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1 昇格記念旅行

 俺たち三人はAランク昇格記念に、ちょっとした旅行に行くことにした。


「レムフィール王国の東にある『蒼の海』に行かない?」


 提案したのはエルザだった。

 レムフィールは、俺たちが住むラムド王国の隣国である。


「海水浴場として有名でしょ。私、前から行ってみたかったの」

「俺も行ったことがないな」

「あたしもなのです。行きたいのです~」


 キャロルがぴょぴょん跳ねてはしゃいでいる。

 可愛い。


「俺も賛成だ」

「じゃあ、決まりねっ」


 満場一致で、俺たちの旅行先はあっさり決まった。




『蒼の海』までは馬車で片道四時間くらいだ。

 けっこう近い。


 だけど──その途中の山道で、俺たちは足止めを食った。


「これは……ひどいな」


 ちょっと前の大雨で土砂崩れが起きたらしく、土の壁みたいになっている。

 これは全部どけるのに何日かかるか分からないな……。


「通れないのです」


 キャロルが悲しげだ。

 と、


「あんたたち、旅の人かい?」

「俺らもずっと作業してるんだけど、土の量が多くてさ。復旧までまだまだ時間がかかるぞ」


 土木作業をしている人たちが、疲れた顔で言った。


「うーん……別ルートから行くしかないか」

「でも、迂回するとものすごく遠回りになるのです」


 と、キャロル。


「馬車代もかかるわよ」


 エルザがため息をつく。


 まあ、Aランクまで上がったし、報酬も当然かなり上がっている。

 ちょっとくらい遠回りしたところで資金は大丈夫なんだけど、やはり追加の出費はできれば抑えたいところだ。


「──って、俺が撤去すればいいのか」


 スキルを使えば簡単にできることに気づく。


「ちょっと下がってもらってもいいですか?」

「ん、なんだなんだ」

「俺も作業に協力したくて。けど、ちょっと俺のスキルは威力が高いので、念のために離れてもらった方がいいと思います」


 作業員に退避してもらい、【ブラックホール】を発動。


「ええと、吸いこむ対象に『この辺の土砂』を追加できるか?」


 俺は中空に呼びかける。


────────────────────

 術者の設定変更意志を確認しました。

 スキルの吸引対象を『術者が敵と認定した者』『術者や術者が仲間と認識した者に対する攻撃』及び『有効射程内の土砂』に変更します。

────────────────────


「あ、俺が合図をしたら、吸引対象を前の設定に戻してくれ」


 と、指令を追加しつつ、【ブラックホール】を展開した。

 際限なく土砂を削るわけにもいかないからな。


 しゅおんっ……!


 音もなく、手ごたえもなく。

 いつものごとく、周囲の土砂は俺が展開した闇に飲みこまれ、きれいさっぱり消えうせた。


「よし、元に戻せ」


 俺はすぐに指令を出す。


 辺りはちょうど100メートル内の土砂が完全に抉り取られていた。

 ……本当は、通行できる程度の道を作りたかっただけなんだが。


 細かいコントロールが難しいな、このスキルって。


「す、すげええええ!?」

「あれだけの土砂が全部消えた!?」


 作業員たちがいっせいに驚きの声を上げた。


「あいかわらず、なんでも吸いこんじゃうのです」

「マグナのスキルならこれくらいは、まあ」


 キャロルとエルザはさすがに慣れてしまったのか、割と平然としていた。


「俺、冒険者だけじゃなくて、土木作業に従事しても食っていけるんじゃないか?」


 ふとそんなことを思った。

 今は冒険者生活が性に合っているから、転職を考える必要はないけど。




 その後は特に足止めを食うこともなく、順調な旅路。

 で、数時間後──俺たちは『蒼の海』までやって来た。


 人気の観光地だけあって、人がいっぱいだ。

 あちこちに水着姿の男女がいて、楽しげな声が響いている。


 俺たちも水着に着替えて、ビーチに出た。


「わーい、海なのです!」


 キャロルが嬉しそうにはしゃぐ。


 彼女はオレンジ色のビキニ姿で健康的な色香を振りまいていた。

 水着を買うときに追加の仕立て料金を払って、尻尾用の穴を空けてもらったから、モフモフの尻尾が可愛らしくピョコンと揺れている。


「ふふん、一般庶民たち。この私の高貴にしてセクシーなグラマラスボディにひれ伏すがいいわ、ほほほほ」


 一方、エルザはキャロルよりもかなり露出の多いビキニ姿だ。

 たわわな胸元に思わず視線を引き付けられる。


 ……よく考えたら、普段のビキニアーマーと大差ない露出度なんだけどな。

 やっぱり水着になると、雰囲気が全然違う。


「マグナさん、エルザさん、早く海に入りましょう~」

「そうね。みんなで泳ぐわよ!」

「待て、まずは準備体操だ。いきなり海に入って、足でもつったら大変だからな」


 二人に注意する俺。


「いちにーさんしー」


 俺たちは並んで準備体操をした。


 それからそろって海に入り、遊ぶ。

 泳いだり、砂遊びをしたり、海の家で一緒に食事したり──。


 うん、楽しい。

 最近、クエストを連日でこなしてたから、ちょうどいいリフレッシュだ。


 やっぱり仕事ばかりじゃなくて、適度に遊ばないとな。


「あら、君たちって噂のAランク冒険者パーティじゃない?」


 ふいに、上空から声がした。


「ん?」


 振り仰ぐと、天馬が空を飛んでいた。

 翼を生やした白く美しい馬だ。


 その馬に、一人の女騎士がまたがっていた。

第2章スタートです。引き続き頑張ります。


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