ギルド長は変態だと思いますが言葉にしません
「ドアをみただけで、素敵で幸せそうなお部屋って分かります。現実でも、立派な家が建っていたらって想像しちゃいました」
「うんうん、ありがとう」
ヤバい、また失言した。先輩は目を輝かして嬉しそうです。少し進めば、やっと一番奥の部屋です。ネエネエ先輩が、縄で吊るされた呼び鈴を鳴らしていました。
見た目は古風でも、指紋や静脈認証みたいです。ガチャっと音が鳴り、ドアロックがオートで外れたようです。最新のシステムじゃん、どこがバロック様式で統一なんだよ。エレベーターつけて欲しいです。
「鍵は、今風なんですね」
「そうそう。じゃあ、装備分けてくれる、ありがたいギルド長を紹介するね」
「ありがたいというより、ヘン……」
ヘンタイという言葉の欠片を喉にひっかかり、飲み込みました。後味が悪く、喉はスッキリしません。
「ヘンジを、戦闘服をくださったお礼のお返事を、しっかり、お手紙で出さないと」
「直接お礼を言うか、気恥ずかしいなら、サーバー内メールで伝えれば大丈夫」
先輩がドアを開いて、室内に入っています。わたしにも、ウインクしながら手で入るよう促してくれます。
「お邪魔します」
立派な部屋です。家具やテーブルは白を基調として、統一されています。シャンデリアが数台あり、傷一つない木製の床が照り返しています。しかし、足が止まりました。
天蓋つきの、大きなベッドが視界に入ったからです。
広場で会った怖いお姉さんは、推定無罪ですがエロを売る人の疑い。門番オジサンはドM確定。大きなベッド。このギルド本部で見た状況を足し算します。このギルドは、運営さんが建前では禁止している、あっち系な秘密クラブかも。
そういう『共トレ』の遊び方は大っ嫌いです。サンダルのままで、くるっと廊下に回れ右です。バタンと胸の前で、両開きのドアが閉まります。
ドアノブを掴んで、力みがなら開けようとしますが、ビクともしません。
「ねえねえ、怖がらなくていいよ」
肩越しに先輩が、妖しい笑みをうかべながら、わたしの背中を人差し指でトンと突きます。
わたしの、脳裏にネエネエ先輩とのあんなことや、こんなことの光景が描かれます。お母さんやおじいちゃんは、わたしを良い子だと言ってくれます。
悪い人につけこまれやすい、自分の性格を恨みました。