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リンツ伝  作者: レベル低下中
第三章 家族編
713/1781

決算大詰め

「いやあノルト君、忙しい所をお邪魔してごめんね。」

「いえ、これが僕の仕事だからね。」


「しかし、膨大なものなのは間違いないよ。それに加えてロスリー商会とエネル商会の外部監査もやってるんでしょ。両方とも今や国内有数の大企業なんだし、もうこれ、一人でやる分量じゃないよね。」

「確かに、この事務所単体で見たら大黒字だね。でも、忙しいのはこの時期だけだから、集中してやらないとね。この仕事は歴史が浅いから、僕の実績も重要な信用に繋がるんだ。」


「ホント、几帳面なノルト君の天職だね。」

「そう言ってもらえると嬉しいよ。数ある貴族家の中でも有数の規模で、かつ、先進的な会計手法を取り入れている辺境伯家から認めてもらってるんだから。」


「残念ながら、私じゃないよ。こういう細かい作業は苦手なんだ。」

「意外だね。こういうことこそ独壇場かと思ってた。」

「いやあ、元はいい加減な人間だよ。私は。」


「お茶が入りました。」

「ああ、エーファさん。お邪魔しております。あまり無理をなさらないで下さい。」

「もう大丈夫です。最近は安定してきましたよ。」

「いつ頃出産予定なの?」

「3月の後半くらいじゃないかと、先生はおっしゃっておりました。」


「ヒルデさんも2月って言ってたなあ。」

「はい、一緒に学校に通わせるのが、今の夢ですね。」

「そりゃあいいですね。ここの生活も楽しんでおられるご様子で、安心しました。」


「ここはいいよ。帝都と違って人々も毛羽立っていないし、とにかく暢気で大らかだよね。」

「食べ物は美味しいし、冬も寒くありません。すぐ近くに遊園地もありますし、何より落ち着いた綺麗な町です。」

「ここに住むことができて本当に良かったと思っているよ。僕もエーファも言ってたんだ。エル君の人柄そのものだって。」

「そう言ってもらえると、嬉しいね。」

「お世辞じゃ無いよ。きっとアル君とキース君も同じ気持ちだと思うよ。」

「ええ、私もずっと住みたいと思っています。」


「ありがとう。私もまたみんなと一緒に暮らせるなんて思っていなかったから、嬉しいんだよ。それにノルト君のお陰でうちも随分節約できるようになったし。まあ、去年、不正が1件あったのは残念だったけど・・・」

「ああ、あれは巧妙だったね。」

「まさかね。長年経理をやってたんで信用してたんだけど。」

「でも、あの手法は参考になったよね。」

「まあ、あれもノルト君以外の人では見つけられなかったね。本当にありがとう。」


「まあまあ、お茶が冷めてしまいますよ。」

「では、いただくとします。ノルト君も休憩だよ。」

「じゃあ、そうしようかな。エーファも座って休みなさい。」


 何か、何故だか・・・負けてる気がするのは何故だろう・・・


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