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リンツ伝  作者: レベル低下中
第三章 家族編
534/1781

2月の定例報告

帝国歴253年2月



 ついに、「星降る夜に」が校了したようだ。これから印刷工廠に持ち込み、木版の製作に取りかかる。

 数ヶ月後には初版が完成するだろう。

 まだ読んでいないが、どんな物語なんだろう?


 また、職業技能研修制度が正式に発足した。

 これは今まで完全な徒弟制度に依存していた人材育成を体系化し、さらに当家から補助を行い、研修期間の雇用を保障したものだ。

 21世紀の外国人研修生に近いものである。

 これももっと早く行っておけば良かった制度の一つである。


 また、ガーゴイル地方の測量と製図も完了した。分かっていたことだが狭い。

 約50㎢増加して3,424㎢になった。

 まあ、その割に人口が6,000人もいるが・・・


 オツテンブルクの石灰石鉱山も本格的に操業を開始した。

 これはロスリーやサッツなどとは比較にならないほどの大規模な鉱山で、露天掘りが可能であるが、アクセスが悪い。

 まあ、これでコンクリートや消石灰の心配だけはなくなった。


 他には、帝国大学の調査で、マルチン=ユグノー北東部、もとい、帝国領ユグノーにおいて大規模な炭田が発見されたそうだ。

 ただし、ほとんど人が住んでいない地域であり、採掘は困難とのこと。これは何とかしたい。

 また、帝大には引き続いての調査を依頼した。


 製紙第二工廠がイーラム近郊、ニルヴェ川沿いに完成した。

 ここでは主に用紙を生産する予定。

 これに合わせて、エル=ラーン国内からの木材輸入も本格的に開始する。

 これによって木材不足がやや緩和するか。

 また、同国内で土地を確保し、植林用の苗木生産も春から開始する。

 作業員は現地雇用だ。


 また、アスペル商会が、菓子原料の集積場所を帝都郊外に建設したそうだ。

 セントラルキッチン方式は採らないが、こまめな配送による、鮮度の高い商品提供が可能になるだろう。


 化学第5工廠では、ゴム製品の本格生産も始まる。

 また、プラスチック製品としてメガホン、洗濯ばさみ、ハンガー、洗面器、ストローの生産も始めた。

 こちらも原料全て天然素材のため、大量生産とまでいかないのがもどかしいが、売れ筋には違いないだろう。


 さらに、精密機械工廠で拳銃と消音器、腕時計の生産が始まる。

 これは少量受注生産で、基本は献上品であり、儲けを目的としたものではないが、こういう物を作れるということに意義がある。


 その他、スーディルの第2次都市再開発計画策定も指示した。

 正直、あの迷宮都市に手を入れる自信はないが、長年の懸案でもある。慎重に行こう。


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