの電源は、オフにします。
「先輩確認しました、異常ありません」
「じゃあ、美術館風エリアに行こう」