3 究極スキル爆誕
「終わったぞぉぉぉぉぉぉぉっ!」
とうとう俺は究極スキルポイントを100集めることができた!
都合10000回も【落とし穴】を掘ったことになる。
我ながらよくがんばった。
感動した!
「とりあえず究極スキルがどんなものか、試してみよう」
俺は意気揚々と近くの山に入った。
冒険者のクエストで何度か来たことがある場所だ。
山中には、モンスターの生息地が点在している。
適当なモンスターがいたら、スキルを使ってみるつもりだった。
と──、
「きゃぁぁぁぁぁっ!」
タイミングよくというべきなのか、どうか。
必死の形相で逃げる女の子の姿を見つけた。
地響きを立てて走りながら、小山のように巨大なモンスターがそれを追っている。
この間のリトルドラゴンである。
もしかしたら、この辺りを縄張りにしているんだろうか。
「おいおい……」
俺は思わず顔をひきつらせた。
「もう少し弱いモンスターで試してみたかったんだけど……よりによって竜種か」
強すぎだろ。
とはいえ、彼女を見捨てるわけにはいかない。
「きゃあっ」
足をもつれさせ、倒れる少女。
そこにドラゴンが襲いかかる──。
「彼女を助けなきゃ──な」
あれだけスキルをがんばって進化させたんだ。
時間稼ぎくらいはできるかもしれない。
「スキル発動だ」
俺は気合を入れて、右手を突き出した。
ちなみに、そんなポーズをしなくてもスキル発動は可能である。
ポーズをつけたのは、単なる気分だった。
────────────────────
初回起動確認。
術者の意志力充填100%。
究極スキル【虚空の封環・LV1】を発動します。
────────────────────
例によってメッセージが表示される。
「【ブラックホール】……?」
俺の本来のスキルである【落とし穴】とは名前が変わっている。
直後──。
俺の前方に、闇が生まれた。
直径五メートルくらいの、闇。
同時に吹き荒れる突風。
「ぐおおんっ!?」
ドラゴンが戸惑ったような声を上げる。
「えっ……?」
音もなく。
手ごたえもなく。
一瞬にして、巨大なドラゴンは闇の中に吸いこまれた。
それで、終わりだ。
あまりのあっけなさに拍子抜けしてしまうほど──。
最強モンスターと呼ばれるドラゴンが、あっさりと消滅してしまった。
「あ、あなたは……?」
女の子が呆然とした顔で俺を見ている。
「ドラゴンを一瞬で倒すなんて……すごいのです」
「本当、すごいよな……」
俺も呆然としていた。
自分でも信じられない。
驚きの後で、熱い興奮がこみ上げる。
最底辺だったこの俺が──ドラゴンを瞬殺したんだ!
「す、すげーっ! 俺すげえええええええええええ!」
「ふふ、面白い人なのです」
くすりと微笑む彼女。
「怪我はないか?」
俺は彼女を助け起こした。
「はいなのです」
彼女は微笑みながら、ぺこり、と頭を下げた。
「あ……助けていただき、ありがとうございました。申し遅れたのです。あたし、キャロル・キールといいます」
か、可愛い──。
俺は思わず息をのんだ。
桃色の長い髪に金色の瞳の、美しい少女だった。
頭から狐耳が生えていて、ぴょこぴょこと動いている。
腰からは同じく狐の尻尾が伸び、これもぴょこぴょこ。
彼女は獣人族のようだ。
いわゆる狐っ娘だった。
小柄な体に、身に着けているのは青い短衣。
「お、俺はマグナ・クラウド。冒険者だ」
名乗りつつ、彼女のあまりの可愛さに照れ、声がうわずってしまった。