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リンツ伝  作者: レベル低下中
第三章 家族編
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呪文ってあるの?

「何故、悪魔召喚ができない事になるのですか?」


「まず、証拠品がどこにでもある普通の物だ。干からびた虫の死骸など、探せばどこの家にも落ちているだろう。悪魔を召喚することもしない、呪文も知らない。何一つ確たる物を示してしないのに、出来ると考える方がおかしい。」


「呪文を知らないとは言っておりません。」

「ではここで申してみよ。言えないなら知っていないと見做す。」

「それはあまりに無茶でございます。」

「無茶ではない。これが裁判であり、法である。」

「ここにこれだけの民衆がいるのに、呪文など教えたら、悪用する者が現れます。」


「ならば私だけに教えよ。それとも、私を信用できないか?」

「それは・・・できませぬ。」


「分かった。呪文は知らないと認定しよう。ならば、呪文を知らない者がなぜ、この子が悪魔召喚をしていると分かったのだ。説明せよ。」

「それは、呪文を知っているからです。」

「では、その者をここへ連れてまいれ。」


 目の前に一人の男性が来る。


「そなたは、教会の使用人か。」

「はい、そうです。」


「では、私に呪文を教えよ。これは領主としての命令だ。拒否するなら殺人未遂の罪に問う。」

「そ、そんな・・・誰か、助けて下さい。」

「正直に呪文を教えれば、それで良いだけだ。知っているのであろう?」

「わ、私は奇声を聞いただけなのです!」

「何と言っていた?」

「お、覚えておりません。」

「呪文を忘れたのか。」

「いいえ、奇声を聞いただけで、呪文は分かりません。」


「司教よ、これで悪魔召喚を行っていたという、そちらの主張は白紙になった。よって、この子を解放するが、良いな。」


「お待ち下さい!まだ、この者が魔女であるという疑いが、晴れた訳ではございませぬ。」「悪魔召喚を行った証拠がないなら、教会がとやかく言う権利はないだろう?」

「いいえ、疑いが残っております。」

 この時代は推定無罪どころか、言いがかり有罪だって当たり前だからね。


「では、疑いを晴らす方法があるのか?」

「はい、既に準備もできております。」

 司教が場の一角を示す。

 そこには大きな壺が。


 しかし、何でまあ、こういうときの壺ってもれなく怪しく見えるんだろう・・・


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