また、一悶着する
帝国歴254年7月16日
デーデンスドルフを陥落させた東北部諸侯連合軍は、オットーシュバルツから北上する味方を待つこと無くこの日、出発した。
目標は20km先の小都市、ブリッテンである。
斥候の情報によると、僅かに守備隊がいる程度のようだ。
「此度の戦も順調そのものよのう。」
「早く終わらせないと、出費が痛いです。後、補給が間に合ってません。」
「そうよのう、オットーシュバルツ経由とゲッツェン経由、どちらが早いか、土地勘がないのでサッパリじゃ。」
「申し上げます。東部陸軍、デーデンスドルフに到達。我が軍に合流まで待機との伝令が参りました。」
「構わぬ。無視せよ。」
「閣下、よろしいので?」
「こんな往来で野営などできるものか。待ってやる必要などない。」
7月18日、ブリッテンを無血開城させ、陣を整えていると陸軍部隊が到着した。
この軍を率いるのは、公爵ヒンメル・シーラッハである。
「これはこれはエルリッヒ伯爵、いや、侯爵でしたかな?」
「お久しぶりですなあ。お会いできないかと心配しておりましたぞ。」
あれ?やっぱり仲悪いのかなあ・・・
「いやいや、こちらも何かと準備があってのう。これからは我らが来たので安心せよ。」
「では、お先にどうぞ。我々は占領した後方の町の統治を行います故。」
「何?我らと進軍せぬと申すか。」
「もう我々は十分働いたと存じますがのう。」
「この7万近い軍勢を儂が率いれば、褒賞一等は確実だというのにか?」
「我が手勢は、これまで100km以上、敵地を占領しながら来ましたが、そこに陸軍はおりませなんだなあ。別にそんなものおらんでも支障はない。帝国を代表する名将と精鋭部隊がここから先、王都まで平らげればよろしい。」
「き、貴様!言わせておけば、無礼であろう!」
「戦場に無礼も非礼もござらん、ただ強いか弱いかがあるだけじゃ。肝心な時に引きこもるような軍勢と行動を共にすれば、命がいくつあっても足りぬわ。」
「儂が怖じ気づいていたと申すか!」
「そう言えば、前回もオットーシュバルツの手前で動かなかった部隊があったとか。」
「よろしい、では、我が力を見せてやる。東部諸侯連合は我が麾下に入り、付いて参れ!」
「では、後ろを付いて行くとしよう。のう、エルハバード卿。」
頼むから巻き込まないで・・・
でも初対面だが分かる! 公爵の無能感がハンパない・・・




