サントス城
その後、リチャード・ホーク将軍率いる反乱軍は、強引に門を押し破り、城内に突入したが、そこに既に大公ら首脳の姿は無く、近衛騎士団の多くも城から逃亡した後であった。
「探せ!城内をくまなく探せ!大公を見つけ出し次第、捕らえよ!」
「そんな事言ったって、これって叛乱だよねえ。」
「上官殿、将軍は何と。」
「大公殿下を見つけ次第、捕縛しろとよ!」
「俺たち死罪じゃね?」
「全く、夕飯食い損ねてここまで連れてこられて、謀反人じゃあ、やってらんねえぜ!」
「おいおい、お偉いさんに聞こえちまうだろ!」
「どうせ言葉なんか分かりゃしないよ。アイツら俺たちを馬鹿にしてんだからな。」
まあ、軍事力をあまり重視して来なかった小国の、しかも主力でない兵とは、こんなものかも知れない。
しかも、総大将が隣国の者なのである。
捜索は遅々として進まず、今は敵の近衛騎士団ともなあなあで戦闘にすらならない。
それでも、騎兵が商業ギルド国に向けて出発している。
また、遠く西のエル=ラーン戦線に陣取るエドワード殿下にも早馬が出され、追って、この方面からも大公捜索の隊が出されることになっている。
商業ギルド国は中立であり、さすがに他国の軍は入国や通過はできないが、捜査員を派遣し、自国民の捜索をすることは可能なのである。
「それで、近衛騎士団長ってどこにいんの?」
「さあ、真っ先に逃げたって聞いたぞ。」
「じゃあ、大公は一緒なのかなあ。」
「あれでも一応、馬術は一流だ、真っ先に逃げるのに、足手まといなんぞ連れて行くとは思えねえけどなあ。」
「そりゃそうかあ。けどよ、見つからなかったら、見つかるまでずっとこんなことするの?」
「適当にやって、飯だけ食ってりゃあいいんだよ。」
「さすが、謀略のディエゴと呼ばれただけのことはあるねえ。」
「こらあ!そこ!テキパキ動け!」
「誰か訳せよ!」
「お前、ウェルネス語知ってるクセに!」
「はて、何のことやら?」
「ああああ!イライラする!国王も何でこんな国なんか欲しがるんだ!怠け者揃い、無能揃い、貧乏人揃いだと言うのに!」
「どうやら俺たちを上手く使えずにイライラしてるみたいだな。」
「やっぱり分かるんじゃないか!」
「お前が無能って言われてたんだよ!」
「向こう行ってサボってようぜ。」
「上官殿、了解しました!」




