お断り申し上げた
「こんな田舎の司教になるくらいだ。そなたらに文句を言っても仕方ないのだろうが、私は決して意地悪を言っているのでは無いし、怒りにまかせて八つ当たりしているのではない。分かるな。」
「はい。」
「まず私はここの領主であり、私の立ち振る舞いはこの地に大きな影響を与える。その私が破門されたというだけでも領民は動揺しているのに、いつの間にか、訳も分からず元に戻っていたら彼らはどう考える。賄賂を贈ったか、何らの取引をしたか、そんな領主を信用できるか、そういったことだ。」
「しかし、それは帝都中央教会の名において保証しております。」
「総本山が認めていない者の決定に、それだけの価値があるのか?取り消したのは総本山であろう。異端審問官も教皇国から派遣されて来たものだったぞ。」
「そ、それは・・・」
「教会のやり方は全てにおいて雑だ。私は論理的に整合性を持ち、プロセスに透明性が確保された回答で無ければ、受け取るつもりはない。何故だか分かるか?何でも上から神の意志だと言っておけば事足りるそなたらと違って、こちらは周囲を納得させる説明が必要だからだ。」
「いえ、決してそのような思い上がった考えではございません。」
「そもそも、私を破門する際に、聖女の称号も剥奪しておけば、このような捻れた状態にならずに済んだのだ。神は間違わぬが、教会は間違いだらけだ。」
「い、いくらエルハバード様でも、教会の冒涜は許されませんぞ。」
「ならば、教会の判断に合理性と整合性はあったか?魔女裁判に正義はあったか?」
「あります!」
「聖女の夫を破門することにか?罪なき者を魔女認定したことか?」
「そ、それは。しかし、魔女裁判は正義です。」
「そうか?前任者は非を認めたぞ?炭鉱で働いているから、今から証言を聞きに行くか?」
「そ、それは・・・」
「第一、教典に魔女裁判など、どこにも書かれていないだろう。」
「しかし、そうしないと魔女を判別できません。」
「裁判しても判別できなかったではないか。」
「それは、まだ容疑は晴れておりません。単に証明できていないだけです。」
「ならば、そなたはこれから再びあの者を捕まえるのか?」
「それは・・・必要があれば、そうしなければなりません。」
「もし、彼女に手を出したら、貴殿も殺人罪と不敬罪で逮捕するぞ。何も知らずに軽い気持ちで裁判を行った前任者と、この警告を無視して裁判を強行した後任の不敬罪が、同じ罪の重さだとは思わぬことだ。」
「も、申し訳ございません。失言でございました。」
「話は終わりだ。面会したいなら、もっとまともな話を持ってこい!」




