エンカウンター ー出会いー
ロケットが墜落し、命を落としたかと思われた豊海
しかし、僧侶であるパナケアに起こされ、目覚めた場所が現世と違う異世界であることを知る。
ーーーもし...もしもし...ーーー
俺の耳元から包み込むような優しい声が聞こえてきた。
ああそうか、俺は天国に行けたんだ...こんな癒されるような声が聞けるなんて夢のようだ
妻子がいる立場であることを一瞬忘れかけてしまうかのような癒される女性の声
聞くだけで体の痛みが引いていくかのような感覚に包まれた。
ーーーここで寝てると、魔物に食べられてしまいますよ?ーーー
そのセリフを聞いて俺は思わず飛び起きた。
どこが天国だ、天国に魔物なんているはずがない、というか魔物ってなんだ
熊とかライオンかと思って思わず反応してしまったが、よく考えれば全く聞きなれない単語がその女から聞こえてきた。
「あぁ、よかった、生きていらしたのですね。とても奇妙な恰好をして倒れていたので思わず声をかけてしまいました。」
奇妙な恰好?あんたのそのまるで魔法使いが着るようなローブよりはずっとましだろうと思いつつ自分の体を見渡した。
あ….
宇宙船で着ていた宇宙服のまま、俺は倒れていた。そういえば俺はロケットが墜落して、死んでいたはずだったんだ…
宇宙服のままという事は俺はまだ生きているってことなのか?ここはどこだ、目の前の女は誰だ
数え切れないほどの疑問が俺の頭をぐちゃぐちゃにしていった。
「あのー、大丈夫ですか?どこか具合が悪いのですか?」
女は優しい声で尋ねた、いつまでも相手を女と呼んでいてはこのご時世まずいので、まずは名前を聞いてみるとしよう
「いや、体は何ともない、ところで君は誰なんだ?」
「私はパナケア、グレゴリウス王国で僧侶をやっているものです。」
聞くセリフのすべてが意味不明だった。すべて聞き取れたのにすべての意味が分からない
こんな感覚はおそらく物心ついてからは一度もないだろう
とりあえず、この女の名前がパナケアであることが分かっただけでも大きな収穫だと思うことにする。
「よろしくパナケア、俺は豊海春樹、日本から来た宇宙飛行士だ」
「え…と、よろしくお願いいたしますトヨミさん…聞きなれない名前ですね…あとニホ…?ウ…チュウヒコウシ…何もわかりませんでした。」
パナケアはポカンとした表情で答えた。
俺と全く同じみたいだ、逆にこれだけわからないのになぜ言語だけ通じてるんだ。どうやらここは俺が知っているような文明社会じゃないみたいだ。
さらに、聞いたこともない王国と、僧侶というゲームでしか聞いたことがない職業、まるで異世界にでもやってきてしまったみたいだ。
「もうすぐ日が暮れますし、夜の森は危険です。詳しい話は講堂で聞きましょう、王国へ案内します。」
そう言ってパナケアは俺を促すように王国への道を案内してくれた。
….宇宙服重い....早く着替えたい….
操縦100キロを超える宇宙服を着ながら、豊海はパナケアについていった