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革命乙女と七人の騎士  作者: 黒一もえ
1楽章・犬も従う協奏曲
13/30

十一小節・彼らは秘密を持っている

 エルは歩いていた。

 所用があるので会わなければ行けない男がいた。一番の親友であり、好敵手。

 クラウリス=ローディ東将軍代理。

 役職もほとんど同じで同い年。二人で組んで戦うことが多かったので北と東に別れたときはやりにくかったが今は離れているのが当たり前となってしまった。「いつも一緒の大親友♪」とか思っているわけでも男が好きなわけでもない(エルは百パーセント女好きのノンケだ!)が、クルアと同じように親友と会えないのは寂しい。

「俺は意外と寂しがり屋だからな」

 誰かといる空間の方が断然心地よいし、一人でいるのは慣れないし、誰か人との間に溝があるのはつまらないと思うし楽しくない。それを優先できる社会でないことは百も承知だし、仕方ないのだけれど。

 しゃきっと背筋を伸ばすエルの姿は貴公子そのものだ。茶色の髪は短くもなく長くもなく適度な長さで、怜悧かつ優しげな瞳は金。背もすらりと高く、騎士時代に問題児として受けていた罰則(筋トレ)のおかげで鍛えられている。そのうえ実家で家を継ぐための訓練でしごかれている。それで貴公子にならなかったらクルアではないが穴を掘って埋まりたい。恥死する。

 そんなことを考えながら西将軍の執務室の扉をノックする。

「エルクローラです」

「ああ、入れ」

 西将軍も交えての話し合いなので、最近視察が多い彼がちゃんといてくれることに安堵する

 落ち着いた執務室の中に入ると、黙々と本を読んでいるクロウと丁寧に書類にサインするテオの姿があった。丁寧だが得意の速読で業務をさっさと終わらせる点は、クルアにも見習って欲しい。彼女の場合は慎重すぎて進まない。

「フレッドは用があるって」

 南将軍のことだ。

「接待か?」

「うん。顔よし、頭よし、性格よし、って三拍子そろってるから。俺等じゃあいつみたいに一癖二癖を隠しきれないじゃん?」

「ああ。やっぱりそうなるよな。まあ、接待なんぞやりたいとも思わないけどな」

「お偉いさんってどうして男ばっかりなんだろうね」

「おい、ンなことどうでもいいからルイツはどうした?」

 クロウと盛り上がっていたら水を差された。

「テオ知らないの? 団長は夜間警備でてんやわんや。副団長のライドは村荒らしの調査。あとリトもどっか行ったな」

「そうか」

 と言いつつも、「あんの馬鹿弟は何サボってやがる!」と怒る西将軍だ。

「定例会議もおちおちやってられないな」

 クロウがやっと本を閉じた。

 エルは苦笑してから室内を見回した。

「じゃあ、これから定例会議を始めます」

 エルの朗々とした声は、よく聞こえた。

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