呪文ってあるの?
「何故、悪魔召喚ができない事になるのですか?」
「まず、証拠品がどこにでもある普通の物だ。干からびた虫の死骸など、探せばどこの家にも落ちているだろう。悪魔を召喚することもしない、呪文も知らない。何一つ確たる物を示してしないのに、出来ると考える方がおかしい。」
「呪文を知らないとは言っておりません。」
「ではここで申してみよ。言えないなら知っていないと見做す。」
「それはあまりに無茶でございます。」
「無茶ではない。これが裁判であり、法である。」
「ここにこれだけの民衆がいるのに、呪文など教えたら、悪用する者が現れます。」
「ならば私だけに教えよ。それとも、私を信用できないか?」
「それは・・・できませぬ。」
「分かった。呪文は知らないと認定しよう。ならば、呪文を知らない者がなぜ、この子が悪魔召喚をしていると分かったのだ。説明せよ。」
「それは、呪文を知っているからです。」
「では、その者をここへ連れてまいれ。」
目の前に一人の男性が来る。
「そなたは、教会の使用人か。」
「はい、そうです。」
「では、私に呪文を教えよ。これは領主としての命令だ。拒否するなら殺人未遂の罪に問う。」
「そ、そんな・・・誰か、助けて下さい。」
「正直に呪文を教えれば、それで良いだけだ。知っているのであろう?」
「わ、私は奇声を聞いただけなのです!」
「何と言っていた?」
「お、覚えておりません。」
「呪文を忘れたのか。」
「いいえ、奇声を聞いただけで、呪文は分かりません。」
「司教よ、これで悪魔召喚を行っていたという、そちらの主張は白紙になった。よって、この子を解放するが、良いな。」
「お待ち下さい!まだ、この者が魔女であるという疑いが、晴れた訳ではございませぬ。」「悪魔召喚を行った証拠がないなら、教会がとやかく言う権利はないだろう?」
「いいえ、疑いが残っております。」
この時代は推定無罪どころか、言いがかり有罪だって当たり前だからね。
「では、疑いを晴らす方法があるのか?」
「はい、既に準備もできております。」
司教が場の一角を示す。
そこには大きな壺が。
しかし、何でまあ、こういうときの壺ってもれなく怪しく見えるんだろう・・・




