表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
[英検準1級単語+技術士森林部門勉強シリース] Green Silence ― 森が語るもの  作者: ゆうこりん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/2

選択

技術士第一次試験に出てくるキーワードが出てきます。少々難しいかもしれませんが、お付き合いください。

キーワードについて私は朝倉書店から発行されている「森林・林業実務必携」で勉強しました。

 森林法施行令および施行規則等の改正は、現場に静かな、しかし確実な波紋を広げていた。

 2023年4月1日。林地開発の許可対象が「1ha超」から「0.5ha超」へと引き下げられたことで、小規模に見えていた開発行為も、行政の審査の俎上に載ることになった。

 制度の狙いは明確だった。分断的・累積的に進行する林地開発を把握し、災害リスクと環境影響を未然に manage(管理) すること。


 だが、制度が変われば、現場の friction(摩擦) も増える。

 「これまで届出だけで済んでいた案件が、許可制になるのか」

 「太陽光は国策だろう? なぜ止める」

 説明会や窓口では、戸惑いと反発が交錯した。

 法令は改正された。しかし、社会の understanding(理解) は自動的には更新されない。


 修了を控えたある日、研究室の同期が言った。

 「博士課程で研究、続けるんだろ?」

 ユウは即答できなかった。

 研究は好きだった。仮説を立て、データで検証し、論理を積み上げていく営みは intellectually satisfying(知的に満たされる) ものだった。

 だが同時に、論文が政策に reflect(反映) されるまでに横たわる time lag(時間的隔たり) と、理想と現実のギャップを、彼は知ってしまった。


 「……現場に行きたい」

 それは衝動ではなく、長い deliberation(熟考) の末に出た結論だった。


 日本はOECD諸国の中で3番目の森林面積を誇る有数の森林国だ。だが、所有の細分化、担い手不足、採算性の低下、災害リスクの増大といった構造的課題を抱えている。

 その解は、論文の最後に置く「今後の課題」ではなく、意思決定の upstream(上流) にこそある。結果に accountable(説明責任を負う) 立場で、森林と向き合う。

 その覚悟を持てる場所として、ユウは地方公務員の道を選んだ。森林計画学会で地域森林計画や森林経営計画を策定できる人材が少ないという話を聞いたからだ。


 安定か、理想か。そんな単純な dichotomy(二項対立) ではなかった。

 それは、「正しさを述べる側」から、「選択の責任を引き受ける側」への移動だった。


 そして今、ユウは現場に立っている。

 肩書きは「自治体職員」。

 だが、実態は mediator(調整役) だった。

 人口減少。採算が取れず放置された人工林。メガソーラーへの転用圧力。林家の世代交代問題。

 住民の災害不安。行政内部の縦割り。限られた budget(予算)。

 それらを simultaneously(同時に) 考慮しながら、判断を下す。


 ユウは、大学院で培った資料整理の癖そのままに、改正内容を一枚の図に落とし込んだ。

 施業技術、防災減災、森林の公益的機能との関係性。

 それは、共通の reference(参考) をつくるためだった。 

 議論の軸を、感情から構造へ、森林の価値を林業と多面的機能との両立へと shift(転換) させる。

 大学院生だった頃のように、「最適解」を提示するだけでは足りない。

 今、求められるのは optimal(最適) ではなく、feasible(実行可能) で、acceptable(受け入れ可能) な答えだった。

 その現実は、時に uncomfortable(居心地が悪い)。

 だが、逃げることは irresponsible(無責任) だ。


 ふと、故郷を襲った土砂災害を思い出した。3日間スコールのような大雨が続いたある雨の夜、サイレンが鳴り響いた。かつて皆伐され再植林されなかった森林をユウは思い出す。

 土砂に埋もれた集落、流木に覆われた川、流された橋。その後、数日間続いた停電。半月以上つながらなかった電話。


 大学院で、何度も読み返した山地災害の事例。

 「なぜ防げなかったのか」という問い。

 今は、その問いの内側にいる。

 参加した被災住民説明会。集落移転という選択肢。

 「それで誰が動く?」という指導教官の言葉。


 今なら、答えられる。

 ――完璧な正解じゃなくていい。

 ――判断を postpone(先送り) しないこと。

 ――不確実性を acknowledge(認め) し、それでも決めること。

 それが、研究室と現場をつなぐ missing link(欠けていた接点) だった。

 ユウは、モニターを閉じ、窓の外の暗い山影を見る。

 森は、今も黙っている。だが、絶えず動き、変化している。

 そして、自分はもう、沈黙してはいけない。

 いつか、森林技術者として、責任ある立場で判断を下す者になるのだから。

friction(摩擦) / intellectually satisfying(知的に満たされる) /deliberation(熟考) / dichotomy(二項対立) /simultaneously(同時に)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ