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2 天馬騎士シャーリー

 天馬にまたがっているのは、二十代半ば──俺と同い年くらいの女騎士だった。


 美しい緑色の髪を長く伸ばし、理知的な雰囲気を漂わせた美人だ。

 細身だが引き締まった体に、銀色の甲冑と緑色の外套を身に着けていた。


「なんで俺のことを……?」

「知り合いのSSSランク冒険者が噂していたのよ。最近、頭角を現してきたすごく強い冒険者がいる、って」


 俺の問いに微笑む女騎士。


 って、SSSランク冒険者に知られてるのか、俺の名前。

 さすがにびっくりだ。


「それに──そちらはクゥエル家の公爵令嬢ね」

「……そ、そうよ」


 勇者になるために家出してきたけど、と小さくつぶやくエルザ。

 彼女は彼女で実は有名なんだろうか。

 一緒にいると忘れがちになるけど、初めて会ったときに、貴族令嬢だって言ってたもんな。


「時間があれば、ぜひお手合わせ願いたいところね。噂の猛者と」


 俺を見つめる彼女の瞳に、強い光が宿った。

 知的な容貌とは裏腹に、けっこう好戦的な性格なんだろうか?


「残念ながら、あたしはこれから任務があるの。君たちはここから逃げなさい」

「逃げる?」

「この付近にモンスターの気配が強まっている、と宮廷魔術師から報告を受けたのよ。付近には、あたしの配下が避難を呼びかけてる最中」


 そういえば、いつの間にか観光客が全然いなくなってるな。


「モンスター?」

「推定クラスはSからSS。かなり強力な奴よ」


 基本的にモンスターのクラスは冒険者パーティのランクに対応している。

 たとえばAランクのモンスターを倒すには、Aランクパーティ以上の戦力が必要だ。


 つまり、彼女の言うモンスターには、SランクかSSランクのパーティじゃなきゃ無理っていうこと。


 ──もっとも、俺のスキルならSだろうとSSだろうと問答無用で吸いこんで倒せるだろうけど。


「安心して。モンスターはあたしたちレムフィール天馬(てんま)騎士団が倒すから」


 女騎士が凛とした表情で告げた。


「レムフィール天馬騎士団……?」


 聞いたことがある。

 レムフィール王国には、天馬を駆る精鋭騎士団があるって。


 その実力はまさしく一騎当千。

 大陸でも最強クラスの兵団だ。


「あたしは天馬騎士団団長のシャーリー・エスト。他に七騎の天馬騎士を連れてきているから、モンスター退治には十分な戦力ね」


 と、そのときだった。


 ばしゃあああっ、と数百メートル前方で水面が派手に割れた。


 そこから巨大な怪物が出現する。


 全体的な見た目は、イカに似ていた。

 ただしその全長は数百メートルもあった。


 超巨大イカだ。


「あ、噂をすれば」

「出たか、モンスター!」


 シャーリーが振り返った。


「君たちは早く逃げて。あいつはあたしたちが仕留めるから──ふふ、強い相手に飢えていたのよ」


 その目が爛々と輝いていた。


「やっと強い奴を斬れる……斬れる斬れる斬れる斬れる斬れる斬れる斬れる斬れる斬れる斬れる斬れる斬れる斬れる斬れる斬れる」


 呪文のようにつぶやきながら、天馬を翔けさせるシャーリー。

 ……凛々しい女騎士だと思ったけど、ちょっと危ない人なのかもしれない。


「……ちょっと怖いのです」

「……同感ね」


 案の定、キャロルとエルザも引いていた。

 けっこうドン引きだった。


 一方のシャーリーはテンション爆上げで、


「さあ、いよいよ戦いよ! 天馬騎士団、あたしに続け! 斬る斬る斬る斬る斬るーっ!」


 号令とともに、天空から七人の天馬騎士が降下してきた。

 どうやら、上空で待機していたらしい。


 シャーリーも含めて、全部で八騎。

 彼女たちは散開しながら、超巨大イカに向かっていく。


 ふおおおんっ。


 雄叫びとともにイカモンスターが触手を振り回した。

 シャーリーたちは複雑な空戦機動でそれを避け、魔法弾を放つ。


 イカの体の各部で爆炎が弾けた。

 一糸乱れぬ、見事なコンビネーション攻撃だ。


「これなら問題なく勝てそうだな」


 俺の【ブラックホール】の出番はなさそうだ。


 ……まあ、俺がシャーリーの天馬に乗せてもらい、射程距離まで近づいてスキルを使えば、速攻で倒せるんだけど。


 そこはそれ、シャーリーたちの面子もあるだろうし。

 問題なく勝てそうだし。

 何よりも、モンスターをめちゃくちゃ斬りたそうにしてたので、声をかけられなかった。


 と、思ったら──、


「きゃあああっ!?」


 あれ?

 イカの触手の勢いが増し、一騎、また一騎と跳ね飛ばされる。


 天馬騎士たちは近づけない。


「けっこう強いな、あのモンスター」

「けっこう、っていうか、天馬騎士が八騎がかりで押されるなんて、ものすごく強いわよ」


 と、エルザ。


 うーん、シャーリーは自信たっぷりな感じだったから、てっきり助太刀無用だと思ったんだが。


「ちょっと行ってくる」


 とりあえず、俺が片付けておこう。


 前方に【ブラックホール】を展開。

 射程距離の100メートルまで、俺はぱちゃぱちゃと水面をかき分け、泳ぎ始めた──。

日間ハイファンタジー9位まで上がってました。一桁順位はひさびさなので嬉しいです(*´∀`*)

ありがとうございます!

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