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いきなりですが、イケメンな勇者より才能が多い賢者に恋をしました

作者: 雪華りく

 私、ことエヴィーは魔法使いである。いきなりだが同じパーティーの賢者に恋をした。

 「なぜこのパーティーにはイケメンで強い勇者がいるのにマイナーな賢者なんて…」と、思う人もいるだろう。しかし私はパーティーをうまくまとめてくれて優しい賢者・ジーニアが誰よりもイケメンに見える。






 「…ヴィ………エヴィーちゃーん?起きてー!?起きないとキスしちゃうぞ♡」

「ディエリゴ…おはよう……。そういうネタ、いらない。」

寝ぼけ眼をこすりながらイケメン勇者・ディエリゴに挨拶をする。

「朝、人を起こすのはこの私の方が合っていると思うがな…。」

「細いのにがっちりした腕、整った顔つき、若いのに仕事がはやい暗殺者アサシン…イアンは男も惚れる男だもんな。」

私はこんな男まみれなパーティーでいつも過ごしている。朝食まではこのように皆と談笑するのが毎日の習慣となっている、が

「ここは私の部屋何ですけど…寝間着から着替えたいので出て行って貰えますか?」

 



 部屋を出てもまださっきの談義が続いていた。

「なぁ、エヴィー。このパーティーの中で起こしてもらえるなら誰がいい?」

「キルシーですね。召喚者サモナーだから悪魔を呼び起こしたら瘴気が起こるからそれで起きられる。」

選ばれなかったからか、キルシー以外が落ち込んでいる。まだざわざわしている中、いい匂いが強くなる。

「皆さん、ご飯の準備ができました。席について食べ始めて下さい。それと同時に本日の任務の説明を始めます。」

…この声と匂いで私の胸は跳ね出しそうになる。この任務説明の朝食時間が好きだと気づいたのはいつだっただろうか。




 「村を守る今日の任務は、教会作りの護衛・補佐をイアンとディエリゴで、この教会で働いてくれるシスター集めのために神父さんを訪ねるのはキルシー、村人からの相談係を私、エヴィーはその補佐を頼みます。」

この村には教会がない。しかし、「死者を弔うのは教会で行いたい」ということで今、このパーティーはその手伝いをしている。

「ジーニア、村人からの相談って増えてる?」

「はい、教会を作り始めてからますます増えています。正直相談だけでは問題が取り除けないのではないかと、任務内容は後ほど詳しく。」

「怪我人の手当てなどはどのようにしたらよいか?」

「イアンは力仕事に向いている。怪我人が出たらエヴィーの元へディエリゴがつれてきて欲しいです。」

私は、このパーティーで唯一人を回復させることができる。

「なら、回復魔法を使うためと薬用の草をキルシーに頼む。」

「了解した。手に入れたら何か召喚して早く届くよう工夫しましょう。」

「皆さん任務内容を理解したのなら、朝食が済んだら各自任務に移りましょう。」




 「それではエヴィー、任務の説明をします。さっきは私の補佐と言いましたが厳密に言うと違います。最近『悪魔が私達を襲ってくる』という報告が増えています。エヴィーには怪我人から世間話のように聞き出して下さい。」

「わかりました。救急セットと回復魔法の準備をして待ちます。」

「それと、私に何か隠していることはありませんか?」

「いえ、ありません。」

「ならばよいのですが…。」

この皆が住む家でジーニアと2人きり、どうしよう…このような日に「好き」と伝える勇気があったなら……。

「おい!掠り傷の奴らが多めだが怪我人が多くて来た!薬草をくれないか?」

「ディエリゴ、この人たちの手当てはしておくけど薬草を余分に保たせておく。」

「ありがとう。チュ♡これ、お礼ね。」

「やめて。」

ディエリゴが話しを続けているけど無視し、私は薬草を探す。

「………悪魔がさっき現れちゃってさ。まあ、この俺が迅速かつ簡単に倒したんだけどね…。」

「そういえば、ジーニアによると悪魔が増えているらしい。ディエリゴも気をつけて。」

「了解!」

「あ、傷薬用の薬草もない…採りに行くってジーニアに伝えておいて。」






 回復魔法用の薬草だけでなく、薬用の薬草が切れていたことはキルシーに伝えていない。いつもの薬草畑に行き、薬草を調達せねば…と考えたそのとき、悪魔がチラッと見えた。悪魔が止まった先にはキルシーがいた。

「キルシー!?神父様のもとへ行ったはずでは…。」

「君が悪いんだよ…?この間の告白に返事をくれない上にディエリゴやジーニア、パーティーのみんなや村の男達に色目を使ってさ…?僕と君以外のパーティーのみんなや村の男達を消そうかと思ったけどやっぱりやめた。僕達がいなくなってしまえば…」

「待て!」

「ジーニア!おまえがなぜここにいる?僕とエヴィーはこれから消えるつもりなのに。」

キルシーの微笑。それを狂気であることを示すような表情をしている。

「ジーニア、危ないからディエリゴとかと代わってきて!私が何とかする。」

「もう邪魔が入ってしまうのか…じゃあ、早く二人で消えないとね…フフフ。このナイフで自ら君を…。」

「止めろ!」

 ジーニアが声を上げた瞬間、私にナイフが突き刺さ…らずに直前に私の前に出てかばってくれた彼の体に突き刺さる。

「えっ…ジーニア!?嘘でしょ…今、回復魔法を……。」

「ありがとう。でも薬草を使わず、その魔法だけで回復しようとするとこうしてあなたと話す時間を作るのがやっとでしょう?」

「ジーニア…死んじゃ嫌。あなたのことがずっと…。」

「最期ぐらい私に決め所を作ってくださいよ…好きな人に看取られるというのはなかなかいいものですよ……。」

私の体がジーニアの元へ引き寄せられる。唇に触れ、深く、そして甘酸っぱい幸せな瞬間ときが流れる。その奥には死の冷たさを感じさせ、悲しみを呼び起こす。「この村に死者を復活させる能力を持つものはいない」その悲しみは、今までにあった苦しみ・悲しみを全て混ぜ合わせて経験するより辛い。

 幸せと悲しみを感じていたそのとき、「ドスッ」と鈍い音、鋭い痛み、狂気じみた笑い声…すべての情報を処理できないまま、私の世界は暗くなった…。






______________________



 「…というわけで、メン楽の初見プレイは『ジーニア編・バットエンド』で終わってしまいました~。」

ハウチューバー、それはどんな動画でも世界に笑い・安らぎを与える仕事。今日は、「エヴィーという魔法使いの少女が逆ハー状態の中ひとりの男と恋する…」という内容のゲーム「メンクイの楽園~恋と任務は同じもの~」のプレイ動画撮影だった。

 さあ、明日はどんな動画の企画を立てようかな…。

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