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リンツ伝  作者: レベル低下中
第三章 家族編
724/1781

サントス城

 その後、リチャード・ホーク将軍率いる反乱軍は、強引に門を押し破り、城内に突入したが、そこに既に大公ら首脳の姿は無く、近衛騎士団の多くも城から逃亡した後であった。


「探せ!城内をくまなく探せ!大公を見つけ出し次第、捕らえよ!」

「そんな事言ったって、これって叛乱だよねえ。」

「上官殿、将軍は何と。」

「大公殿下を見つけ次第、捕縛しろとよ!」

「俺たち死罪じゃね?」


「全く、夕飯食い損ねてここまで連れてこられて、謀反人じゃあ、やってらんねえぜ!」

「おいおい、お偉いさんに聞こえちまうだろ!」

「どうせ言葉なんか分かりゃしないよ。アイツら俺たちを馬鹿にしてんだからな。」


 まあ、軍事力をあまり重視して来なかった小国の、しかも主力でない兵とは、こんなものかも知れない。

 しかも、総大将が隣国の者なのである。

 捜索は遅々として進まず、今は敵の近衛騎士団ともなあなあで戦闘にすらならない。


 それでも、騎兵が商業ギルド国に向けて出発している。

 また、遠く西のエル=ラーン戦線に陣取るエドワード殿下にも早馬が出され、追って、この方面からも大公捜索の隊が出されることになっている。


 商業ギルド国は中立であり、さすがに他国の軍は入国や通過はできないが、捜査員を派遣し、自国民の捜索をすることは可能なのである。


「それで、近衛騎士団長ってどこにいんの?」

「さあ、真っ先に逃げたって聞いたぞ。」

「じゃあ、大公は一緒なのかなあ。」

「あれでも一応、馬術は一流だ、真っ先に逃げるのに、足手まといなんぞ連れて行くとは思えねえけどなあ。」

「そりゃそうかあ。けどよ、見つからなかったら、見つかるまでずっとこんなことするの?」


「適当にやって、飯だけ食ってりゃあいいんだよ。」

「さすが、謀略のディエゴと呼ばれただけのことはあるねえ。」

「こらあ!そこ!テキパキ動け!」

「誰か訳せよ!」

「お前、ウェルネス語知ってるクセに!」

「はて、何のことやら?」


「ああああ!イライラする!国王も何でこんな国なんか欲しがるんだ!怠け者揃い、無能揃い、貧乏人揃いだと言うのに!」

「どうやら俺たちを上手く使えずにイライラしてるみたいだな。」

「やっぱり分かるんじゃないか!」

「お前が無能って言われてたんだよ!」

「向こう行ってサボってようぜ。」

「上官殿、了解しました!」


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