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ネエネエ先輩と自宅玄関先で、ぶつかりそうになりました

 わたしもシャワー浴びたいんだ。本音は押さえ込みます。わたしは、近所の郵便ポストのあるコンビニまで、早足で行き、一番小さなお弁当を買って、戻ってきました。

 お弁当はオムライスです。

 レンジで温めてもらったのを、食卓の上でふたを開けます。おいしそうな香りが湯気と一緒に漂い、食欲をくすぐります。

 スプーンですくって、唇へ運べば、ふんわりした卵焼きの味は、口の中で広がります。チキンライスの味も絶品です。

 唇の端についたソースは、誰も見てないのでぺろっと舌で舐めました。アコーディオンカーテンが開く音がします。やけに決った服装をした弟が、自室に戻るため、リビングを通り抜けます。

「顎に、ソースついてるぞ」

「教えてくれてありがとう」

 コンビニでもらったおしぼりで、拭き取りました。気がつけば完食してます。手を合わせます。

「ご馳走さまでした」

 お弁当の容器は、特殊なプラスチック製で、分解できます。(*1)。水洗いして、燃えるゴミで捨てます。ネエネエ先輩が遊びに来るので、リビングのふた付きゴミ箱の袋を交換します。すでに、白みがかった空の下、家の外に出て、ポリバケツにゴミを入れました。

 家に戻れば、弟が透明なビニールを、ゴミ箱に捨てていました。ビニールは、ゴミ箱の内側で、浮いたようになっています。

「どうして、丸めて捨てないの。ゴミ箱のふた開けたら、飛んで行くでしょう」

「分かったよ」

 弟は手でで、ビニールを押し込んでいます。捨て方が甘い。わたしが、ビニールを手に持ち、また玄関の扉を開けました。

 ネエネエ先輩が、突っ立ってます。慌てて、わたしは後退りしました。ネエネエ先輩も、はっとした表情をしながら、体が仰向けになりそうなくらい、反らしています。

 突き出されたネエネエ先輩の胸が、わたしの手に一瞬触れました。急いで手を引っ込めます。

 ネエネエ先輩は、頬をほんのり染めながら、耳たぶに乱れた髪を指でかけます。

「ゴメン、インターホン鳴らそうとしてたんだ」

「びっくりしました!」

 わたしは、ビニールを手でくしゃくしゃにしてから、先輩に靴べらを渡します。

「こんばんは、ありがとう。本当にお邪魔しても良いかな?」

 先輩の視線は、わたしを越して背後を、見据えているようです。わたしの存在は、透明人間のような扱いです。

「こんばんは、弟しかいません。気楽にしてください」

 もちろん、わたしの他には、です。

「先輩どうぞ、上がってください」

 わたしは、無造作にサンダルを足先で脱ぎ、玄関を上がります。

「お邪魔します」

 高校の制服姿で先輩は、腰を落としながら、靴べらを使っています。運動靴を脱ぎます。かもしかのような足が、玄関に足を丁重にかけます。

 最後にしゃがみ込み、体を横に向けながら、脱いだ靴を端で横向きにしています。

 マナーの格差社会が、身に沁みました。ビニール袋は何度も縛ってからゴミ箱へ押し込みましした。


【(*1) この作品は2040年の設定であり、土へ戻るプラスチック製なのはフィクションです。現実においては、コンビニなどの容器の捨て方は、各自治体の取り決めに従ってください】


***


 夕食を先輩は、バイト先のコンビニでパンを買って、済ませたそうです。

「食べたの食パンでしたか?」

「えーっと、違うよ」

 せっかくぶつかる機会なら、制服姿で食パンを咥えながら走って来て、わたしにぶつかる。そして、尻餅をついてくれたら、素敵な思い出になったのに残念です。

 玄関で来客用スリッパを出します。

「お邪魔します」

 招かれざる客なら、スリッパ出さないのに、わざわざ自分を邪険に扱う、日本の悪い伝統です。

 わたしの自室に案内します。ネエネエ先輩は、部屋の隅に通学鞄を起きます。軍用ライフルのマスコットが際立つ、スクールバッグも床に置かれました。

「いつ見ても素晴らしい軍用ライフルで」

「ありがとう」

 茶道の先生をマネして、いえいえ、と謙遜して欲しかったのに。ギャグが通じなかったのは、わたしがギャグです、と顔や仕草で伝えれなかったからです。

 クッションと折りたたみ式の、四角いちゃぶ台を出します。ネエネエ先輩に座ってもらいます。

 飲み物は、リビングまでわたしが取りに行きます。お盆にコップを載せて、1.5リットルのペットボトルのウーロン茶を運びます。

 ウーロン茶が半分ほどしか入っていないので、バランスが取りづらいです。

 お盆が傾きそうになりながら、自室の扉は、横着して足で開こうとしていました。

 閉じているので、足で軽くノックしてしまいました。ノックでネエネエ先輩が立ち上がった気配が、します。両手をドアノブに手をかけて、開けてくれます。

「気を使わせてゴメンね」

「先輩、わたし全然気を使ってません」

 わたしの本音が漏れました。しまった、と固まるわたし。先輩がお盆を手にすれば、ペットボトルに入っている、ウーロン茶の傾きが少ないのです。ちゃぶ台の上に音を立てず、置いてくれます。

 ネエネエ先輩は、わたしがクッションにあぐらで座るのをじーっと見ています。膝をぐっと閉じました。ネエネエ先輩はちゃぶ台を挟んで、対面に正座します。

「先輩、どうか、足を崩してください」

「お言葉に甘えちゃうね」

 先輩は、少し体を傾け、スカートの裾を手で押さえながら、足を崩しています。白い太ももがチラッと見えて、少しというより、かなりエロいです。

「私の顔に何か付いてるかな?」

 こびを含んだような目つきで、ピンクの薄い唇から、エロ色を含んだ声だします。

 会話が続けれず、わたしは、ウーロン茶を2つのコップに注ぎます。無言でネエネエ先輩の手前に、コップを置きました。沈黙を破らないと。

「先輩、今日コンビニで、大学生みたいな店員さんいましたね」

「うんうん、大学生だよ。コンビニバイトの先輩で優しい方」

「バイト募集のポスターみたんですが、大学生と高校生で時給違うんですか」

「うーん、どうかな?」

「学歴格差社会を、見たような気がします」

 また、余計なことを口走ってしまいました。ネエネエ先輩は頬を綻ばして、愉快そうに肩を揺すっています。

「先輩、ただのウーロン茶ですが、どうぞ」

「ただでなくて、『一杯いくらです』って言われたら、怖くて飲めないよ」

 ネエネエ先輩のギャグを、わたしの脳は遅れて理解します。

「先輩面白いです。あはっ……」

 先輩に促され、乾杯してから、ウーロン茶を口に運びます。どうして、乾杯するのか謎です。でも楽しければ良いんです。

「先輩、門限は大丈夫ですか?」

「うんうん、うちの両親、大はしゃぎで、泊まってきても良いって言ってた。ゴメン厚かましいよね。迷惑だったら、タクシーで帰るつもり、用事あったら、いつでも言ってね。」

「厚かましくないです。良ければ、泊まってください」

 弟しか家に居ないのです。鍵をしっかり閉じても、怖いからです。ああ、わが弟よ、もし泥棒がやってきたら、姉とネエネエ先輩を守れ。

「いえ、ぜひ、ぜひ、泊まっていってください」

 わたしは、ちゃぶ台に両手をついて、頭を下げていました。体が柔らかいので、苦になりません。いきなり学校帰りに声をかけ、バイトが終ってから、泊まってゆくよう、伝えるのは、厚かましいのです。わたし、またまた反省中。

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