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リンツ伝  作者: レベル低下中
第三章 家族編
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ローサと難しい話をする

 さて、その日の夜。


「ご主人様、少しよろしいでしょうか?」

「いいよ、でも疲れてるなら無理しちゃダメだよ。」

「大丈夫です。それより、その・・・いろいろと分からなくなりまして。」

「難しい話し?」


「はい。悪魔や魔女はいて、裁判を行うことは正しくて、煮えた油で魔女を退治した逸話もございます。なのに、司教様は間違われたと。正直、何を信じたら良いか分からなくなり、もう、どうしようかと・・・」

「そうだね。教典には確かに、魔女を捕らえて油で退治した逸話があるね。でも、教典にあるのはたった1回のエピソードだけだよ。その時はその方法で上手く行っただろうけど、いつもその方法を採るように、とは書いていないよね。」


「確かにそうです。上手く行く場合と、そうでない場合があるのですか?」

「それは私にも分からない。私だって魔女裁判なんて初めてだったからね。でも、今回は間違っていた。これだけは確かだ。」


「それでは、今までも間違っていたとか・・・」

「残念ながら、それは今となっては分からないよ。」

「そうでした。」


「前にも言ったことがあるけど、かつて黒死病は悪魔の仕業だと言われていたが、病原菌を発見した。あれは悪魔では無く、目に見えない小さな生き物だ。しかし、悪意を持ってそれをばらまく者がいれば、災厄を引き起こす悪魔と言えるのでは?」

「そういうことなのですね。」


「恐らく、教典の解読には、まだ多くの時間と知恵が必要なのだと思う。少なくとも、魔女を煮えた油で退治せよ、とは書かれていないし、曲解は危険だということじゃあないかな?」

「なるほど。いつぞやご主人様が言っておられた、神が間違っているのではなく、それを読む人が間違っているということなのですね。」

「多分、それで合ってると思うよ。」

「難しいのですね。」

「だからみんな、生涯を賭けて、正しい道を探している。」


「私も、もっと頑張らなくてはいけませんね。」

「ローサはよく頑張ってるよ。それに、今は無理しちゃいけない。」

「分かりました。また、迷った時は教えて下さい。」

「一緒に考えよう。そしたらきっと、それは幸せに繋がってる。」

「はい。やはり、ご主人様を選んで正解でした。」

「あれだけ断ったのに?」

「もう、意地悪です・・・」


 騒動の後は、静かだ・・・


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