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第0話 かくして勇者は邪悪なる破壊神を退治した。

ちょっと天啓舞い下りてきたのでつい……。

しばらく破壊神メイドちゃんの勇者を破壊する日々を生温かい目で見てください。

 時、空間、そんな概念が破壊されすべて無くなり『無』と呼ばれる世界。

 その世界で勇者一行は、自分たちの世界を……他の世界をも脅かしていた全ての元凶である邪悪なる破壊神と対峙していた。

 邪悪なる破壊神は自分が負けるはずがない、そんな絶対的な自信があるのか勇者一行へと笑い声を上げながら絶対的な攻撃を放つ。

 その強烈な攻撃はまさに暴風のようであり、破壊という破壊が無の世界に生み出され……勇者たちを蹂躙する。


『グハハハハハハッ! 勇者よ、この程度かっ!? この程度で我に挑もうと言うのかッ!! 笑い話にしかならんぞっ!!』

「くっ! 予想以上の強さだ……! だけど、負けるわけにはいかない! この戦いは俺たちの未来がかかっているんだ!!」

「そうです、ブレイブ! 負けてはいけませんっ!!」

「ホープの言う通りよ! 負けないでブレイブ! わたくしも諦めませんからっ!!」

「ああ、ライクが言うように諦めてたまるものか!! ウオオオオオオオオーーーーッ!!」

「「ハアアアアアアアアアアアアーーーーッ!!」」


 勇者ブレイブが雄叫びをあげ、それに応えるように僧侶ホープと魔法使いライクの2人も声を上げる。

 それに呼応するかのように3人の装備が輝きを放ち始める。

 ……そう、何も彼らは算段も無しに邪悪なる破壊神に挑んだわけではない。


 僧侶であるホープには世界樹の枝から切り出され……先端に生命力の塊である生命石を埋め込まれた杖が握られており、身に纏っているのは自身の体力の低さを補うために生命を司る神の祝福が付与された法衣が。

 魔法使いであると同時に一国の姫であるライクには魔術の神である魔神が書き記したありとあらゆる魔法が記され術者を補佐する祝福が込められた魔術書と、周囲に残留する魔力を自らの魔力へと転用することが可能となる魔法の指輪が。

 そして勇者であるブレイブには最高神を始めとするあらゆる神の祝福と……明日を信じてこの世界を生きる全ての人の願いが込められた美しく力強い聖剣、そして同じく神の祝福が込められて明日を生きたいと願う人々の思いが宿った聖なる鎧が。


 それらの装備が、関わった人々の願いが……神たちの祝福が彼らを奮い立たせ、力を湧き上がらせる。

 けれども破壊神による時の破壊が、空間の破壊が、勇者たちの体も心も傷つけ……倒れそうになってしまう。

 だが彼らの背後には、彼らが住む世界が――自分たちを信じてくれる人たちが居るのだ。

 そのことを思い、彼らは邪悪なる破壊神を倒すために何度でも歯を食い縛り、脚に力を込めて、声を張り裂けそうなほどに叫び立ち上がった。

 どれだけの時間が経ったのかは分からない。だが、ほんの一瞬――ほんの一瞬、邪悪なる破壊神の油断が勝敗を決した。


「今だ! 行くんだ、ブレイブーーーーッ!!」

「道はわたくしたちが切り拓きます! 行ってください、ブレイブッ!!」

「ウオオオオオオオオオッ!! これで――最後だァァァァァァァァァァ!!!」


 僧侶ホープ、魔法使いライクの切り拓いた道を駆け抜け、勇者ブレイブは邪悪なる破壊神へと駆け抜ける。

 邪悪なる破壊神はこのとき回避を行うべきだっただろう。けれど彼は破壊神、目の前の脅威を全て破壊するのみだ。

 結果、引くことが無かった邪悪な破壊神の胸へと勇者の聖剣が突き刺さり、突き刺さった刃が邪悪なる破壊神の存在概念を貫いたのだ。


『グ――オ、オオオオ、オオオオオオオオオオオオオーーーーッ!! お、おのれ……おのれ勇者ども!! この怨み……この怨みは、忘れはせん! たとえ再び甦ったとしても、この怨みは忘れはせんぞぉぉぉぉぉーーーーーーッッ!!』


 怨嗟に満ちた叫びが空間に轟き、ボロボロと邪悪なる破壊神の体が砂のように崩れ始めていく。

 崩れていく姿を勇者一行は肩で息を吐きながら、呆然と見る……。けれど戦闘の構えは解かない。

 目の前に居る存在は腐っても神だ。気を抜いた瞬間、不意を打たれて殺される可能性だってあるのだ。

 けれども、邪悪なる破壊神は必死に自らの概念を貫く聖剣を抜こうとするだけで、勇者一行を見ようとはしない。

 だが、存在は認識しているのだろう。怨嗟の声は勇者たちに向ける怨みのみ……いや、時折彼らに手を貸した他の神たちへの怨みも混ざっているのが聞こえる。

 そして……邪悪なる破壊神の体は引き抜こうとしていた聖剣と共に塵ひとつ残さず、無の世界へと崩れ去った。


「お、終わったのですか……?」

「どうなのかしら……?」

「分からない。けど、倒したのならこの世界に何か変化が――っ!?」


 俄かに信じられないと僧侶ホープが呟き、魔法使いライクが勇者ブレイブを不安そうに見る。

 そして勇者ブレイブが口を開いた瞬間、無の世界の空間が揺らめき始めた。

 それは邪悪なる破壊神が創り出していた無の世界の最後を告げる揺らめきだった。

 周囲が震動し、何も無かったはずの空間にヒビが入り始め、割れようとしている。


「こ、これはっ!?」

「不味いわ、空間が崩れ始めてる!!」

「なっ!? は、早く逃げようッ!!」

「これは……無理よ! 崩壊しようとしている空間から逃げるなんて、最高神様でもなければ……!!」

「くそっ、それじゃあどうしたら――――――」


 ひび割れていく空間を見ながら3人は叫ぶ。

 が、そんな彼らの周りを突如球体状の結界が囲み……、一瞬で彼らをこの空間から救い出した。

 それは全ての世界を見守る最高神の力であり、彼らの敵であった邪悪なる破壊神を倒した勇者一行を救うためのものであった。

 そして光が満たす世界で彼らは最高神からの礼と祝福が与えられた。


『ありがとう、勇者たちよ。君たちのお陰で数多の世界は救われた。これは私からの礼だ、受け取ってくれ』

「これは……最高神様の祝福!? あ、ありがとうございますっ!!」

「素敵……。まるでわたくしたちを祝福しているみたいですね……」

「ああ、そうだね。けど、これで終わったんだな……」


 最高神へと頭を下げる僧侶ホープ、勇者ブレイブへと頬を染めながら身を寄せる魔法使いライク、そして在りし日々を思い出しながら遠くを見る勇者ブレイブ……。

 こうして、彼らの旅は終わりを告げ、元の世界へと戻って行った。


 そうして……勇者ブレイブと魔法使いライクは結婚し、平和に暮らしましたとさ。















 ………………ということにはならなかった。

続けて1話目は、本日23時を考えています。

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