6 勇者と冒険者1
「俺の隠蔽魔法が効かなかったのか……?」
「ざんねーん。俺は索敵が得意なのさ~」
少年の姿をした超魔戦刃が自慢げに胸を張った。
「目的はなんだ? 四天聖剣とSSSランク冒険者がそろっている以上、単なる偵察などではあるまい。おそらくは──」
二十代くらいの青年の外見をした超魔戦刃が告げる。
「勇者ベアトリーチェの奪還か」
「……分かっているなら隠す必要もないな」
リオネスが前に出た。
「ここからは『潜入』ではなく『侵攻』になるか……まあ、こそこそ隠れながら進むのは性に合わん。お前たちを斬り捨て、さっさと先へ進むことにしよう」
「やってみなよ。このラウルが君の攻撃をすべて見切ってやるからさ~」
「ラーバスだ。皇帝陛下の元にお前たちを通すわけにはいかん。お前たちを一人残らず殲滅する」
名乗る二体の超魔戦刃。
「『水』の四天聖剣、リオネス・メルティラート」
リオネスが名乗り返した。
「すべてを切り裂き、滅ぼせ、ガブリエル──滅殺形態」
手にした長剣からまばゆいスパークが散った。
「すべての神気を破壊能力に特化させ、刀身にまとわせた形態──これを出した以上、お前たちの死は決定された」
敢然と告げる四天聖剣の勇者。
「待て、ここは地下遺跡だ。地盤も脆いし、火力が高い技を使ったら崩落する恐れも──」
「お前に言われずとも分かっている」
クルーガーの忠告にリオネスは鼻を鳴らした。
「巻き添えを食わないよう下がっていろ。他者の助けなどなくとも、私一人で十分だ」
「あ、ずるーい。ボクだって戦うよ~」
と、レイア。
「私は『最強』の一族に生まれ、その『最強』を継承した存在。誰が相手だろうと、負けることはない。負けることは許されない」
リオネスが進み出る。
己の力量に対する絶対的な自信、そして誇り。
同じく『最強』を体現するマグナとは、まるで違う──。
キャロルはそう感じていた。
「いくぞ、改造兵士ども」
リオネスが高速で移動する。
ザイラス流剣術を駆使して、一瞬にして二人の超魔戦刃に肉薄した。
戦士ならぬキャロルには、まったく捉えられない超高速移動。
まるで瞬間移動だった。
「さすがに速いね~」
「ちいっ」
ラウルもラーバスも剣を抜いて切り結ぶが、すぐに押されてしまう。
真っ向からの斬り合いならば、やはりリオネスに分があるのだろう。
「ラウル、捕まれ」
と、ラーバスが少年を抱え、大きく跳び上がった。
その背から翼が出現したかと思うと、遺跡の天井スレスレ──十メートル近い高度で浮遊する。
「飛行能力か」
リオネスがうなる。
剣から水流の弾丸を放つが、ラーバスはラウルを抱えたまま、それらをやすやすと避ける。
「ちっ、あまり火力を上げて遺跡を崩すわけにもいかん──」
「なら、俺の出番だな」
クルーガーが進み出た。
「手を出すなと言ったはずだが」
「仲間だろ、今は」
「……仲間、だと」
「空への攻撃手段なら、あんたより俺の方が多い。選手交代だ。レイアと一緒に、まずは奴らを落とす」
鼻を鳴らすクルーガー。
「落とすだと」
「ああ、だから奴らが地上に落ちてきたら頼む。地上での戦闘能力はやはりあんたが最強のようだからな」
「だね。ボクもさすがに君には敵わないかな。さっきのちょっとした攻防だけで分かっちゃった」
と、レイア。
「四天聖剣、伊達じゃじゃないね~。だけど、この局面ならボクにもやれることがありそう」
妙に嬉しそうだ。
「俺たちはあんたの強さを信じる。だから、あんたも俺たちを少しだけ信じてくれ」
「……お前たちの力を見てからだ」
リオネスは言いながら、一歩下がった。
「あんた、打ち解けやすいタイプじゃないけど……自分の強さや立場への誇りってのは、なんとなく分かる」
クルーガーがニヤリと笑う。
「だから、嫌いじゃないぜ。あんたみたいな奴──『ウィンディプリズナー・ランク7』!」
放った風が二体の超魔戦刃にまとわりつく。
「う、動けない……!?」
「俺のオリジナル拘束魔法だ。七重にかけた風魔法で対象を抑えこむ──超魔戦刃だろうと、簡単には抜け出せねーぜ」
得意げなクルーガー。
「やれ、レイア」
「りょーかいっ」
うなずいた武闘家少女が、「ひゅうっ」と細い呼気を吐き出し、跳び上がった。
一気に十メートル近くの高さまで。
特殊な呼吸法で己の身体能力を一時的に倍加させて戦う、気功武闘法だ。
「はあああああああっ!」
気合とともに拳が、蹴りが、流星の勢いで二体に叩きこまれる。
「ぐ、ううっ……」
押し切られ、落下するラーバスとラウル。
「地上にさえ落ちれば!」
そこへリオネスの斬撃が叩きこまれた。
なすすべもなく二体は両断される。
「……よくやった」
剣を収めてリオネスが告げる。
「思っていたよりも、かなりやるようだ。見識をあらためさせてもらう」
と、小さな声で付け加える。
「あ、ちょっと照れてるのです。ツンデレさんなのです」
キャロルがすかさずツッコんだ。
「素直じゃないわね、もう」
微笑むエルザ。
「──さすがにやるね~!」
「なるほど。これが四天聖剣とSSSランク冒険者の実力か」
真っ二つになったはずの二体が、起き上がった。
いつの間にか元通りの姿で。
「だが我らも皇帝陛下より新装備を与えられている。簡単にはやられん」
「今度は俺たちのターンかな~!」
超魔戦刃たちの体から青黒いオーラが立ち上った。
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