表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Fxxkin’ウィッチ★鬼畜子様!  作者: ゆうき@姉妹物語
6/9

第五章 瓦礫の中の宣誓

 自分の咳で目が覚めた。

 少し気を失っていたらしい。

「ん……痛てて……、クソ、またかよ……最近こんなんばっかだな……」

 目を冷ますとあたりは仄暗かった。

 アタシの身体はどうやら大した怪我はしていない。

 そこら中に砂ぼこりが舞ってやがる、アタシは何度か咳をしてから立って周囲を見回すと、何かが足に触れた。

 ぶっ壊れた非常灯だ。辛うじて電気がきてるので、少しだけ付近をうかがい知れる。

 チカチカしてやがるし、いつ消えてもおかしくないがな。

「ケイ子……さん……」

「あ、クリスか? どこにいる?」

「ここです……」

 声の方をみれば、瓦礫に半身が埋まったアホ面を見つけた。

「脚が抜けません……」

「チッ、貸しだ」

 アタシは魔法を唱えようとしたが、改めてヤツのサイコっぷりに気づかされた。

「は? 魔法が出ねえ……」

「ア……アンチマジックですか?」

「いや違うな、なんだこれ……」

 アタシの魔法が使えなくなるなんてのは、よっぽどのアンチマジックだが、そもそもこれはアンチマジックじゃねえ。

「くそ、多分召喚魔法だな」

「どう言う……ことですか……それ?」

「魔方陣を書いてそこから神やら精霊やらを一時的に呼び出す、呼び出されたそいつが魔法を無効化する力を持ってんだろう」

 何を呼び出したか知らねえが。

「しかも、どうやら、瓦礫に魔法障壁までかけてやがる、魔法が切れるまでしばらく助けは期待できねえな」

 サイコのヤツ、どうやら夜々を捕まえた後、戻ってきてアタシを狩るつもりだ。

 これじゃまるで、モズの早贄だ。

「あいつもトータルデストロイヤーなんですか?」

「ああ、そうだ、間違いない」

「僕、どうなるんでしょう」

「どうしよもうねえ、死なねえようにせいぜい頑張れ」

「はあ……」

 見たところ外傷は無さそうだが、瓦礫に埋もれていて、圧迫されている、そのうち呼吸困難になっちまうだろう。

 アタシはロッドを瓦礫の下に差し込んで、テコの原理で動かそうとしたが、小さなロッドじゃやっぱり動かねえか。

「クソ、ダメだな、びくともしねえ」

「そのロッド丈夫ですね」

 クリスは苦笑いを浮かべて言った。

「これか、まあな」

 あまり綺麗じゃないがな。

 偉く丈夫で、何しても壊れねえ。

 そもそも具現化された魔法石だしな、壊れても元に戻るんじゃねえか。

「アイツ、そんなに手強い相手なんですか? 見た目は凄い美人でしたけど……」

「あんまり喋るとくたばるのが早くなるぜ?」

 明らかに喘鳴が多くなってやがる。

 意識を失うのも時間の問題かもな。

 アタシはクリスの近くに腰を降ろした。

 立ってても仕方ねえ。

「あれは確か、アタシが白魔女部隊に入って暫く経った頃だ、そうだな、十二、三歳だっか……」


 ――静だな、昔話でもするか。

「ほんとの魔法少女ですね、可愛かったろうな」

「ただの生意気なクソガキだった。魔法使いの戦いはな、極めて苛烈になる。焼き殺すなんてざらだ。糜爛の霧で相手の身体を腐らせる、物体移動で口から内臓を吐き出させる、まあ、残虐な魔法には事欠かない」

「こ、怖すぎますね……」

「昔な、魔法使いを戦争に使った事があったんだ」

 もちろんそんなことは極秘だし、どこの国の文書にも載ってやしないだろうけどな。

「酷いもんだった、みんなイカれてやがった。朝から晩まで戦ってばかりで、まるでサイコパスのデスマーチだった。それでな、アタシはマスターチーフの指示で五人組を組まされて、あのサイコを殺す任務にあたってた」

「子供に……ですか、戦争なのに?」

「白魔女部隊の正規メンバーは哲学的な訓練を日々施されてる、精神年齢は人間どもとは比べ物にならねえよ、使えりゃ子供もクソもねえ」

 そのせいでイカれてるのかも知れねえがな。

 ま、元々イカれてないかと言えばそれも疑問だ。

「晴れた日だった、蒸し風呂みたいな暑さだったな、場所はアジアの端の小さな村だ。アタシらは、一週間かけて、サイコの能力を調べて、隙あらば殺す手筈だった。だが、七日目に交戦を始めるとあっと言う間に三人殺られた、昼過ぎにはチームは二人だけになってた」

「例のマスターチーフはいなかったんですか?」

「そん時はな……。ヤツがあそこまで強力だとは誰も思わなかった。大体魔法使い五人だぞ? 普通考えたら充分すぎる。サイコは、調査中ワザと雑魚を装っていたんだ、つまりアタシらはとっくに気づかれてたわけだ。マヌケな話だな」

 アタシも当時はまだまだ大した魔法使いじゃなかった。

「アタシと、残ったもう一人は、イオって名前だった」

「イオ……」

「ああ、そいつはアタシの親友で、いつもペアを組んでいた。魔法使いにしては、奇跡みたいに善人だった。赤ずきんの格好をした、ふざけた趣味ではあったがな」

 イオはいつも命令無視してユニフォームを着ずに赤ずきんのカッコしてたな。

「ど、どんな人でしたか?」

「そうだな、そうそう、黒髪のお下げを三つ編みにしてた。確か故郷に兄を残して来たとか言ってたな」

「そう……ですか……」

「ん? 知り合いか?」

「いえ、知り合いに似た子がいたなと思って……」

「へえ。私は、この力を平和の役に立てたいと思う。悪の魔法使いがいるなら、彼らを滅ぼしたい。とか、お前みたいな事を言ってたな。そんなヤツだったよ」

 イオは気が強かったが、よく祈りを捧げてた。

「アタシは、とにかく早く退却しようと言ったんだ。だが、イオは倒す気満々だった」

「ケイ子さんらしくもない……」

「相手が悪すぎた。とにかく怖くて仕方なかったのさ」

 今とは大違いか、慣れってやつは恐ろしいもんだ。

 まあ、色々あったからな。

「サイコはな、指折りのマジキチだ、人を殺しながらマスを掻くようなヤツだぜ、信じられるか?」

「冗談にしても過ぎますよ、ケイ子さん……」

「いやマジだ、実際にそいつは、無抵抗な村人に糜爛の霧を振りかけ皮膚を腐らせて、そこにウジ虫をぶちまけて喰わせてた、てめえはその死にかけた連中を見ながら愉しくセルフプレジャーと洒落込んでやがった」

「…ぅぅっ…」

「猟奇なんてレベルじゃねえ。神様が間違って生み出した、人類史上最悪のイカれ女だ。本名は彩子(あやこ)とか言う名前だったが、イカれ度合いのせいで、あだ名はサイコだ。まあ、そんまんまだな、あははは!」

「ケイ子さん、それ笑えません……」

「で、どこまで話した? ああ、そうだった。しばらく逃げるとな、アイツ仕掛けた罠に引っ掛かった、触れると発動する遅発型アンチマジックだ、瞬間アタシは速攻で逃げた。だが、正義感の強いイオはそいつを倒すと躍起になって、戦うと聞かねえんだよ。止めとけって何度も言ったんだ、なのにアイツ……。仕方なくアタシは隠れてみてたよ」

 だが、あの時アタシと逃げてたら、恐らく二人とも死んでいた。と思う。

「幸いアンチマジックの効力は直ぐに尽きた。で、しばらくして、イオはどうやらサイコを追い詰めた。利発なヤツでな、少しずつサイコに魔法を浴びせながら、着実に追い込んでいるハズだった。イオはクリソコラっつう、比較的レアな魔法石を持っていて、既に四種の魔法が使えたし、並みの魔法使いよりかなり強かった。血痕をたどり少しずつ間合いを詰めてった……。ところがだ、ダメだった」

「え……?」

「全て罠だった。アンチマジックが早く切れたのも含めてな。サイコは全く弱ってないどころか、全部お芝居だったのさ。血痕は鶏の血だった。イオはヤツに対峙して、何か魔法を発しようとして、次の瞬間には舌と顎がぶっ飛んできた、アタシの足元にな」

「な……」

「それでな、サイコはイオと、その辺に転がってる死体と、中身を入れ換えやがった、わかるか!? モツをごっそり移動させた。脳だけが生きてるイオは腐ったモツを与えられて、オツムが酸欠で死ぬまで呻いて、もがれた口から覗く喉から、不気味な液体を吐き出してやっとくたばった」

「うげっ……」

 クリスのヤツ、思わず吐きかけてやがる。

「入れ替わった死体の中でイオの内臓が蠢くんだ。サイコは笑いながら言ってやがった。きゃは! 死体が! 死体が生き返ったみたい!! あはははは!! だとよ。アイツはアタシの知るなかでも最悪の魔法使いだ。若干規格外過ぎる。特に火球はとてもじゃないが防ぎきれない。詠唱時間が極端に短くて、神にも等しいほどだ」

「あの……その後、ケイ子さんは?」

「ずっと隠れてた。そして、隙をみて逃げ帰った。その後暫くしてチーフが死んで、白魔女部隊は一応解散した。――すまなかったな、くたばりかけてる人間にこんな話しちまって」

「いえ、構いません。あの、ケイ子さんは、イオを救えなくて後悔してますか?」

「さあな……、わからねえ。部隊が解散になって、アタシは、魔法で酷いことをした罪滅ぼしに、せめて、誰かの役に立とうと思った事もあった。でもダメだ、このざまだ」

「仇は討ちたいですか? イオの……」

「そうだな……、イオの仇は取ってやりたい」

「あの……、イオは……ん!?」

 クリスの言葉を大きな振動がかき消した!

 振動で瓦礫が崩れ始める。

「サイコが来たのか!? 早すぎる」

 アタシは身構えた、この状況は不利にも程がある。

「くそ、やるしかねえか!」

 だが、瓦礫の間から光が射し込むと、そこには別の知った顔がいた。

「クリ……ス……。助けに、来た……よ……」

「ええ! べ、ベアトリス!?」

 先日のお遊び大好きロリータ祈璃の飼い猫だった、ヒュプノシスの失敗作、ベアトリスこと、ウンディーネの亜種だ。

「ギシィィィイイイイ」

 姿を醜く変貌させると、瓦礫を次々どけていき、あっという間にクリスを救いだした。

「良かったなクリス、便りになる嫁さんがいて」

「あ、ありがとう、ベアトリス。ははは……、複雑な心境です……」

「クリ……ス……助けた……なでなで、ご褒美、して……?」

「あ、ああ……ナデナデ……」

「キュン……クリ……ス、だいす……き……、絞めコロシたい……くらい……すき……」

 恐っ! ヤンデレか。

「は、はは……」

 クリスは呑気にご褒美のなでなでをしてやがる、やっぱりあのまま圧死するべきだったな。


 後で外からホテルを見渡すと、完全に倒壊していやがった。

 クリスはベアトリスに付き添われ、外に待機していたレスキュー隊の手当てを受けることになった、病院行きだそうだ。

「あの、ケイ子さん、これからどうするんです?」

「決まってんだろ、博物館へ行く。アンジェ一人じゃいつまでも護れねえ」

「クリ……ス……、その人……、誰? 殺して……良い?」

 ベアトリスはアタシを観ながら言った。

「おい!」

「いやいや、ダメ、ダメだよベアトリス、この人は、仲間だから」

「なか……ま?」

「そうそう、殺しちゃダメ」

 クリスはしどろもどろになりながら説明した。

「クリ……ス、私、以外の女、好きになったら、ダメ……」

「う、うん……、分かったよ、そうする、そうするから」

「クリ……ス……は、私、だけの……もの……」

「は、ははは……。ケイ子さぁん――」

 クリスは助けを求める目でアタシの方を観やがった。

「知らねえよ、じゃあな」

 アタシは、近くの噴水をシャワー代わりに一浴びした  平気だ他にも浴びてるヤツらがいる  で直ぐに博物館へ向かった。

 サイコのヤツめ、ガチでぶっ殺してやる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ