1年のマシンガンの子
西暦2040年。
わたしの愛用はマシンガン!
父と母が約束どおり、「受験勉強大変だったね」と、高校の入学式直前に買ってくれたんです。
クラスメイトからすぐ〝マシンガンの子〟として、顔を覚えてもらえました。
クラスでマシンガンを持っているのは、わたしひとり!
周囲の子は拳銃です。一部の子だけは、持ってません。
入学して一週間過ぎた頃、高校から帰宅して、母から言われました。
「学校慣れた? お友達できた?」
「ねえ、お母さん、銃持ってない子いるよ」
母の表情に影が差します。
「一部の子でしょう?」
「うん、クラスで数人かな」
「人を決めつけてかかるのは、本当は良くないことだけど、もしかしたら、少し考えが違う子かもねえ。家に連れてくるのは避けたほうがいいかも」
「分かってる」
当たり前のことを、わざわざ言うのが、母のマイナス面。
***
会社員の祖父がわたしの後、夕方帰宅しました。
「あ、おじいちゃん、お帰りなさい」
「ただいま。今の高校は早く終るんだね。おじいちゃんが高校生の頃は、夕方まで授業があったんだよ」
祖父の話は、古過ぎて、今では有り得ないことばかり。祖父は帰ってくるなり、自室でパソコンを起動させます。パソコンでインターネットを観ていました。
平日の学校は、午後1時位で授業は終わりです。祖父が高校生の時代、20世紀の昭和時代は、夕方まで授業あったそうです。
先生だって雇用労働者でしょう。うちの高校で先生方は、朝早くから勤務開始です。
午後1時に授業終らせて、その後、部活動の指導、生徒や保護者の相談、デスクワークなどです。
午後3時で、高校の門は閉められ、校内は無人になります。
***
翌日も学校です。慣れるまで一週間が長い。帰りのホームルームで、担任からは、「環境の変化になれるまで、最初の2か月くらいは、無理しないでね」とか言われました。
2か月過ぎたら無理していいんですか、思ってもツッコミ入れてません。
春風が頬を撫でて心地よいです。
帰宅部にしたいのですが、面白そうな部活動があるので迷いました。校舎の出入り口出た所で、知らない女性で、先輩らしき人が、声をかけてきます。
「ねえねえ、君、1年のマシンガンの子でしょう」
「え、知ってるんですか」
嬉しいです。落とさないよう今日だけは、肩から下げたケースにマシンガンが入ってます。先輩は、綺麗でスタイルも良い方です。褒められれば、羨まし過ぎて撃ちたい衝動も収まります。視界の隅にとまった、ブラウスの校章の色が2年生を示してます。
馴れ馴れしい同学年の1年生でなく、先輩確定なので敬語を使い続けます。
先輩は傷つかないようにでしょう。革製のケースから、軍用ライフルを取り出しています。
「いいライフルですね」
「褒めてくれてありがとう。お願い、うちの部活、入ってもらえないかな」
「先輩は、どちらの部活ですか?」
「撃ち合い部」
中学でもありましたが、撃ち合い部は、ちょっとあれなんですよ母が……。
1チーム15人で試合するのは楽しいんです。でも作戦に頭を使うんです。
スパコンが、当たった、当たらないを判定するんです。
しかも、練習も試合中は、目がぐるぐる回るときもあります。
「ねえねえ、マシンガンぶっ放して良いから」
「すみません」
頭を下げ、丁重にお断りしました。わたしは靴箱に足早に戻り、上履きに履き替えていました。
円滑な人間関係には、お芝居も大事です。
さっきの先輩は声が透き通るので、他の一年女子に声をかけてるのが聞こえます。
「ねえねえ、部の備品で高い装備もあるんだよ」
一年女子の声に聞き耳を立てます。
「先輩、同じ武器希望者多数の場合、どうなるんですか?」
「同じ種類の銃希望の子が、複数いた場合はくじ引きになるよ」
勧誘の先輩は食い下がっています。
「マシンガン希望の子が多かったら、第一志望を別の武器に変えるとかできるよ」
「つまり、第2志望になることもあるんですね、わざわざのお誘いですがすみません」
「ねえねえ、気にしてないから頭下げないで」
知らない一年女子です。先輩にはっきり言う子だなって思いました。
翌日も学校です。慣れるまで一週間が長い。帰りのホームルームで、担任からは、「環境の変化になれるまで、最初の2か月くらいは、無理しないでね」とか言われました。
2か月過ぎたら無理していいんですか、思ってもツッコミ入れてません。
春風が頬を撫でて心地よいです。
帰宅部にしたいのですが、面白そうな部活動があるので迷いました。校舎の出入り口出た所で、知らない女性で、先輩らしき人が、声をかけてきます。
「ねえねえ、君、1年のマシンガンの子でしょう」
「え、知ってるんですか」
嬉しいです。落とさないよう今日だけは、肩から下げたケースにマシンガンが入ってます。先輩は、綺麗でスタイルも良い方です。褒められれば、羨まし過ぎて撃ちたい衝動も収まります。視界の隅にとまった、ブラウスの校章の色が2年生を示してます。
馴れ馴れしい同学年の1年生でなく、先輩確定なので敬語を使い続けます。
先輩は傷つかないようにでしょう。革製のケースから、軍用ライフルを取り出しています。
「いいライフルですね」
「褒めてくれてありがとう。お願い、うちの部活、入ってもらえないかな」
「先輩は、どちらの部活ですか?」
「撃ち合い部」
中学でもありましたが、撃ち合い部は、ちょっとあれなんですよ母が……。
1チーム15人で試合するのは楽しいんです。でも作戦に頭を使うんです。
スパコンが、当たった、当たらないを判定するんです。
しかも、練習も試合中は、目がぐるぐる回るときもあります。
「ねえねえ、マシンガンぶっ放して良いから」
「すみません」
頭を下げ、丁重にお断りしました。わたしは靴箱に足早に戻り、上履きに履き替えていました。
円滑な人間関係には、お芝居も大事です。
さっきの先輩は声が透き通るので、他の一年女子に声をかけてるのが聞こえます。
「ねえねえ、部の備品で高い装備もあるんだよ」
一年女子の声に聞き耳を立てます。
「先輩、同じ武器希望者多数の場合、どうなるんですか?」
「同じ種類の銃希望の子が、複数いた場合はくじ引きになるよ」
勧誘の先輩は食い下がっています。
「マシンガン希望の子が多かったら、第一志望を別の武器に変えるとかできるよ」
「つまり、第2志望になることもあるんですね、わざわざのお誘いですがすみません」
「ねえねえ、気にしてないから頭下げないで」
知らない一年女子です。先輩にはっきり言う子だなって思いました。
「先輩、試合のユニフォームは……」
「うん、緑ジャングル迷彩で統一、ユニ代は自費になるの」
質問している最中に、撃ち合い部室に辿り着きます。先輩が金属性の引き戸を、開こうとしているので、手伝います。先輩は引き戸の傍らに立って、人懐っこいスマイル。手で先に入るよう促されます。
「遠慮なく入って」
「失礼します」
一礼してから、ゆっくり足を踏み入れます。ネエネエ先輩へ、遠慮してるアピールです。
しかし、足は止まります。体育館のような広い撃ち合い室に感激しました。
「どう、撃ち合い室の感想は?」
「撃ち合い部専用なんですか?」
「そうだよ」
壁はコンクリート製で白く塗られています。中学の撃ち合い部は、撃ち合い室を、ほかの部活と共有で使っていたのです。
ネエネエ先輩は、備え付けのロッカーから、緑の迷彩服を取り出しました。体の前で広げて見せています。
胸と背中には学校名と選手名が入ってます。
「学校名はワッペン式で取り外し可能だから、部活外でも使えるよ」
迷彩服を片付けた先輩は、わたしの対面に間合いを取って立ちます。名札の本名は、ネエネネさんでありません。
先輩は、腰に両手を当て、私の顔を見つめます。
「ねえ、ねえ、今、顧問の先生も、ほかの部員も勧誘でいないの。二人で撃ち合いをしようか」
どこで勧誘してるのか、聞きたいです、声に出てしまいました。
「学校の四隅、公道側とフェンスの内側」
狙った人を逃せない、撃ち合い部らしい勧誘の配置です。
「ねえねえ、撃ち合いしない?」
「はい!」