9 昇格&昇格
「Bランクパーティに昇格ですね。おめでとうございます、マグナさん、キャロルさん、エルザさん」
いつもの窓口嬢がにっこり笑顔で祝福してくれた。
そう、今日の査定で俺はBランクに昇格し、俺たちのパーティもBランクパーティになったのだ。
ちなみに冒険者ギルドのランクには二種類ある。
一つは冒険者個人のランク。
もう一つはパーティ全体のランクである。
前者はその冒険者のクエスト実績やパーティ内での貢献度を総合的に見て、査定される。
後者はパーティ全員のランクやクエスト実績で査定されるものだ。
俺たちのパーティは、ほとんどのクエストを俺の【ブラックホール】による瞬殺でこなしているため、個人ランクは俺だけがガンガン上がっている。
いちおうキャロルとエルザもDランクに上がったが、そこから先は足踏み状態だった。
「この調子ならAランク──さらにその先のSランク以上も夢じゃないですね」
窓口嬢が身を乗り出す。
なんか爛々とした目で俺を見ていた。
思わず気圧されてしまう。
「え、えっと……」
「はっ、すみません。つい、我がことのように嬉しくて」
そういえば、昇格のたびに喜んでくれるよなぁ、この人。
「ナターシャです」
「えっ」
「私の名前。ふふ、いつも担当しているんですから、そろそろ覚えてくださいね」
窓口嬢──ナターシャはにっこりとほほ笑んだ。
三つ編みにした黒髪に眼鏡、気真面目そうな顔立ち。
その顔がやけに赤らんでいる。
「ますますアプローチ激しくなってるのです……」
キャロルがぽつりとつぶやいた。
なぜか拗ねたような顔だ。
「へえ、人気あるじゃない。マグナ」
エルザはエルザで妙にニヤニヤしている。
「なんだよ、二人とも……?」
それはそうと──Sランクか。
ちょっと前までは考えもしなかった話だった。
「冒険者ってSランクが最高なのです?」
キャロルがたずねた。
彼女はもともと狐の獣人の里に住んでいたから、冒険者のことについてはあまり詳しく知らないのだ。
「いや、最高ランクはSSSだ。その下はSS、S、それからA以下が続く」
「最低ランクがEということは全部で八つのランクがあるのですね」
ふむふむ、とうなずいているキャロル。
狐耳がそれに合わせて、ぴょこん、と揺れるのが可愛い。
「SSSランクなんかは、大陸でも何人もいない本物の英雄たちだな」
俺が説明した。
「噂では最上位の勇者と同レベルの猛者もいるらしいわね。雲の上の存在よ」
と、これはエルザ。
「ほえー。世の中には強い方たちがいるのですね」
キャロルが感心と驚きの混じったような顔で言った。
「ですが、マグナさんも負けてないのです」
「そうそう、あなたのスキルは規格外だからね。いずれSSSになれるんじゃない?」
「そんな簡単にいくかな?」
俺は思わず苦笑した。
「──あ、そういえば、里のみんなから感謝のお手紙が届いていたのです。マグナさんとエルザさんに丁重にお礼を言っておいてほしい、って書いてあったのです」
キャロルの里への仕送りは、今までに稼いだ報酬で食料や水を大量に買い、送っておいた。
「お二人のおかげで、里のみんなもお腹を空かさずにすんだのです。本当にありがとうございましたぁ」
深々と一礼するキャロル。
「俺たちはパーティだろ。礼なんていいよ。それにキャロルには『もふもふ』って報酬をたっぷりもらってるし」
「はわわ……そういわれると、照れるのです」
「何よ、もふもふって? まさか、あなたたち……そういう仲なの?」
エルザが俺とキャロルとじとっとした目で見た。
「そういう仲ってどういう仲だよ。俺たちは健全なもふもふの仲だぞ」
「そ、そうなのです。やましいことはしてないのです……です?」
いや、なんで疑問形になってるんだ?
「ふーん……?」
エルザはエルザで疑わしそうに俺を見てるし。
「へえ……」
ナターシャも俺をじとっとした目で見てるし。
みんなして妙な反応だった。
討伐クエスト以外にも、護衛クエストも引き受けてみた。
隊商や富豪の護衛など、不審者が襲ってくるたびに【ブラックホール】で吸いこんで倒す。
基本的に討伐系のクエストとやることは変わらない。
無敵である。
そんな感じで、俺たちは高難度のクエストを片っ端から受注しては成功させまくった。
その驚異的な達成率により、俺は一週間後にはAランクまで上がり、翌週にはパーティのほうもAランクになった。
なんだか、キャロルやエルザと出会ってから、あっという間にAランクまで上がった気がする。
実際は一か月前後くらいか。
毎日が充実しているからか、すごく早く感じた。
「Aランクに上がった記念に、ちょっとした旅行でもしないか」
提案する俺。
「賛成なのです」
「いいわね」
二人とも乗り気だ。
──ということで、俺たちはちょっとした慰安旅行に行くことになった。
次回から第2章「帝国襲来編」になります。明日更新予定です。
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