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リンツ伝  作者: レベル低下中
第三章 家族編
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教会からの働きかけ

 ある日の執務室。


「ご領主様、ロスリー教会の司教様が面会を求めておりますが、いかがいたしましょう。」

「うん?司教様が。何だろうね。分かった、お通しして。」

「はい、畏まりました。」


「これはこれはご領主様、不躾ながら突然お伺いしまして、恐縮です。」

「今日はどのような用件で?」

「はい、突然のお話ではあるのですが、ご領主様のローサ夫人に神聖12聖女となっていただくのはどうか、と思いましてな。」

「お断りいたします。」


「まあまあ、ご領主様。そう即決せずとも。これは大変名誉な事ですし、ローサ夫人であれば、人柄といい、信心、これまでの功績といい、申し分ないものでございます。」


「とても有り難い話であるとは思います。しかし、彼女は貴族家の妻、世俗の人間であります。しかも子を持つ母でもあります。とても聖女としての勤めを果たせるとは思いません。それに、彼女は人前に出ることを好む人物でもありません。」


「聖女については、特に出家する必要も処女性を問われる事もございません。また、特に定められた仕事がある訳でもございません。徳の高い人物を認定するものですし、神聖教の教義を具現化した者、教会の象徴として、これまで通りの活動をしていただければ良いのです。」

「そうは言っても、神聖な教会と、世俗の最たる貴族家の適切な距離感は必要だ。」


「そんなことはございません。まず我々の事情ですが、聖女が教典の第五章二十六節のクレモンティーヌと11人の殉職者の逸話から、古来より選ばれ続けたものであることは、ご承知の事だと思います。この聖女について、最後に選定されたのは20年前になります。その後、エル=ラーン王家の破門に伴い、彼の地の聖女が認定を取り消されたほか、諸般の事情により、現在は9名にまで減少しております。そして、この大陸有数の帝国には、聖女認定された者がおりません。今般、総本山から新たな聖女認定を行うに当たって、特にグラーツ国内での認定を念入りに進めよ、という指令がございました。しかし、そのような者がそう簡単にいるはずがございません。そこで、夫人にお願いしようと考えた次第でございます。夫人の信心は疑いようがございませんし、孤児や病人への慈悲深い活動など、他には無い特筆すべき功績をお持ちです。お人柄も大変良く、余人を持って代え難いと考えます。是非、我々を助けると思って、どうか、よろしくお願いしたい。」


「それでも、妻は承諾しないと思いますよ。」

「そこを何とかお願いしたいのです。まあ、そうは言っても、本人不在で決めてしまうというのも何ですので、後日お答えを聞かせていただきたい。」

 そう言って司教は帰っていった。


 一応、彼女に相談したが、やはり丁重にご遠慮された。

 そりゃあ、そうだろうと思っていたら、2日後、司教が屋敷にやってきた。


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