発端
初めてのなろう投稿なので色々と手探りです。
「やった! これで私の二連勝~」
「調子に乗らないことね。その前は私が五連勝したんだから」
「はん。トータルではこれで五分五分でしょ。ここから突き放してやる!」
周りの声に一切耳を傾けようとせず、二人の少女は不毛なやり取りを続ける。
彼女達の足下にあるのはたった一つのアナログ体重計。
全く同じ身長の二人は、いつからかどちらの体重が軽いかを競い合うようになった。
そんな争いが習慣化していた二人に、悲劇が訪れたのは必然だった。
「ふふふ……見て……また体重が減ったわ……」
「私だって……。でも……まだまだ足りない。もっと痩せなきゃ……」
度を超えて痩せこけていることにも気付けない、いわゆる拒食症である。
二人揃って病院に運ばれてから、初めて彼女達は自分達の健康状態を自覚したのだ。
もはや骨と皮だけになった二人に平凡な日常は帰ってこない。
誰もがそう思ったが、彼女達の『勝負』に懸ける執念は尋常ではなかった。
杖を突いて立ち上がった二人は、あろうことかこんな台詞を同時に言い放った。
「「どっちがより太れるか……勝負よ」」
それからの彼女達と言ったら凄かった。
通常の拒食症患者には精神療法と薬物療法のどちらかの対処法が選ばれるが、彼女達は勝負に勝つという執念のみで元の体重まで戻してみせたのだ。
だが、やはりそのいきすぎた執念が問題となって、またも彼女達に悲劇が襲う。
過食症である。
関取のような体型になってしまってから、ようやく二人は学習した。
平均体重を維持しようと。
結果、高校生活も残り一年となった頃、二人は奇跡的に元の健康体となった。
それでも彼女達の『勝負』の火種が消えることはない。
痩せすぎても駄目。
太りすぎても駄目。
「適正体重を維持するのなんて勝負にならないしなぁ~」
「その人その人の適正体重が円周率並みに細かく分かればいいのにね。そうすれば、どこまで近づけるかで競えるから」
「それだ!」
「え?」
「適正体重を超細かく量れる体重計! 私達で作っちゃえ!!」
「でも、超細かくとなると難しいんじゃない? 日々の生活で微妙に変化するだろうし」
「だから良いんだって。勝敗が偏らないもん。運だって左右するし、何より面白そう!」
「……そうね。確かに、私達の勝負には相応しいかもしれない」
「どうせなら私達だけじゃなくて、これから生まれてくる子供達にも使えないかな?」
「成る程。刻々と成長する子供ならより勝負の醍醐味が味わえる」
「適正体重を維持することは、健康を維持することでもあるでしょ?」
「「……」」
この日。
とりあえず適当な大学に行こうとしていた二人に、共通の夢ができた。
それはあまりにも滑稽で、常人には理解不能な夢。
しかし二人は、『ボディマス指数』という人の肥満度を表す体格指数に一筋の光明を見いだし、この夢を叶えてしまう。
そしてその夢は後任者によって引き継がれることになる。
新たに派生した『勝負』を加えて。