人数制限
お尻にあざのある意地っ張りな水晶工どの
これを読んでいるということは、
ようやく重い腰を上げたということね。
その好奇心と勇気に、敬意を表します。
さて。
黄金竜は二体の小型飛竜を従えています。
尻あざのあなたに、小勇者と、あと一人。
腕っぷしの弱いあなた達に、
私の懐刀を貸してあげましょう。
小柄な子だから、飛竜も運びやすいわ。
育ちの良い風魔導師より
書状から顔を上げて、ロメが口の端を歪めた。
「全てが終わったら、私は必ずウィルロ様の元に戻りますからね。」
「そう言う強い意思を持ってる奴が居てくれた方が、きっと上手く行く。頼りにしてるよ、ロメ!」
イルアンから離れたリアネスが、そのままの流れでロメに抱きついていく。ほとんど同じ体格の少女を、ロメはがしりと受け止めてみせ、その肩越しに言った。
「出発は?」
「どのみち飛竜に大荷物は持たせられないから、早い方が良いだろう。今日、宝珠を割るよ。黄金竜が来るのは、五日後だ。」
はっと顔を上げて、リアネスがイルアンを振り返った。
「セテは?」
「今から遣いを出しても、出発前に戻っては来られない。どのみち、人数制限で同行できないし、俺個人の感傷で出発を遅らせるわけに行かないよ。」
「…意気地なし。本当は、一緒に来て欲しいくせに。」
むすっと頬を膨らませた少女に、イルアンはやれやれと溜息をついた。自分だってセテについて来て欲しいくせに、思うようにならない不満を全部こちらに押し付けないで欲しい。
「あの黄金竜なら、私とリアネスの二人くらいは運べそうなものですが。」
ロメが、軽々とリアネスを抱き上げて口を窄めた。たしかにこの二人なら、合わせて巨漢の一人分くらいの重さしか無さそうだ。
と、部屋の入り口でたむろしていた両親を掻き分けて、長い金髪の少女が顔を出した。
「私の役目は、リアネスを、守ること。オババ様も、続けろと。」
珍しく声を上ずらせたネリネに、イルアンはゆっくりと目を閉じた。自分と、リアネス、ロメ、ネリネ。これで、四人だ。高まった心臓の音が、少しずつ落ち着いて行く。
セテ。
やっぱり君とは、しばらくお別れになりそうだよ。
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鉱山都市の真ん中に飛竜を呼ぶわけには行かない。だからイルアンは、手近な山の頂で宝珠を割ることにした。何が起こるかわからないからと、ロメとリアネス、ネリネも同行する。
「じゃ、割るよ。」
イルアンが地面に宝珠を叩きつけると、周囲の空気が震え、膨大な竜脈が流れ出した。どこからともなく上がった飛竜の鳴き声に、黄金竜召喚の成功が確信される。
「小型の飛竜は、こちらに残っていたんだ。彼らにとっても、海を渡るのは命懸けなんだろうね。」
間も無く現れた二頭の飛竜は、恭順の意思を示すようにイルアン達の前で身を縮めた。
『彼、イルアンを乗せて、第十一大陸まで飛べる?』
『我らだけでは…上位種の助けが要る。』
リアネスは頷いて、東の空を眺めた。
『黄金竜が来たら、鉱山都市の上空を飛んで教えてちょうだい。いったん私たちは、町に戻るわ。』
『御意』
小型の飛竜は、律儀に首を揃えて東に向けた。毎日巡回に訪れていたシェマーニ隊が言うには、それから黄金竜がくるまで、彼らはそのままじっと動かなかったのだと言う。




