三十代思い起こす幼少期〜1〜
、、、かし、、たかし、、
のっぺりとしたまどろみの暖かさからはみ出した
鋭い寒さを下半身に感じる
たかし、もう7時過ぎよ!はよ起きね
12月25日の早朝。
小学2年の僕
腰から足にかけての痛みと昨日寝付けなかった
気持ちの高鳴りで覚醒して行く
極寒の自室で、巻き取った掛け布団で誰かに抱きしめられた様に暖をとった上半身と
他人のものの様に冷え、今にも失禁しそうな下半身との矛盾に掻き回されながら母の声で現世に連れ帰られてくる
布団を直しながら、ふあっ!と気付き探した枕元の右側に置かれた 荷物 を手繰り寄せる
薄い紙に包まれた、しかししっかりした包み紙に、落ち掛けた瞼を開きながら品定めする
右に足を出したつもりが左にながれ
左に出した足が右に寄り添う
ここの寒さは嫌だ、と言う体を
母が温めていたコタツの中に滑り込ます
それだけでは足りないと言う首から上と
手首に答えるように
ぽぽぽぽ、ぽぽぽぽ
石油ストーブが声をあげる
煩雑に着けられた火が間違いを指摘するように音と煙で主張している
僕は、その大きな銃弾のようなストーブの燃焼部分に手を伸ばし左右に乱暴に揺らす
ぼぼぼぼぼぼ
少しの余韻と不満そうな音を立てながら、しかし従順に光と温もりと、たしかな灯油臭さを発しながら、さもありなんとストーブが輝きはじめる
夢の中に置いてきたと思っていた下半身が、現世に戻ってくるとき
その頭の横に置かれた包み紙を思い出す
その冷たく刺すような包み紙に包まれた箱をうらがえし
キッチリと折り返した折り目をなぞる
カッチリと止められたテープに指をかけ
かりりと指をもじる
開けるものを拒否する様にピッチリと閉じられた包装を
やや強引に引き裂く
多少の後ろめたさと、それ以上の幸福感で箱を迎える
そこには三番目くらいに願ったおもちゃの箱が顔を出していた
青いボデーのミニ四駆の絵が、スピーディーなタッチで描かれていた
及第点の品物をなぜながら蓋をあける
プラスティックの補佐枠に囲まれた滑らかなフォルムのパーツの数々が目に入る
面の絵の様に作り終えた後の、さらなる改良に思いを馳せていると母親に朝食を促される