9 鳳炎帝ポルカ
目の前には五百人の勇者たちがいた。
剣や槍、弓、斧、鞭──手に手に輝く武器を持っている。
奇蹟兵装。
神の力を具現化するという聖なる武具だ。
魔族にとって、もっともやっかいな武装。
それが──全部で五百。
だが彼に恐れはない。
あるのは、純粋な興味。
五百の奇蹟兵装は、果たして自分を傷つけるに能うのか、否か。
「さあ、かかってきなよ」
微笑み混じりに、彼──鳳炎帝ポルカは歩き出した。
人間でいえば、年齢十歳前後の愛らしい顔立ち。
背中から伸びる真紅の翼は天使を連想させ、少年に神々しい印象を与えていた。
「消えろ、魔族!」
五百の奇蹟兵装が、赤や青、緑に黄色と様々な輝きを放つ。
無数の聖なるエネルギーが空中で寄り集まり、より強大なエネルギーの矢となって突き進んだ。
「五百の勇者が集まり、初めて撃てる最強合体奥義──『天想烈壊聖燐弾』!」
「いかに魔軍長であろうと、いや仮に魔王エストラームであろうと、この奥義には耐えられまい!」
勇者たちが快哉の叫びを上げる。
「ふうん」
ポルカは迫る光の矢を見つめ、
──ぱちん。
指先ひとつで弾き飛ばした。
「っ……!?」
勇者たちがいっせいに息を飲む。
「五百人がかりの攻撃でこの程度か……つまんないね」
ポルカは、ふうっ、とため息をついた。
背中の翼を軽く羽ばたかせる。
たちまち灼熱の竜巻が発生し、勇者たちを全員吹っ飛ばした。
「ぐああああっ……」
叩きつけられ、動けなくなる勇者たち。
ただの一撃──それも羽ばたき一つで、勝負ありだ。
「ば、馬鹿な、我ら勇者軍五百人が、たった一人を相手に──」
「つ、強すぎる……化け物か──」
勇者たちの愕然とした声が戦場に響く、
「強すぎる? 違うな~」
ポルカは片手を軽く振るった。
ただそれだけで炎をまとった衝撃波が発生し、勇者全員をふたたび吹き飛ばす。
「君たちが弱すぎるんだよ。あーあ、どこかに僕に立ち向かえるような猛者はいないかな~」
と、
「ここにいる」
「これ以上、貴様の好きにはさせんぞ、魔族!」
凛とした声とともに、二つの人影が現れた。
たちまち勇者たちが歓声を上げる。
「おお、コーデリア様にラーバイン様! 四天聖剣が二人も!」
「火の四天聖剣、コーデリア・フィラスよ!」
「同じく四天聖剣、地のラーバイン・スターツ推参!」
燃えるような赤毛をポニーテールにした女勇者と、筋骨隆々とした大男の勇者がそれぞれ名乗った。
「へえ、人類最強戦力──四天聖剣か」
少年はすうっと目を細める。
ようやく骨のありそうな相手が現れた。
己の全力をぶつけるに値する相手が、現れた。
その喜悦でつぶらな瞳が輝いた。
「いいね。じゃあ、ちょっとだけ本気になっちゃおうかな~」
──そして、わずか三分後。
「が、はっ……」
「うう……」
戦場に、二つのうめき声が重なる。
勝負は一瞬だった。
コーデリアとラーバインの熾天使級奇蹟兵装でさえ、ポルカに傷一つ与えられない。
逆に彼の反撃一つで、先ほどの五百の勇者たちと同じく、叩きのめされてしまった。
圧倒的という言葉すらなまぬるい。
戦闘能力の次元が違いすぎる──。
「これで人類最強? 期待して損しちゃったな~」
ポルカはため息をついた。
こんなことなら魔界で遊んだり、気ままに修業する必要もなかった。
彼一人が出張れば、人間界征服などたやすく為せるだろう。
「……そういえば、ライゼルを殺した奴がいるんだっけ。そいつはもうちょっと強いのかな?」
ポルカがつぶやく。
魔軍長ライゼル。
不死王の異名を持ち、ポルカほどではないが、魔界最高の猛者の一人だ。
それを苦も無く打ち倒した人間がいるという。
名前は確か──マグナ・クラウド。
「次はそいつを探してみようかな。ちょっとは楽しませてよね、マグナくん」
ポルカはほくそ笑み、翼を広げた。
次回更新は2月12日(火)です。
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