英才教育
みんなと話し合った結果、取りあえず託児所入所ではなく、4歳トリオを毎日孤児院に通わせようと決まった、ある日の休日。
「トマス!ここはスペルが違います!」
「うぇ、ごめんなさい、お母様。」
「もう、何度言ったら分かるのです。一度でキチンと覚えなさい!」
そう、アルマさんは教育ママだった。お受験するような学校なんて無いのに・・・
「アルマ、そろそろみんなとお遊びの時間で良いのではないですか?」
「いいえ、今日は文字の書き方を覚えさせます。こういうことは早いに越したことはございませんから。」
「でも、トマスも随分疲れているように見えます。」
「奥方様!人間我慢が大切です。嫌なことでも耐えられる精神力を養うこともまた、勉学の大事な意味です。だいたい、奥方様がそのことを一番知っているはずですのに。」
「ええ、そ、そうですね。」
「旦那様も率直に言って甘すぎます。フラン様は旦那様と奥方様のお子ですから、大変な才を持っています。これを磨くは親の責務でございますよ!」
「うん、でもまあ、リンツ家は親3人とも、こんな感じだからなあ。」
夢の中でまで教師なんかしたくない。
「そうですね、私も皇妃教育はいささか行き過ぎているとは思っております。」
「私はご主人様に読み書きと算術を教えていただきました。とても優しく、分かりやすかったです。」
「まあ、旦那様に、羨ましいです・・・」
「そこのお3方、アツアツシーンを演じている暇がおありでしたら、教育です、勉学です!」
「ねえ、誰か押しちゃあいけないとこ、押した?」
「いえ、全く心当たりはございません。」
「いつもそういうのは、ご主人様が押すものかと・・・」
「じゃあ、読み書きくらいは、やる?」
「でも、学校に行きますし・・・」
「だよねえ。そこでプロが教えるんだから・・・」
「私は11歳の時でした。」
「まあ、マイヤー家は英才教育を施すってことで・・・」
「旦那様、ああ、何と嘆かわしいことでしょう!私がフラン様のお勉強も一緒に見ます!」
「あれ?ルーデルさんは・・・」
「向こうの部屋でブルーメリちゃんたちの面倒を見ています。」
「上手く逃げやがって・・・」
「旦那様!」
「はいっ!」
ヴィレはともかく、フラン、トマス、頑張れ!




