*不思議なお墓 〜H氏の場合〜*
私が以前投稿したエッセイ「不思議なお墓」(お墓参りに行ったら、江戸・明治時代に亡くなった人たちの真新しいお墓があった!、という話)を読まれたHさんが寄せてくださった体験談を、エッセイに脚色しました。
その位牌を見つけたのは、父が亡くなって、新しい位牌を仏壇に置くために仏壇の整理をしていた時だった。
見覚えのない二つの古い位牌。戒名からすると、女性と子供のようだ。
うちの先祖に違いないだろうと、可能な限り戸籍を遡って調べることにした。
両親、両親の両親、さらにその両親。遡れるだけ遡った結果、明治初期に亡くなった曽祖父の前妻と死産の男児の位牌だと判明した。
妻と子を亡くした曽祖父はその町から引っ越し、その後曽祖母と再婚して祖母が生まれたようだ。
しかし、位牌はあっても前妻たちは我が家のお墓に入っていない。二人のお墓はどこにあり、誰が世話をしているのだろう。
この位牌は、血の繋がらない私が持っていていいのだろうか。
数日後、私は位牌持参で曽祖父と前妻が住んでいた町へ行った。位牌の二人には、150年ぶりの里帰りだ。
しらみつぶしにお寺を訪問して、過去帳に前妻たちの名前がないか調べてもらう。
運よく三軒目で二人を発見。だが、その寺にお墓は無く、住職さんに亡くなった時の住所を教えてもらって今度は墓探しだ。
お墓は見つからなかったが、前妻の実家がまだあった。
尋ねてみると、当然今の家の人たちは前妻たちの事を知らず、その家のお墓に前妻たちの名は入っていないと教えてくれた。
なら、もしどこかに二人のお墓があったとしても、もう世話をしている人はいないだろう。
私は、当時前妻たちが住んでいたであろう場所への行き方を教えてもらい、そこの土を少しいただいて帰宅した。
うちのお墓に、二人の名を刻んでもらう。
遺骨の代わりに、住んでいた所の土を納める。
住職の読経がお墓に満ちる。
長い長い間仏壇から私たちを見守っていた二人は、今、曽祖父と共に永遠の眠りについた。
Hさんの体験に私がコメントするのも変なので、今回は感想に返信いたしません。
でも、Hさんもここを見てますので、感じた事があったらぜひ書き残してください。