Parallel あれ?事件前
本編より少しだけ先行。時間的には高校1年Gw前位で。
朝の通勤電車で貧血を起こしたちい。さて、どうなる?
今回はver直也とver義人になります。まずは分岐前をどうぞ。
「おはよう」
「あぁ、おはよう」
朝の駅前。ようやく、義人君と直也君と一緒に行くのもようやく慣れてきた。
本当ならば30分遅い電車でもいいんだけども、工場地帯を南下する沿線はとんでもなく混んでいる。
東京方面に行く電車より本数が少ないので仕方ないのかもしれない。
「ちい、顔色が悪いな」
「ここのところ、少しだけ寝不足で」
「実行委員会でまじめになりすぎるなよ。お前はまじめだからな」
「分かっていますけど、前向きに努力します」
「直也先輩、大丈夫ですか?こいつ」
義人君が不安そうになお君に聞いている。
義人君は私が高校入る直前に起こったことを知っている数少ない人だから、心配してくるのは仕方ないことと私は諦めていた。
なお君は誰かから聞いたのかな?怖くてそこは聞けない。知らないうちになお君に知られていた事は今までの経験からしていっぱいあるから。
「学校着いたら、生徒会室で休んどけよ。俺が開けてやるから」
なお君が生徒会室のカギをチャリと音を立てて私に見せる。
「持って帰っちゃいけないんじゃないの?」
「いいの。役職者がスペア持っているのは怒られないから」
「ふぅん。そうなんだね」
「そういえば、理絵はどうなんだ?」
義人君が不安そうに私に聞いてくる。
「同じクラスなのは加瀬君と博子ちゃんで理絵は違うんだ。一応、同じクラスになることは回避できたんだけども、文化祭実行委員会で被っちゃった。でも、なお君がいるから大丈夫」
「そうか、先輩がいるなら大丈夫か」
「安心しろよ。義人」
なお君は大きな手で私の肩をポンと叩いた。義人君とのやり取りから推察するに…絶対に知ってる。
「なお君…あのね」
「そのうち、ゆっくりな」
なお君に聞き出そうとしたら、先送りと意図する解答をされてしまった。
今の私の現状を知っていたらそうかもしれない。
高校に入ってから知らなかったことが多くて吸収しきれていない。
中学であれだけのことをやってのけた理絵は、表立ってはやっていない。
けれども、入学してから、通学定期がこの数週間で2回盗難にあっている。
教科書もノートも紛失している。
意外にこの学校では紛失・盗難が多いらしい。
幸い、定期の方は割高だけども一カ月にしていたから金額的なダメージは少ない。
教科書も千世先輩達のお古を学校で使っていたから、自分の分と言う訳ではない。
「あの件は、こっちでも調べているから。学生証持ってるのも危ないよな」
「かもしれない。どうしようかな」
なお君は暫く考えているみたいだ。学生証を取られても悪用されることは少ないと思う。
顔写真がついているんだもの。その位馬鹿でも分かるはずだよね。
「生徒会室の金庫にでも入れておくか?あそこなら盗まれることはないから」
「そうだね。そうしようかな」
「なんだ?そんなにあの学校盗難が多いのか?物騒だな。私立なのに」
「正確には、こいつのものだけな」
「それって…胡散臭くないですか」
「証拠がないとどうにもならん。証拠がないんだよ」
なお君はお手上げ状態と言う風に手をあげた。
「大丈夫。私なりに気を付けているから」
「そうだな。今のままでいい。先生方も知っているからな」
「うん」
私は、なお君に向かって頷いた。
その時だ。体がゆらりと揺らめくカンジがする。電車がカーブにきてるのかな?
それにしては妙にぐらぐらするし、気分が悪い。
そうしているうちに目の前が真っ暗になってしまって私は意識を手放した。