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Parallel 理想の恋人

本編より先行した話になっていますのでネタバレ回避されたい方は読まれない方がいいです。


直也高3、倫子2年、智1年です。倫子のクラスには部の仲間がいません。

「ねぇ、倫子の好きな人ってどんな人?」

放課後になっていきなり隣の席の真理ちゃんが聞いてくる。

こういう話って私するのが苦手なんだよね。自分をさらけ出すような感じでさ。

「そうだね、私より背が高い人かな」

私はとりあえず、さし障りのないところを言ってみた。



身長が153センチの私より背の低い男子というのはあまりいない。

けれどもね、私そんなに足が長い訳じゃないけれども…私よりも脚が短い男子はいる。

隣のクラスの渡君がそうだったりする。こないだ私は気がついてしまった。

本人に気付かれたら…きっと凹むだろう。

新学期になってもう2週間。特に親しい友人と同じクラスになれなかった私は

クラス内でポツンと一人でいることも多い。変に気を使わなくていいから楽だけども。



「それってさ、大抵の男子がセーフゾーンだよね。もっと詳しく」

ハードルが低すぎたか。残念だな。

「じゃあね。スポーツが出来る人かなぁ?少なくても私よりも」

仕方なく、私は次の条件を出してみた。これでどうだろう?

「スポーツなら…なんでもいいの?」

真理ちゃんは私が考え付かなかった事を突っ込んできた。

これにはどうやって切り返そうかな。



「そうだね。出来れば…25メートルくらいは泳げるといいなぁ」

「ちょっと。家の学校プールないよ。泳げるかどうかわからないじゃない。

一気にハードルが高くなった気がした」

真理ちゃんが何か気難しい顔をしている。

「そうだね。泳げないからうちの学校にいる人多いものね。でもさ、もしも私が

溺れた時に助けて貰ったら高感度アップじゃない?そう言う事ね」

「あぁ、それって分かる。じゃあ、少し泳げればいいね」

「うんうん、そうなのよ」

はぁ、なんとか誤魔化せた。今の学校では泳げた過去は完全に封印しているから。



「理想が高いって訳じゃないんだね。性格とかはどうなのよ?」

真理ちゃんは今度は内面の好みを聞いてきた。ここからが本番なのかもしれない。

「いつもは物静かな人がいいな。私といるときはおしゃべりさんでもいいんだけどね」

真理ちゃんは私が小出しにしていく条件に当てはまる男子を検索しているみたい。

真理ちゃんって…そう言う人なんだろうか?

「誰か当てまはりそうな人っている?」

「いないような気がするんだけど。うちの学校には」

真理ちゃんがお手上げって両手をあげた。そんな彼女をみて私はほくそ笑んだ。

それでいい。誰にも気づかれてはならない。少なくても後1年半、私はこの気持ちを閉じ込めないといけない。



そんな時、私を呼ぶ声がした。私はゆっくりと振り返る。

廊下には直君ととも君が立っていた。私は彼らを待っていたのだ。

「直君、今日反省会だったの忘れて部活に行ってたんでしょう?鍵がなくて入れないんだけど」

「悪い。俺が持ってたんだよな。坂口に言われるまで忘れてたよ」

「…だと思った。じゃあちょっと待っててね。真理ちゃん、また明日ね」

私はこれ幸いにとに彼女の会話を中断して鞄に荷物を入れだした。

「倫子って、会長兄弟と親しいの?」

「私は、二人とは同じ学区で会長とは小学校の頃よく一緒に遊んだよ。ねっ、直君?」

「そんなにこいつが俺らと一緒にいるのが可笑しいかな?」

私達の会話に直君が乱入してくる。気が付いたら、直君は教室に入っていた。

「ねぇ、直君。今回の反省会はとも君はいなくてもいいんじゃない?とも君、荷物預かってあげるから

部活に行っておいでよ。部活が終わるまでは多分いるだろうから、部活が終わったら取りに来たら?

直君も、弟だからってパシリで使わないこと。」

「ちいの言う事もそうだな。分かったよ。智、部活に行けよ。終わったら生徒会室に寄れよ」

「サンキュー。ちいちゃん。荷物よろしくね」

とも君はそう言うと私に荷物を預けて体育館を目指して走り出した。



「ちいは昔から本当に智には甘いなぁ…全く」

直君はそう言うと、ため息をついた。

「私は全く作業をしていないとも君を反省会に参加させる必要性がないと思ったからです。とも君にとっては

時間の無駄遣いです」

「はいはい、お前の言う事はあってますよ」

私に一方的に責められている直君は肩をすくめた。

「会長と倫子って…」

「真理ちゃん、直君には千世先輩がいるじゃない。直君は暴君だから私は嫌だね」

「千世先輩か。お元気ですか?」

「千世じゃない千世は存在しねぇだろ?」

「はいはい、のろけはいいですから。生徒会室に行きますよ?いいですか?人をこき使うより前に自分も働いて貰いますよ?」

「ちいはいつも正論を言うからなぁ。反論はできねぇけどな」

私は直君にとも君のカバンを押しつける。

「ちいって倫子の事?」

「そうさ。だって、こいつちびじゃん」

「背が低いだけです。精神年齢は直君の方が下ですよ…多分。いい加減に行きますよ。それじゃ、さよなら」

私は鞄で直君を押しながら廊下に向かって歩きはじめた。千世さんと直君に巻き込まれて生徒会の会計になってもう1年経つ。直君の扱い方にも磨きがかかったものだ。



「ところで、ちい。お前の想い人って」

「さあ?何のことでしょう?」

「そうしないとならないお前の気持ちは分かるけど…な」

「だったら、その質問自体がナンセンスですよ」

「いいや。久し振りに素のお前が見たくなってな…」

「そんな事言うと千世さんに言いますよ。直君が私を口説くって…」

「おっ、俺はそんなつもりじゃねぇぞ。ホントにお前は怖い奴だなぁ」

「そうですか?キャラじゃない事はやめましょうね。サクサク仕事を進めて下さい」

私は直君との会話を止めて電卓を片手に書類のチェックを始める。



直君は、多分…私が誰を見ているか気が付いていると思う。

ただ口にしないだけ。口にしたら私が否定するのが分かっているから。

今は、直君に守られているから、表立っては何かをされたというのはない。

細かいことはたくさんされてはいた。今までは一人で処理ができたけれども徐々にエスカレートしている。

更に注意しないと、あいつが何を仕掛けてくるか分からないんだから。

直君が卒業した後を見越して私なりに行動しないといけない。自分の身は自分で守らないと。

私が誰かに甘えるわけにはいかない。部活の仲間にも、とも君にも頼りたくない。

だから…今は好きな人はいない。そう思い込む。好きになってはいけない。



気になる人がいる…そこまでに留めたい。留めないといけない。

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