息子、勝手な方向に動き出す
帝国歴244年11月
父を見送って直ぐに私は動き出す。
自室に隠しておいた各種計画書を持ち出し、セバスに確認してもらう。
この一年間書き溜めた、膨大な書類の束である。
「坊ちゃん・・・これは一体・・・」
「これらは当面、領地経営に必要となる各種計画や方針を示したものになる。分量は多くなったが確認の上、意見を伺いたい。」
「分かりました。しかしこれだけの量、一週間あってもなかなか・・・」
「もちろん可及的速やかに、で構わない。最初が肝心なので熟読をお願いする。」
「これが短中期戦略、そして領内開発計画、直轄都市整備計画、領内詳細調査計画、森林計画、領内商工業実態調査、領内産物物流実態調査、領地測量計画、行政組織整備計画、教育福祉・公衆衛生基本計画、人材確保育成計画、兵器新技術開発計画、他にも・・・失礼ですが、とても坊ちゃんのお歳で作れる物ではないかと思いますが、これらは一体どのように・・・」
そう言われても説明が難しい。
何を言っても許される夢の世界なら「私の辞書に不可能の文字は無い」とでもしておくが、どうやらそんな空気ではない。
「す、スーパーマジカルブレインの力かな?」
「ス、スーパーですか。しかし、坊ちゃまは利発な方だと常々思っておりましたが、まさかこれほどとは・・・分かりました。このセバス、坊ちゃんとリンツ家のため、どこまでもお供することを誓います。」
「ありがとうセバス。いかに計画を立てようとも、協力者なしでは何もできない。そなたが味方で居てくれるだけで、もう成功した気分になる。」
「いえ、先日の旦那様とのやり取りといい、大変ご立派なお覚悟でございます。」
「しかし、あの父があんなにあっさり納得するとは思わなかったよ。」
「旦那様は大変厳しい方でいらっしゃいますが、反面、あのような思い切りの良い受け答えには意外に寛容な一面がございます。恐らくは、それが功を奏したのではないかと。」
つまり、父にはけんか腰で良いと・・・
「セバスの言葉も大きかったと思う。よく、あの場で父に反論してくれた。あれが無ければ、私は発言する機会すら無かったかも知れない。」
「まあ、生まれ育った地の行く末に関わることですので。私ももう良い歳ですが、最後の御奉公と行きましょう。俄然、やる気も出てきましたし。」
「さて、ここからは邪魔者抜きで頑張りましょう。」
もう勝手な事をする気マンマンの二人である。