御祖父様、ご乱心?
帝国歴255年10月
収穫祭も近づいたある日の午後。
「旦那様、大変でございます。ボーエン公爵様が!」
「何、公爵様がどうした!」
「そ、その、屋敷に到着しました!」
「へっ?」
何か急用だろうか。しかし、来るなら事前に連絡があるはず・・・
屋敷に戻るとひ孫と戯れる公爵の姿が。どうやら火急の用件ではなさそうで良かった。
「おう、婿殿!今日の仕事は終わりかな?」
「いえ、そうではございませんが、急なお越しで・・・」
「ハハハ!来てやったぞ。しかもお忍びでな!」
「お忍び・・・公爵様が突然いなくなると混乱するのでは?」
「ああ、公爵の仕事などコーネリアスなら支障ない。儂はひ孫の顔を見に来たのだ。」
うわあ、これアカンやつだ・・・
「婿殿、そのような顔をするものではない。儂は腹が立って仕方がなくての。あいつら、帰って来てから自慢話ばかり。儂がひ孫の顔も見ずに我慢を重ねて一手に仕事して、ケヴィンの尻を叩き、騒乱の始末を付けたというのに、遊びに行っていた奴等ときたら!もう悔しくてな。」
「あの、ご家族に連絡は・・・」
「どうせ言わんでも、行き先は分かっておるだろう。いつもの副団長がおらんのだから。」
う~ん、重症だ。
「でも、先祖祭は出ないといけないのでは?」
「もう、コーネリアスに任せようかな・・・」
これは至急、アーニャさんを呼ばなければ、私の力ではどうにもならない。
「しかし、彼奴もまだまだ甘いな。ロスリーの食を楽しみたければ、夏より圧倒的にこの季節だ。」
「まあ、ミネルヴァ様の学校もございますし。」
「あいつだ!あいつが一番嬉しそうに自慢しおって・・・まあ、可愛かったから良いが。」
「では、客室を準備させますので、ごゆっくりおくつろぎ下さい。」
「何だ、まだ仕事をするのか?」
当然です。
それよりアーニャさんを呼んで来なければ。
「では、ひ孫の世話はお願いします。レミリアもよろしく。」
「はい、お任せ下さい。」
私は全力で逃げ、いやアーニャさんを呼びに行った。




