表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

謎の男の子に女の子!?みんなで一緒にキラッキラ!

私、希良元きららは普通の女の子!

でも、ある日突然ふしぎなちからに目覚めて魔法少女になっちゃった!

悪いロボットからみんなを守るため、今日も一生懸命頑張ります!

 何が起こったかわからなかった。これは現在の俺が冷静を欠いていたからという訳ではなく、きっと脳の回転マックス絶好調だったとしても同じような状態だっただろう。現実味のない事が起きた。目の前で。それもこの発展した現代においてありえないレベルのものが。

 それだけはわかる。


 さっきまで規格外の大きさで森を鳴らしていたロボットは今やジャンク同然の金属の塊と化していた。そんな体で懸命に動こうとしている彼、または彼女だったが、まだ動けるようになるには時間がかかりそうである。

 まあ、あそこまで強力でこの世のものとは思えないほどの一撃だったのだから防御力についてロボットを責めるのは野暮だろう。

 いや、そんなことよりも。


 「少しやり過ぎたかな…えっいやぜーんぜん手加減したから被害なんて無いって!…ん?直すのが大変?いやだからほんとにやってないってば~」


 と、俺の視線の先に居る神々しい雰囲気を漂わせて登場した彼女は、その姿とは裏腹に軽い独り言を呟いていた。いや、口調的に誰かと話しているようだが、少なくとも俺の瞳にはその対象は写っていない。そんなちぐはぐな雰囲気の少女がこちらに向かってくる。

 目の前まで来た少女はへたり込んでいる俺と視線を会わせるように屈んで


 「少年、怪我はないかい?」


 と言った。さっきから少女少女と言っているが、その雰囲気は俺よりも年上風を吹かせていて、落ち着いている。容姿が昔懐かしの魔法少女のような物でなければ、間違いなく年上だと断定できる。


 「はっ、はい」


 と少ししわがれた声で答えた俺はすぐ立ち上がろうとしたが、その瞬間足に電流が走る。まだ立ち上がるには足がたりていなかったようだ。


 「あぁまだ安静にしといてね、っとまだ動きやがるか…」


 一瞬自分のことかと思ったが、見上げた視線の先に居た彼女は遠く先。今にも立ち上がろうとしているロボットの方を見ていた。

 カゴライト___最近発見された自力で破壊された細胞を再生できる鉱石できた体は、さっきまでの惨状が嘘のように、新品の如く光っていた。


 「その戦おうとする根性は褒めてやる。だけどしつこいってのは関心しないぞ」


 グギギガガガガと大きな体を音を立てて持ち上げているロボットは、その声に反応するかのように音を強める。わかりやすい煽りに流石に怒りを覚えたのか、心なしかメインカメラも少女を睨んでいるように感じる。


 「今日は目撃者(きゃく)が居るから、ちょっとばかしカッコつけさせてもらうよ!」


 その瞬間、風が吹いた。いや、風が吹くなんて易しいものではない。暴風が吹き荒れたのほうが正しいだろう。これだけの暴風、体が吹っ飛ぶのではないかと考えたが、何故か体は微動だにしない。それどころか周辺の木でさえ、今はその腕を震わせず固まっている。

 辺りに響くのは風の音と、金属が擦れる音だけだった。

 そんな風の中心に居る神様こと少女はというと、いつのまにか手にしていた箒のような形状のステッキを対象であるロボットに構えていて、その箒の先には、先程のピンク色の波動が凝縮されたようなエネルギー体がその姿を光らせていた。

 呆気にとられ身動ぎもできない俺は、我ながら阿呆みたいな顔で、それを見上げていた。耳元のスピーカーからも、ルビーの声は聞こえない。さっきの衝撃で失神したか、俺みたいに何も言えないのかのどちらかだろう。

 そんな中でもエネルギー体は、その輝きを増していく。吹き荒れる風と、光り輝く光源に、さっきまで力強く大地を踏みしめ、木をその重厚な体でなぎ倒していたロボットでさえも、威圧されて足がすくんでいるようだった。

 ひときしり輝きついに神様、いや魔法少女は反撃を開始した。


 ん?さっきまで神様神様と言っていたのになんで急に魔法少女って言い換えたって?

 そうか。ならば説明しよう。

 さっきまで慈愛たっぷりで慈しみの鏡のような笑顔をこちらに向けていた神様は、その表情を一変、星が弾けて流星の如く、太陽ですら雲隠れしてしまいそうな眩しい笑顔に切り替えたからである。

 いわゆるアイドルスマイルというやつだ。

 それだけで収まらず、その魔法少女は反撃の狼煙となる言葉の詠唱を始めた。その詠唱が神々しさ満点の威厳に満ちた言葉だったらよかったのだ。まだ神様に見える。しかし彼女が唱えたのは...


 「明日もキラッキラになれるおまじない、いっくよーー!」


 さっきまでの落ち着いた大人味がある声とは一変、年頃の可愛い女の子のような声でそういったのだった。

 いったい何が始まろうとしているのだろうか?


 「さぁそこのお友達も一緒に声出してー!」


 どうやら参加型らしい。お友達の声で強くなる的なやつだろうか。そういえば昔、遊園地のヒーローショーで同じような体験をした。あのときは好きなヒーローで、当たり前のようにスラスラと声を出せたが、今は状況が違う。

 これはショーでも何でもなく、実際に眼の前で起きているリアルだ。

 あの日あの時憧れた情景が目の前に広がっているというのに、今の俺には楽しむ余裕もない。あまりにも悲しい現実だった。

 もうヤケクソで応援しようとも思ったが、そもそも何を言えばいいのかわからない自分であった。

 そんな混乱しながらも意外と冷静に感傷に浸っていた俺だったが急に、脳内に直接スピーカーを埋められたような響く声で、さっきまで少女が放っていた神聖な声が響いた。

 『「マジカルキラキラリン!もっともーっと輝いて、流れ星になぁれ!」ですよ』


 なるほどそう唱えればこのカオスな状況が終わりを迎えるのか。ならやってやろう。

 混乱を通り越して吹っ切れて、もはや入学式のことなんて頭に残っていなかった俺は、頭が割れんばかりの声で年頃の女の子が可愛い声で唱えるべき言葉を、我ながら汚い声で必死に叫んだのだった...


 「みんなありがとーー!!じゃあ、いっくよーー!!!」


___


 そこからはあっという間。説明することもないぐらい簡単に片付いた。

 一応説明すると、風の中心にあったエネルギー体が膨張し、周囲を包みこんで、なぜだか地面も空も見えないピンク色の宇宙空間のような場所に放り出されたかと思えば、突如として空から飛来した(重力と呼ばれる概念があるかすらわからない空間だったので、明確に空だったのかはわからない。もしかしたら地面かもしれない)巨大なハートにロボットが包みこまれ、その見た目からは想像もできない「きらきら〜」という声を出してその行動を停止し、辺りも元の殺風景な森に戻ったのだった。

 ...もう考えるのはよそう。この世には人類が経験していない摩訶不思議な事柄がまだまだあるのだろう。きっと俺以外の誰かが解明してくれるに違いない。だから俺は考えない。理解もしない。いやできない。


 「今度こそ終わったね。少年、もう立てるんじゃない?」


 そうして地上に降り立った神様(いや魔法少女かな、ちょっと判断しかねるけど)彼女は振り返ってそう言った。


 鳴りを潜めているロボットは、もう本当に動かないらしい。とりあえず命だけは助かったのかな。一安心して茶でもすすりたい気持ちだったが、そんな状況でもない。心の余裕もない。


 「えっと、あなたはいったい...」


 「そんなことを聞く前に私に何か言うことがあるんじゃないかな?」


 「あ、ありがとうございます...?」


 「よーしよしよく言えたじゃないか!」


 それは感謝を述べたことに対しての言葉なのか、さっきの呪文を唱えられたことへの言葉なのか、俺にはわからない。

 もう既に理解できる脳なんて俺には残ってない。今なら何を言われても「はい」と答えてしまいそうだ。


 「立てる?」


 その少女はこちらに手を差し伸べる。見た目相応の小さい手だった。しかし、今はその手が異様に大きく感じた。


 「は、はい」


 その手を取り、俺は立ち上がった。両足で地面を踏みしめる瞬間めまいがし、後ろに倒れそうになるが何とか踏みとどまる。てか手めっちゃぷにぷになんだけど。もう少し触っていたい衝動に駆られる。


 「あんた、名前は?」


 笑顔で聞いてくる。その表情は先程の魔法少女の鏡のような元気満点笑顔ではなく、神様顔負けのすべての愛と平和を詰め込んで煮て固めたような涼しい笑顔だった。


 「えっと、傑造零斗(けつぞうれいと)です...」


 「ほう、傑物を零から造り出す新星か。いい名前だ」


 よく聞いただけで漢字わかったな...と脳にかすめた時、耳元で唸る声が聞こえる。ルビーが気づいたようだ。「うぅ」とか「ふぅ」とか、眠りから覚めるのを拒み、布団から出られない小学生みたいな声を出している。

 ...もしかして本当に寝てたんじゃないだろうな。


 「そちらのお嬢さんもお目覚めのようだし、そろそろ退散するかな、っとわかってるわかってる回収するって...え、何だって?ロボットだけじゃなくて男ん子も?...えぇちょっとだるいなぁ」


 後ろを振り向き先程まで誰と話していたのかわからない少女は、こちらへ手招きする。もう何も考えないと決めた俺はされるがままに少女についていく。その先には先程浄化(退治?)されたロボットが無造作に転がっていた。

 一体何をするんだろう、とロボットに近づいていく少女をぼうっと見ていたらまた手招き。またもや引き付けられるようにそちらへ近づく。

 かがんでいた少女は手を伏せそう言った。


 「ロボに触ってみな?」


 見よう見まねでその少女のように冷たく傷ついた金属の装甲に手を付けてみる。

 ...何も起きないなぁと思い始めた時、

  

 「うわぁっ!」


・・・


 目の前に広がっていたのは、一昔前の街並みだった。ビルが立ち並び、たくさんの乗用車が道路をかけている。歴史の授業で見たのと同じだ。確か数百年前がこんな街並みだったと聞いている。

 そんな俺の視線の先に居たのは、どっからどう見ても普通に出勤してきているサラリーマンで...!?


 車がその男性に突っ込むところで、目の前はまっくらになったのだった...


・・・


 はっと意識を取り戻すとさっきの森、目の前には大きなロボットが横たわっている。そのメインカメラは動かなく、二度と動く気配もなかった。


 「なるほど、君にも見えるか」


 少女はそういうと、静かに話し始めた。


 「今君が目にしたのはこのロボット、いやこのロボットに宿る魂の記憶だよ。でもまさか君にも見えるとはね」


 とロボットの体を撫でるようにして続ける。


 「こいつの場合は冴えない会社員だったようだね。でも娘の誕生日の日に轢かれて死ぬなんて運の無い男だ。そりゃ悔いて彷徨うだろうね。しかも死んだ後でさえ捕まっちまうなんて本当に運が無いねぇ。せめて大切な家族のもとに帰りなさい___デリート」


 ロボットが光に包まれる。何よりもまばゆく、誰よりも輝かしく。

 その光が本当の姿を取り戻していく。人間よりも人間らしく。

 光は俺たちの周りを跳ねるように飛び回った後、空へと還っていった。


 心なしかその光が暖かく感じたのは俺の錯覚だろうか。


___


 「よいしょっと、これで終わりだね」


 残った亡骸をばらす作業が終わった少女は、一緒に作業していた俺に言う。そこにはパーツごとに分けられ、コンパクトになった機械の山があった。


 「いや~助かったよホント。いっつも一人で大変だったんだよね」


 「助けになったなら何よりですけど...」


 なんもわからないうちに手伝ってしまった。まぁばらす作業は楽しかったので、悪くはなかったが。


 何か忘れていることがある気がするのは気のせいだろう。


 「じゃあ君は帰っていいよ。あとは私が運ぶから...」


 「はぁ...」


 「ふわぁ...は!」


 ルビーも二度寝から目覚めたし、本当に言う通り帰ろうかな。いつの間にか夕日が覗いてるし。

 今日はもう疲れた。とりあえずふわっふわの布団に飛び込みたい。枕もふわっふわだと最高だ。ホテルにあるビーズの奴じゃなくて羽毛のやつ。まじで眠くなってきた。

 睡眠の大海原に駆り出す夢の想像して夢見心地になってきた頃、忘れていたことを思い出した。


 「そうだ、あなたは一体何者なんですか?」


 あまりにも現実を逸脱しすぎた行動の一つ一つ。さっきまで眠っていた俺の脳みそが数時間ぶりに覚醒しているのを感じる。

 少し思考するような素振りを見せて、その少女は口を開く。


 「......君は私が何に見えた?」


 まさかの質問に少しうろたえるが、ここは一つ考えてみよう。いろいろな一面がこの短時間だけでもあった彼女だったが、最初に見えたものといえば...


 「神様...ですかね......?」


 少女は見るからに驚いている。

 顔を即座に下げる俺。何言ってんだ俺?自分でもバカな返答をしているとは思った。しかし、この数時間の出来事を想起しているうちに自然と放ってしまった。さすがに呆れられているだろうか?躊躇いながらも顔色をうかがってみると...


 笑顔だった。


 さっきからしていた神様のような笑みではなく、もっと純粋さに包まれた、こころからの笑顔だった。


 「そう、そうだ。私は神様だよ」


 威厳に満ちた声でそう言った彼女はまさしく神そのもので、自分の予想が合っていたという考えを後押しするには十分すぎる言b



 「この人からロボットと同じ気配を感じますぅ...」


 凍り付いた。俺も、神様も。


 雰囲気を打ちこわし、空気を切り裂く一言が俺の耳に、いやきっと彼女の耳にも響いた。

 とことん空気を読まない女、それがルビーであった。


 それを聞いた彼女___自称神様のロボットさんはさっきまでの威厳に満ちた雰囲気はどこに行ったのか、そこらへんの女子学生のように快活に笑った。


 「...いやぁばれちゃったかぁ!はっはっごめんごめん。神様って言われて嬉しくなっちゃってたぁ!」


 いやほんとにもうなんもわからん。さっきのぷにぷにの手は何だったんだ。やっぱもう帰ろ。

 そう思い踵を返して歩みを進めようとした俺を彼女は急いで引き留める。


 「ちょっとせめて自己紹介だけさせて~!」


 振り返った俺が自分を見ていることを確認した彼女は、こほんと咳払いを一つ。元気に言葉を放つ。


 「私の名前は希良元きらら!神様を夢見る一般魔法少女よ!」


___


 今日のことは、一生忘れることはないだろう。森から出て、街に出た俺は考えていた。


 「あのぉ...」


 あの少女、希良元きららとは何者なのだろうか。この世のものだとは思えない事象の数々。

 神様。

 魔法使い。

 わからないことだらけだ。


 「すみませぇん...」


 まぁ、理解するのは後回しだ。とりあえず帰ろう。俺は疲れ果てた体を癒すために布団に包まれるのだ。


 「あのぉ!すみませぇん!!」


 「うわぁびっくしたぁぁ!どうした急に!俺はありふれた部活終わりの学生のようにいま帰路を...」


 学生のように!


 学生のように?


 学生。


 学校。


 

 入学式




 「入学式忘れてたぁぁぁぁぁ!!!」


 「だから言ってたのにぃぃぃぃ!!!」


 今にもぶっ壊れそうで、スリープモードに入ろうとしていた足を再起動、高速回転し学校に向かう俺だった。

あの男の子大丈夫かなぁ。見たところ学生だから学校遅れちゃったかも?

まぁしょうがないよね。無事に帰れるといいなぁ。

それじゃあ次回も~マジカルキラキラリン!明日もいい日になぁれ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ