1 外れスキルが進化したら……?
「今日もぼっちでクエストか」
俺は山道を進みながら、ため息をついた。
『Eランクごときに用はねーよ』
『パーティを組みたい? なんでお前みたいな雑魚を仲間にしなきゃいけないんだ』
『あんた、お呼びじゃないから。あっち行って。しっしっ』
他の冒険者たちから受けてきた仕打ちや心無い言葉が、いくつも脳裏をよぎる。
「しょせんは人数合わせのときしかパーティを組んでもらえないからな」
自嘲気味のつぶやきもすっかり板についた。
俺──マグナ・クラウドは冒険者をしている。
戦士としては三流で、身に着けたスキルも今一つパッとしないため、最底辺のEランクにとどまっていた。
通常、冒険者は依頼をこなすためにパーティを組んで行動する。
が、俺みたいに実力もスキルも今一つな冒険者はその仲間に入れてもらえないことが多い。
仲間を募集しているパーティに応募しても、嫌味混じりに断られることがほとんどだ。
ぼっちでクエストをこなすのが日常になっていた。
「しょうがないか」
慣れたとはいえ、やっぱり寂しいものだった。
ぐるるる……!
うなり声が聞こえた。
前方の茂みから数匹のゴブリンが現れる。
今回のクエストは、こいつらの討伐だった。
ゴブリンの強さは、だいたい二、三匹で成人男性一人と対等くらいだ。
この人数だと、正面から戦うのは少し分が悪い。
ただし──正面から戦うつもりなんてないけどな。
「【落とし穴】」
俺はスキルを発動させた。
ちなみにスキルレベルは17。
一般的にスキルレベルは15を超えると達人レベルと言われているから、かなり高い数値だ。
……まあ『外れスキル』のレベルがいくら高くても、大した意味はないんだけどな。
ぐおおおん!?
驚いたような声を上げ、ゴブリンたちが俺の作った【落とし穴】に落ちていく。
直径数メートル、深さも二メートルほど。
落ちたところで大したダメージは与えられない。
発動がやたらと遅くて、不意打ちには使えない。
せいぜい知能の低い相手をなんとかはめる程度。
しかも達人レベルまで鍛えて、ようやくこの大きさなのだ。
レベル1のときは深さ十センチくらいだったっけな……。
完全な外れスキルだった。
俺は落とし穴に落ちたゴブリンにクロスボウの矢を浴びせた。
「うーん、我ながらパッとしない戦法だ」
自嘲の混じった苦笑をもらす。
華々しいAランクパーティへの憧れがないといえば嘘になる。
「でも、俺には無理だよな」
人間、分相応が一番だ。