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Parallel ちょっとだけ特別な週末の続き

Parallel ちょっとだけ特別な週末の続きです。

急遽お泊りになった二人の朝は?

「ニャーン」

耳元で聞きなれた声が聞こえる。多分ビリーの声だから朝5時半だろう。

いつもの私なら起きる時間だ。でも今日は学校は休みだからもう少し寝てたい。

ビリーは学校が休みの日は起こさないでねって言うと基本的に起こさないんだけどな。

どうしたのかな?と思いながら私は重い瞼を開けて、耳元にちょこんと座っている

ビリーを見つめ、左手で布団を開けた。

「おはよう、ビリー。布団に入る?」

ビリーはいそいそと布団に入って私の体にピタリと体を寄せた。冷たい体。

炬燵の下は電気カーペットだから、ずっと座っていたら電気入れなくてもほんのり

温かいのに…どうして?

ふと炬燵に目を落として、ビリーが冷たい訳が分かった。



昨日、彼がお泊りしたから炬燵で眠れなかったんだ。でも彼は炬燵では寝ていない。

炬燵の横に布団を敷いたんだけども、神経質なビリーには無理だったみたいだ。

「ビリー、ストーブ使ってお部屋暖めようね。寒かったね」

私は布団の中のビリーに向かって囁く。ビリーは暖かくってきたのか、喉をならして

尻尾をすこしだけはためかす。機嫌は良くなったようだ。

私はゆっくりと起き上がった。



「寒いなぁ。12月なんだから当たり前か」

私の部屋には電気の炬燵もあるけれども、昔ながらのストーブもある。

ストーブの上のやかんの水を確認する。思った割に少ないので、水を足しに下に降りた。

無人の下の階は更に寒く感じた。ビリーも下の階には降りてないようだ。

ビリーの餌も水もトイレも全て私の部屋の前の廊下の前に置いてある。

ビリーはおば達が貰ってきた猫なのだが、なぜか私に最初に懐いてしまった。

それ以来、ビリーの世話は私になっている。怖がりなビリーは外には出ないので私の部屋と

廊下でほぼ一日を過ごしている。私がこの家を出るとき、ビリーを連れて行った方がいいんだろうな。

そうなるとペット可の物件を探さないとならないから大変だなぁとぼんやりと考えていた。



部屋に戻って、やかんをストーブにかけて、ストーブを点灯する。

ほんのりと赤く灯るストーブで部屋の中も明るくなった。

日の出前だし、彼が寝ているから雨戸はまだ開けられない。

とりあえず、洗濯機は回っているし、ご飯も炊飯器が頑張ってくれている。

下の雨戸はさっき開けた。新聞も取ってきたので、私はストーブの前に座って新聞を開いた。

世間的には受験生なので、意識的に新聞を読むようにしている。

それと、昨日のスーパーの広告もチェックする。今日は…魚が安いのか。

カレーはあるけれども、明日のお弁当に使えたらいいなぁ。



「うーん」

彼が寝がえりを打ちながら漏れた声。慣れてない布団だから眠れないよね。

私は彼の側に寄って、そっと彼の頭を撫でた。男の人らしい黒い髪。

しなやかな髪だなぁと思いながら、彼の寝顔を見つめる。

本当に昨日家に泊ってしまって平気だったのかな?

私も彼の家には何度となく遊びに行っているから、彼の両親は知っている。

彼の両親のことだから、昨日私が一人だと知ったら…結果は同じだったかもしれないなって

やっぱり思う。彼の懐の広いところは彼の両親の存在があるからだと痛感する。



そう言えば、昨日いつか一緒に暮らそうって言われた。私自身は、来年卒業式が終わる前には

引っ越す予定だ。少しずつ、ビリーと暮らせる家を探している。

センター試験の結果次第では住む場所も変わってくるから、ビリーの存在がネックになるだろう。

そろそろ、いろんな事を清算しないといけなくなるだろう。そのことでややこしくなることは必至だ。

でも、そのことは理事長に紹介してもらった弁護士さんがどうにかしてくれるらしい。

弁護士費用の事を聞いていなかったから、そこのところは理事長経由で聞いた方がいいかもしれない。

来週の火曜日には例の件で理事長室に行かないといけないのだから。



ずっと私を悩ませてくれたあの件も、ようやく終息しそうだ。

先週、弁護士さんから内容証明を送ってもらった。先方からコンタクトが合ったことは聞いている。

あちらさんは、娘が約3年にわたって私にしてきたことを受けいることが難しいらしい。

解答次第では、刑事事件に発展する方向性を弁護士さんが仄めかしてくれたのでこれ以上のトラブルは起こらないだろうというのが弁護士さんの意見だ。それでも、注意しないといけないのは相変わらずだが。



「ありがとね」

私は彼に向って呟いてから、そっと彼の額にキスをする。

彼がいなかったら、あのどん底だった3年前から立ち上がれなかったかもしれない。

他の人を、もう一度信じるなんて事も出来なかったかもしれない。

恋もしかなったかもしれない。私にとってそれだけ彼の存在が大きいってこと知っているのかな?

私なりに彼の事も守っているつもりだった。私が想いを伝えないことが私の守り。

最後は見透かされていたと思う。自分の気持ちをコントロールできなくなっていたから。

恋って、そんなものなんだと思う。そんなクールな恋が出来るわけがない。

「本当にありがとうね」

私はそう言って、もう一度彼の額にキスをした。



「何が?おはよう」

「ごめん。起こしちゃった?」

「いいや、いつも休みでも一度はこの時間に起きるからさ。ビリーは?」

「ベットで寝てると思う。おはよう」

私は彼に朝の挨拶をしてから、彼の両手に手を添えて顔を近づけた。

チュッと軽い音を立ててキスをした。

「もう一回」

彼が私におねだりをする。

「甘えんぼさんなんだから」

私はもう一度彼に優しいキスを落とした。

「おはよう。昨日よりも大好きよ」

私は彼の耳元で囁く。彼の耳がほんのりと赤くなる。


「やっぱり、一緒に暮らしたいな。そのうちに。ビリーも連れて行こうな」

彼が暫く考えてから私に告げる。

「いいの?ビリーがいても」

「あぁ、ビリーも入れて俺達家族になろう?いいだろう?」

彼の言葉は優しいんだけども、目を見ると拒否はないぞって位の力があった。

「いいわね。それって。その日が来るのが楽しみだね」

「あぁ。それには進路を決めないとな」

そう言うと、彼は私を抱き寄せた。今まではドキドキしていた彼の香りが今日はホッとする。

私の中で彼の存在がまた変わった瞬間だった。私か彼の胸に顔を埋める。



「どうした?」

「安心するの。あなたのぬくもりが。あなたの匂いが。私があなたに包まれてるみたいで」

「そっか。多分、家族なる為には必要なのかもな」

彼はそう言うと、私の顎を持ち上げた。

「どうして?」

「ドキドキしていたら、夫婦で疲れるだろう?そう思うだろ?」

「そうかもしれないね。寄り添って歩いて行くんだね」

「そうさ。俺達はビリーも一緒に歩いて行くんだ。愛してる」

「私も…愛してる」

私達は見つめあって笑い合う。



「幸せって、ささやかなんだろうな」

「そうかもね。それに見落としていそう」

「昨日からの事だって、普通の週末のはずだったよね?」

「そうだな。結局はお泊りだもんな」

「うん、特別は週末になっちゃった」

「特別な?」

彼は怪訝そうな表情をした。私の目線と彼の目線が交差している。

そんな所が今の私は楽しい。だって、私のことを理解してもらえるんだもの。

「きっかけは、雷で一人きりだったけど。一緒にお泊りして、お休みのキスをして、おはようのキスもした。ほらっ、特別な週末でしょ?」

「おはようのキスじゃないよ。寝起きのキスだろ?お前の言う通りだな。特別な週末だ。俺だってプロポーズした訳だし。指輪は…待っててくれな」

彼は顔を真っ赤にしながら、私の左手の薬指にチュッと音を立ててキスをした。



「はい、一緒に家族になろうね。その日が来るまで、後何回、恋人として特別な事を一緒に経験しようね」

「そうだな。これからはずっと一緒だからな。それから一つだけお願い」

「お願い?難しい?」

「いいや。二人きりでいる時だけは、俺の名前を呼んで。お願い」

「分かったわ。慣れるまで時間がかかりそうだけど、頑張るわ」

「待ってるからな。さて、布団を畳んでからビリーにも聞いてみようか?」

「えっ?ビリーに聞くの?」

「そうさ。分かってくれるか分からないけど…な」

彼がそう言うと私にキスをした。触れているだけの優しいキス。

「多分、大丈夫。私達がいるところが、ビリーの幸せだと思うわ」

私は彼に向って答えて、ベッドで寝ているビリーを呼ぶ。ビリーは布団から出てきて、彼の元に躊躇いもせずに

やってきた。ほらっ、これなら大丈夫。私達は家族になれる。



「ビリー、俺とこいつとお前だけで家族になろうか?」

「ニャン」

「待ってろな。お前と暮らせる家を探そうな」

「ニャン」

「ありがとな」

そう言うと、彼はビリーの鼻にキスとした。

「冷てぇな。猫だもんな」

苦笑いをする彼を見て私は可笑しくて笑った。

多分、私達はこうやって暮らしていくんだろうなってそんな事をぼんやりと考えていた。


えっと、なろう展開なので…察して下さい。

この中の彼が誰で展開すると自然なんでしょう?

まぁ、パラレルなので楽しんでもらえれば幸いです。

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