初めての二人きり
そして、皇太子クリスハルト殿下との面会日。
いつも午後3時からの1時間、帝城執務本館2階の大広間にて面談形式で実施される。いつもは・・・
「わざわざ大儀である、アナスタシア。」
「殿下におかれましては、本日もご機嫌麗しゅう。このアナスタシアも大変嬉しゅうございます。」
「フン!当たり前だ。今日は天気も良い。少し外を歩かないか。」
「はい、畏まりました。」
「では、我々もお伴します。」
「いや、女官や衛兵はいい、ここで待機しろ。二人で話しをしたい。それとも何か、お前たちは私の邪魔しなければ気が済まないのか?父に命じられているのなら心配ない。皇太子である私直々の命だ。私が責任を持つ。これでどうだ、それとも私に逆らうか?」
「い、いえ、そのような意味ではございません。失礼いたしました。」
「それで良い。では、アナスタシア、行くぞ。」
「はい。」
「おい、そこの従者、お前もここで待機だ。」
「恐れながら殿下、これが私のお役目でございます。お嬢様から離れる訳にはまいりません。」
「殿下、この者は私の大切な従者です。同行は許されないでしょうか。」
「分かった。しょうがねえな。付いて来い!」
こうしてクリスハルト、アナスタシア、従者のアルトゥール、ユリアン、アルマの5名は本館裏口から中庭に出て、西に位置する庭園に向かう。
この庭園の中央には皇族しか立ち入りできない区画が存在し、周囲は高い柵で囲われている。
出入口は南北の2カ所あるが、通常は北側入口は施錠され、鍵は皇族しか持っていない。
そして南側入口には衛兵が警護している。
「では、中を案内しよう。入ったことはあるか?」
「いいえ、初めてでございます。」
「そうか、ならいい。じゃあ、お前たちは外で待っていろ。それと衛兵!」
「はっ!」
「貴様は庭園入口まで下がれ、これは皇太子としての命令だ!」
「はっ!了解いたしました。」
こうして二人は皇族専用スペースに入って行く。中は生け垣で迷路が作られており、中央に四阿が建っている。
そして、今は二人以外、誰も居ない。
そして、四阿が見えた途端、クリスハルトは一歩下がり、アナスタシアの背後に回る。
「これでも喰らえ!」




