とつげき!家庭訪問!その2
この空間に数秒の間、うん、まぁとんちきな回答は予想してた。まぁそれも全部事実として。
うん、そうさ。そうなんだけど。
「おーけー了解娘さんなんだなわかったぞ」
「いいやわかっちゃいない。何もわかっちゃいないね?君の頭は今グルグルのグツグツだ。私の言葉が遊戯王の裏面のように暗黒に吸い込まれている…」
「遊戯王…?」
「えっとぉ…検索したところ、およそ300年前に流行った漫画作品、及びカードゲームを指すもの…だそうですぅ…」
ルビーが辞典サイトからそのまんま引っ張ってきたように言う。300年前っていうとちょうど…戦争してた頃か?
「いいやそうじゃないよ零斗クン。それはどっちのことを言っているのかはわからないが太平洋戦争の時代でもAI戦争の時代でもない。まぁAI戦争はそのすぐ後だったがね」
「ていうかそれよりも、この人達遊戯王知らないんですか?」
それまで口をつぐんでいた、えっと… 咲樹さんが抑揚があまりない声をあげる。
「すみませんホントに知らないです…」
「まぁ知ってる人の方が今の時代少ないよねぇ…だとしても時代の流れには涙を禁じ得ないが」
「あぁ!でも今でも売ってるようですよぉ。最近細々と復旧したらしいですぅ」
「へぇ…こんど買ってみるかなぁ…」
「ほら、さっきもこうやって脱線してたんだ。時間的にも早く用件を終わらせた方がいいでしょう?」
「まったく…せっかく決闘者を増やせると思ったのに…お前も正直遊び相手が欲しかっただろ、咲樹?」
「まぁそれは嘘じゃないかもしれないけど」
遊戯王__遊びの王か。カードゲームは実際トランプぐらいしかやったことがない。その上、今や仮想上ですべてが成り立っている世の中なのもあって、実際にアナログでカードゲームをやったことはない。ちょっと興味が沸いたし今度ほんとに買ってみてもいいかもしれない。
「はい、さっさと本題に入りましょう。脱線しすぎです」
「そうだよまったく...誰だよ意味不明な比喩で場を濁したのは...あぁ私か。あはは」
悪びれることもなくそこの人形は笑顔で言う。この面会が何処に着地し、どのタイミングで決着するのかまったく検討もつかないが、とりあえず話を進めることにしよう。
「それではまず...あの摩訶不思議な現象から説明して欲しいんですが」
ちょっと考える素振りを見せた後、きららさんはつらつらと述べ始めた。
「えぇっとねぇそれは私の魔法少女神パワーでねぇ...」
「...」
「咲樹やめて!そんな睨まないで!心があずきバーのように冷たいよ!わかったわかったちゃんと説明するよぉ!」
「...スッ」
「はぁ、何で怒るとこんなに怖いのかねぇ。それじゃあ今度こそ話そうか。」
___この世界のエネルギーについて。
そう神様は一呼吸おいて、さっきまでのおちゃらけムードはどこにいったのか、紛れもない神の声で語り始めた。
「約300年前、人類は深刻なエネルギー問題に悩まされていた。環境汚染も進み、地球は破滅への道を確かに歩んでいた。そこで突如飛来した隕石によって新しいエネルギー源であるカゴライト鉱石が発見された。そうしてすべての問題が解決したことは学校の授業で習ったと思う。その後の悲劇については言うまでもないが...まぁそこは割愛しようか。このカゴライト鉱石、飛来した隕石に含まれていた物質であるのは公然の事実だが、そこには誰も知らない事実がある。それは何故ゆえにこの未知の鉱物がエネルギーとして利用できるか、だ。どこから来たのかも、どうして飛来した際の被害が皆無だったのかも、何もわからない。そんな不明瞭な鉱物がエネルギーとして劇的な能力を誇ったのは何故か。」
「ずばりカゴライト鉱石には、死にゆく人類の魂が秘められている。」
おいおい何かまたとんでもない話になってきたなと、思った。正直現実味も糞も無いが。
死んだ人の魂が込められている、そう言ったのだ。
だが、そう考えると今まで見た現象にも説明がつく...かもしれない。
「それこそ君がこの前見た会社員の魂、それは紛れもなくあのロボットに使われている物質__カゴライト鉱石に宿っている魂のものだ。だが、これを知る者はほぼいない。普通の人間にはこの世から一度離れた魂は観測することができないからね。だがしかし、君には見えた。これが不思議なんだ。君には一見、何の特徴も無い。あぁいやごめん、悪く言うつもりは無かったんだ。健康的に育っているってことだよ。大抵そんな物が見えてしまうのは、特殊な人間か、心がそっち側に引っ張られている人ぐらいのものさ。だが君には見えた。これがすっごく興味深い。そこで、一つ仮説があるわけだが…いやそんなに不思議なことではない。もしかしたらってだけだ。なんなら今日はそれを確かめるためにここへ呼び出した。ちょっと手を出してごらん?」
「お、おう」
台の上から精一杯手を伸ばしているお人形へ向けて、重ねるように手を預けた。まぁお人形の手の大きさ的に、俺が一方的に手を握っているだけだが。というか、一体何を調べるつもりなのだろう。もしかしたら自分にも隠された特殊能力的なヤツがあるのかもしれない。そう考えると気が幾分か楽だ。
その間、耳元から寝息が...もう寝てやがるぜこのAI。咲樹さんはと言うと椅子に座ってティーカップを片手にこちらを横目で見ていた。同い年ぐらいなのにとてつもなく大人びている。
しばらくすると、手が光り始め…なんてこともなく、何も起こらないまま人形は手を離した。
「うん、やっぱり合ってたね。私の仮説。まぁ0だとは思わなかったが…」
「ん、え?何かわかったんですか?」
「それを教えるにはまず、人間の要素というものについて説明しなければいけない」
「よ、要素...」
「要素、属性、まぁ特段呼称は無いから呼び方は何でもいい。一応さっきも触れてたんだが、まぁいいや。そもそも人間には__」
ゴーンゴーンと鐘がなる。音の発信源を探してみると背後の掛け時計からなっているようだ。見るからに木造で、部屋の雰囲気と綺麗にマッチしている。重低音を綺麗に四拍子鳴らす。
どうやら午後七時の導のようだ。
「おっとこんな時間か。早いねぇ...そろそろ帰った方がいいんじゃないか?電車だろ?」
「あ、いや全然大丈夫です。電車は多分まだあるんで...」
「いやぁでも夜中に子供を一人で出歩かせるのはねぇ...ねぇ?」
「...いやなんでこっち見るの?私のことは夜中でもパシるくせに」
「パシってない!パシってないよ!?お使いを頼んでるだけじゃないか!」
「とか言って、絶対にリストにウエハース入れてる...」
「っわぅぁぁぁぁぁ聞こえないーーー!!聞こえないーーー!!!」
元気だなマジでこの人たち。もう外も暗くなっているんだが。平日夕暮れのテンションだとは思えない。
普段からこれくらい賑やかなら、楽しいだろうな。なんて
「いいや、今日はいつにも増して元気だね。特に咲希がこんなに喋るのは珍しい。な?咲樹?」
「......」
「今日は一段と楽しそうだな咲樹ィ?普段はこんなお茶出さないもんなぁ?」
「それはだって、お客さんにはしっかりしたもの出すでしょう」
「ほんとにそれだけぇ...?」
「それだけ」
「ふーん」
「...」
「...あの、無言で武装しないで?しないで、あ、あ、、怖い!怖い怖い!ギャー零斗君助けてー殺されるーー」
...一言、言っていいか?
何を見せられているんだ。
「ん?何を、っていうと何だろうね。わからないや。あはは
で、それはともかく、今日はもう遅い。君は帰った方が良いだろう。あとはあれだ、対面で話すとどうしても脱線してしまう。今日話そうと思ってたことは文面で送らせてもらおう。そしてそうだな。うん」
お人形は机の上から指を、腕を、咲樹さん、そして俺へと指して言った。
「咲樹、駅まで零斗君を送って行ってあげなさい」
こうして本日は帰路へとつくことになったのだった。
同い年の女の子と共に。
なんでこうなった。




