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十三の陸と一つの海 ~竜脈争奪戦を終わらせた英雄たちの旅について~  作者: 十方歩
第二章 第十二大陸編 下・地下迷宮の死闘
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人数制限

 お尻にあざのある意地っ張りな水晶工どの


  これを読んでいるということは、

  ようやく重い腰を上げたということね。

  その好奇心と勇気に、敬意を表します。

  さて。

  黄金竜は二体の小型飛竜を従えています。

  尻あざのあなたに、小勇者と、あと一人。

  腕っぷしの弱いあなた達に、

  私の懐刀を貸してあげましょう。

  小柄な子だから、飛竜も運びやすいわ。


 育ちの良い風魔導師より


 書状から顔を上げて、ロメが口の端を歪めた。


「全てが終わったら、私は必ずウィルロ様の元に戻りますからね。」

「そう言う強い意思を持ってる奴が居てくれた方が、きっと上手く行く。頼りにしてるよ、ロメ!」


 イルアンから離れたリアネスが、そのままの流れでロメに抱きついていく。ほとんど同じ体格の少女を、ロメはがしりと受け止めてみせ、その肩越しに言った。


「出発は?」

「どのみち飛竜に大荷物は持たせられないから、早い方が良いだろう。今日、宝珠を割るよ。黄金竜が来るのは、五日後だ。」


 はっと顔を上げて、リアネスがイルアンを振り返った。


「セテは?」

「今から遣いを出しても、出発前に戻っては来られない。どのみち、人数制限で同行できないし、俺個人の感傷で出発を遅らせるわけに行かないよ。」

「…意気地なし。本当は、一緒に来て欲しいくせに。」


 むすっと頬を膨らませた少女に、イルアンはやれやれと溜息をついた。自分だってセテについて来て欲しいくせに、思うようにならない不満を全部こちらに押し付けないで欲しい。


「あの黄金竜なら、私とリアネスの二人くらいは運べそうなものですが。」


 ロメが、軽々とリアネスを抱き上げて口を窄めた。たしかにこの二人なら、合わせて巨漢の一人分くらいの重さしか無さそうだ。

 と、部屋の入り口でたむろしていた両親を掻き分けて、長い金髪の少女が顔を出した。


「私の役目は、リアネスを、守ること。オババ様も、続けろと。」


 珍しく声を上ずらせたネリネに、イルアンはゆっくりと目を閉じた。自分と、リアネス、ロメ、ネリネ。これで、四人だ。高まった心臓の音が、少しずつ落ち着いて行く。


 セテ。

 やっぱり君とは、しばらくお別れになりそうだよ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 鉱山都市の真ん中に飛竜を呼ぶわけには行かない。だからイルアンは、手近な山の頂で宝珠を割ることにした。何が起こるかわからないからと、ロメとリアネス、ネリネも同行する。


「じゃ、割るよ。」


 イルアンが地面に宝珠を叩きつけると、周囲の空気が震え、膨大な竜脈が流れ出した。どこからともなく上がった飛竜の鳴き声に、黄金竜召喚の成功が確信される。


「小型の飛竜は、こちらに残っていたんだ。彼らにとっても、海を渡るのは命懸けなんだろうね。」


 間も無く現れた二頭の飛竜は、恭順の意思を示すようにイルアン達の前で身を縮めた。


『彼、イルアンを乗せて、第十一大陸まで飛べる?』

『我らだけでは…上位種の助けが要る。』


 リアネスは頷いて、東の空を眺めた。


『黄金竜が来たら、鉱山都市の上空を飛んで教えてちょうだい。いったん私たちは、町に戻るわ。』

『御意』


 小型の飛竜は、律儀に首を揃えて東に向けた。毎日巡回に訪れていたシェマーニ隊が言うには、それから黄金竜がくるまで、彼らはそのままじっと動かなかったのだと言う。

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