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リンツ伝  作者: レベル低下中
第三章 家族編
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老兵は死なず

「いやあ、どの事業も順調そのものだし、言うことなしだね。」

「そうでございますなあ。特に若様がお戻りになってからは、さらに人材が充実しましたからなあ。」

「これで戦さえなければ、というところだね。」


「それで、こういう落ち着いた時だからこそ、ご相談したいことがございます。」

「うん、どんなこと?」

「はい、私ももう57才になりますので、年度末をもって引退したいと思います。」

「う~ん、そりゃあいつかは来るものとは思っていたけど、早すぎない?」

「いいえ、もう57です。孫もすぐに大きくなってしまいますし、老後の楽しみ、という所ですかな。」


「でも、セバスがいないとなると、痛手だな。」

「それも大丈夫です。ルーデルもその頃には1年になりますし、パウロも非常に優秀です。奥方様もおりますし、むしろ今でないと、却って私が老害になってしまいます。」


「もう少し、何とかならない?」

「若様、いずれは必ず来ることです。順調な時だからこそ、世代交代を進めておかないとなりません。」

「寂しくて耐えられそうにない・・・」


「ほほほ、別に近所に住んでおりますし、何かございましたら、お声を掛けていただければ、いつでも馳せ参じますぞ。」

「じゃあ、リンツ伯爵家顧問に就任してよ。」

「顧問ですか?私が?」

「いざというときの備えだよ。非常勤でいいし、給料も出すからさ。」


「まあ、給金はこれ以上、必要ございませんな。退職金もあるようですし。」

「いや、出す。それと週に一度くらいは出てきて欲しいな。お孫さんと遊んでるだけでいいから。ウチの子のお姉ちゃん代わりによろしく。」


「ほほほ、全く、若様は本当に・・・まあしかし、お仕えし甲斐がありましたぞ。」

「まだ半年はあるんだから、まだまだ働いてもらわないとね。」

「畏まりました。最後まで、お仕え致します。」

「でも、もう何年かは居てくれると思ったんだけどなあ。」


「私も、もう少し若ければ、と思うことが無い訳ではございません。しかし、最初の30年は、ただお家が衰退するのを見ているだけでございましたし、最後の8年が特別だったのでしょう。」

「でも、セバスの活躍がなかったら、今のリンツ家はないよ。それどころか私が領地改革に着手する前に没落していたはずだよ。本当にありがとう。」

「そう言っていただけるだけで、身に余る光栄にございます。」


 どうにも寂しい。それ以外に言葉が浮かばない・・・ 


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