キルヴィを取り巻く人々
んしょ、んしょ、んしょ。
「はあああんっ可愛いいいいっ!!」
はいはいするわたしを見て奇声を発しているのは新入りのメイド、セイラ。
「セイラ、うるさい」
それを容赦なく叱りつけるのはお世話係のミホロワ。お母さん(こっちの)の侍女も務めたベテランである。
「……」
まるで違う生物を見るような目をしているのは護衛のアル。純真無垢を体現したような男子で、わたしは非常に彼を好いています。
「あっ、アルばっかりずるーい」
可愛らしく文句をいう“青年”はキルヴィの専属医師、トルティ。目を覆いそうなフサフサくるくるの髪に丸眼鏡、ひょろりと高い背に白衣は、なかなかどうして慣れない。
正直、キモイ。
悪い人では無いし嫌いでもない。
苦手なのだ。
「なんかキルヴィさまが僕を変な目で見るー。」
「トルティが怖いからじゃない?」
「セイラちゃん、そんなまさかー」
「トルティ、キルヴィさま頷いた」
「……キルヴィさま、そんな訳ありませんよね?僕こんなに好きなのに」
「キモイ」
「うぅっ、ミホロワさんきついなー」
「事実ですから」
「キルヴィさま?」
しがみつくわたしを不審に思ったのか、アルが名を呼んだ。
はいはいしただけで息がきれて仕方ない。目眩がしてアルに引っ付いていると、
「おやおや、出番かな」
トルティが唯一かっこよく見える医者の顔になってわたしを抱き上げた。
「無理しすぎたみたいですね。キルヴィさま、少しお昼寝を致しましょう。」
壁際のベビーベッドに寝かせ、じぃーっと見つめてくる。
「ああああ可愛いなぁ食べちゃいたいなぁ」
「アル、出番だ」
「ミホロワさん?ちょっと待って、僕にアルをけしかけないでくれませんんぅわあああああっ」
アルによりベッドロックを施されたトルティ先生は、その後無事生還した。