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リンツ伝  作者: レベル低下中
第三章 家族編
652/1781

物知りアーニャさん

「ということで、陛下に政策提案する仕組みを作るそうだ。」

「そうですか。確かに陛下なら締め付けを強めるでしょうね。」


「でも、私はアーニャさんの嫁ぎ先に、乱暴なことはしないと思うんだけどなあ。」

「それでも政治です、絶対はございません。」


「まあ、一応備えてはおくか。取りあえず、インフラ整備と食糧増産は大きな成果が目に見える上、長い時間とお金がかかる。時間稼ぎにはもってこいだ。」

「もう、旦那様らしいですね。その費用を捻出させられないように、ご注意ください。」


「ところで、大変恥ずかしいことを聞くんだけど、国内の人口分布ってどんな感じなの?」

「そうですね。マルチン=ユグノーについては、私も詳しい知見を持っていないのですが、旧帝国内の人口推計1200万人のうち、帝都を中心とする皇帝直轄領に200万あまり、各公爵領に100万づつ暮らしています。」

「ということは帝国臣民の半分はそこに住んでいるんだね。」


「はい、そして侯爵領はおよそ30万と考えると当たらずとも遠からずです。エルリッヒ家はずば抜けて大きいですが、これでおよそ180万、伯爵家がおよそ10万内外で22家の計220万。これで合計1000万人ですね。下級貴族については各家で規模がバラバラですので、一概には言えませんが、人口は数千人から10万人ほどで、平均3万の領地持ち32家で約60万、男爵家も平均1万として領地持ち87家、宗教都市だった2つがそれぞれ5万と考えると、だいたい1200万になります。」


「ホントだ。凄いね、さすがはアーニャさんだ。」

「私ではありませんよ。人口推計の方法は百年以上前に確立したもので、複数の都市や村の課税台帳と実際の住民数を比較して、算出法を作ったと聞き及んでいます。」

「へえ、ガチでやってたんだね。」


「それでも、当家の住民登録制度には遠く及びません。これを本当に実施した旦那様の方がよっぽど凄いと思います。」

「もっと褒めてくれてもいいんだよ。」

「はい、さすがは旦那様です。」

「うへへ!でも、そう考えると、うちなんかまだまだ大した事ないよね。人口なんて公爵家の領都くらいしかいないし、10年前は3万だったんだから。子爵家並って陰口も当たってたんだねえ。」


「確かに、人口だけを捉えると、そういう見方もできます。」

 彼女は、机から1冊の書類を出してくる。


「しかし、予算という観点から見ると、それは全く異なります。これは今年度の帝国中央政府予算書ですが、総予算は13億4千万ディリで、当家は3億7千万ディリです。」

「えっ!そんなもの、どうやって入手したの?」

「帝城の廊下に落ちていたそうです。」


 ウソだ、絶対ウソだ!

 公爵家、恐るべし・・・


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