食料、尽きました。
俺は絶賛遭難中だ。
住んでいた村を飛び出して四回日が昇った現在、最大の危機を迎えていた。
腰に携えてあった革袋を覗いた上で、逆さまにして揺さぶる。
カサッ……。とパン屑が落下していき、それ以上何も落ちるものは無かった。
不意にぐぅと腹が鳴る。
――食料が尽きた。
昨日の夜に、最後のほんのひとかけの硬いパンを口に放り込んだのだから、今更だが。
立ち止まって空を仰ぐ。
生い茂る枝葉に遮られながらも、まぶしい位の青空が見える。
こんなにも天気がいいのに、気分は最悪だった。
腹が減っているからと言えば短絡的だが、現実を見れば、食料が無い遭難は流石に洒落になっていない。
今ではあの硬すぎるパンが恋しい。
未だに沢すら見つけられておらず、幸いというには心元無いが、水は多少なりともある。
あるといって安心は出来るはずもない。
このまま沢すら見つけられなければ、空腹と同時に水分不足のダブルパンチだ。
死ぬぞ。俺。
とりあえず状況を整理……いや、やめよう。取り敢えずは食べるものと飲み物の事だけを考えよう。
食料は……最悪現地調達するしかない。もうこうなったらそれしかない。
一応森で遭難しているので、普段食べないような小さい木の実だとか、キノコもちらほらある事はわかっている。
最悪木の皮でも削いでしゃぶれば気でも紛れるだろう。木だけに。
……ともかく次は水だ。
これも木の皮でもしゃぶればなんとかなる。が、足りはしないだろう。
早い所沢でも川でも見つけなければならない。
人は飲まず食わずでもそこそこ生きていけると聞いている。
だが――。
ぐぅぅ。
俺は既に空腹だ。
そもそも節約しながら硬いパンを食べているのだから、当然だ。
何故俺は保存用のパンしか持ってこなかったのだろうか。
ピクニックのつもりだったんだろうか。
――実際、そうかもしれない。
村の生活に森は不可欠で、うさぎやうり坊、鳥なんかを狩るのに毎日出かけていた。
毎日毎日、飽きもせず。とれる日もあれば、とれない日もあるし、雨になったら家の中で皮をなめしてる日々だった。
保存用のパンと携帯水は、狩りに行く時に必ず持っていく物だった。
飽きもせずに毎日森に行っていたから、俺からしたら森は庭みたいなもんだと思ってたんだろうな。
なんとかなるとか思ってたんだろうな。
――それにしても。
「腹……減ったな」
【所持食料】
水