メイドさん、雇いました。
この作品はシュウさんの『女の子、買いました』『女の子、娘にしました』とは一切合切関係はございません。
安心してお読みください。
ある日、なんとなく買った宝くじが大当りし、それなりのお金を手に入れた。
そのお金で、昔からの夢だった綺麗なメイドさんを24時間体制で一人雇ってみた。
そんなメイドさんと暮らし始めてから丸7日。
「おかえりなさいませ。京介様」
「あぁただいま。今日も綺麗だね」
「ありがとうございます。お風呂のご準備が出来ています」
「ありがと。入ってくるから、このカバンを俺の部屋に置いておいてくれないか?」
「かしこまりました」
家に帰ると、きちんとしたロングスカートタイプのメイド服に身を包んだ茜さんが出迎えた。
俺はメイドの茜さんにカバンを渡すと、そのまま風呂場へと向かった。
そして服を脱ぎながらいつものようにちょっと妄想。
いつもは澄ました顔で何ごとにも動じない茜さんが、お湯加減を確かめるためにお湯に手を入れて『熱っ』ってビックリして手を引っ込める。茜さん、蕩れー。
想像は人を豊かにするな。
そんなことを考えながら風呂に入り、いつものようにからだを洗ってから湯船に浸かる。
ほどよく温まったところで出て、バスタオルで十分にからだを拭いてから着替えて、茜さんの待つリビングへと向かう。
「ん。いい匂い」
「本日は恭介様のご要望通り、ポトフとタコライスでございます」
食卓に並べられた料理を見て、またちょっとだけ妄想。
『タコライスってタコが入ったご飯じゃないんですか!?』
『タコスライスのことだよ?』
『こ、これは申し訳ございませんでした!』
『茜さん、蕩れー』
よし。OK。
でも現実にはキチンとした茜さんはタコスライスで作ってくれるんだよね。いいんだか悪いんだか。
そんな変哲もないタコライスを一口いただく。
「お味はいかがでしょうか?」
「うん。ちょっと愛情が足りないかな」
「左様ですか。では次からは善処いたします」
さすが茜さん。隙が無い答え方だ。
ご主人様の俺としては、茜さんとちょっといけない関係になりたい願望とかもあるんだけど、茜さんに嫌われるのはもっと嫌だ。
はぁ。どうしたもんか。タコライスうまー。
夕食を平らげ、いつものようにテレビを見る。テレビではちょっと楽しみにしてた土曜のロードショーのホラー映画が流ている。
ソファに座る俺の後ろで、茜さんは手をお腹の前で重ねて姿勢良く立って見ている。真顔で見れるって事は、茜さんはホラーも大丈夫なのか。
『恭介様っ! こ、こんな怖いの見るの、やめませんか?』
『茜さん。これ作り物だし。もっとストーリーとか楽しもうよ。面白いよ?』
『お、面白いとかそういう問題じゃないんですっ。夜寝れなくなったらどうするんですかっ』
『茜さん、蕩れー』
そして
『京介様…夜分遅くに申し訳ございません』
『どうかした? もう日付変わるよ?』
『その…えっと…』
『枕持って…あっ』
『一緒に寝てもらってもいいですか? ご、ご迷惑はかけませんので…』
『爆発四散!!』
なーんて展開にならないのが茜さんだからなぁ。
これが本物のメイドさんってやつなのか。手ごわい。
「おやすみなさいませ。明日は6時起きですので、5分前に起こしに伺いますのでよろしくお願いします」
「うん。じゃあおやすみ。茜さんも早く寝るんだよ」
「お心遣いありがとうございます。おやすみなさい」
茜さんが部屋から出ていく。
今日も茜さんの攻略は出来なかった。
まぁ先は長いんだし頑張ろう。
寝るぞ寝るぞ。
――――――――
茜さんの日記。
『7日目』
今日も帰ってきた恭介様に『綺麗だね』って言われちゃった。でも仕事なんだから照れてはいけないので、いつものように返した。内心ドキドキした。
あんなイケメンに言われたら誰でもドキドキすると思う。彼女とか居ないのかしら?
今日の夕食はタコライスのリクエストがあった。
意外とお子様舌なのか、オムライスとかハンバーグとかの有名な料理が多いのに、今日はタコライスときた。タコライスを知らなかった私は『タコのまぜご飯かなんかだろう』と思い、とりあえずタコと、それに合わせて肉じゃがを作ろうと午前中のうちに材料を買いに行った。さすがに恥ずかしいから、メイド服ではなく私服を着ていった。
そして午後からは掃除や洗濯を済ませ、タコライスの調理に励もうとした。
一応作り方を間違えないように、スマホで調べてから作ることにした。
そしたらまさかタコライスが『タコスライス』のことだったので、私は冷や汗がダラダラと流れるのを感じた。
そこからはもう大変で、思わず飛び出してしまったので、メイド服のまま買い物に行って、大急ぎでタコスライスの元を買って家へに戻り、肉じゃがの予定を変更して、ポトフに切り替えることにした。
お風呂に入っている間にポトフがいい感じになるぐらいギリギリセーフだった。
そして京介様がお風呂から出てきて、夕食が始まった。味見する時間も無かったので、もし追求されるようなことがあれば素直に謝ろうと思っていたのだが、『愛が足りないかな』と冗談を言うくらいで、私はホッとした。
食後はいつも映画とかニュースを見ているのだが、今日はまさかのホラー映画だった。
京介様はニヤニヤしながら見ていたけど、私にはそんな余裕はなく、ただ泣かないようにするので精一杯だった。目をそらそうにも、もし京介様が『今の見た?』なんて聞いてきて答えられなかったら困るので、見ているしかない。
ホラーとかホント怖いんだけど…
やだっ。思い出してきちゃった。
寝る前にトイレだけ行っておこう。
今日ぐらいは電気を点けたまま寝てもいいよね? 京介様の許してくれるはず。
明日は余っちゃったしらたきを使った料理を考えないと。
明日も頑張るぞ。おやすみなさい。
おしまい
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると山田さんは喜んじゃいます。