また来年に
今日は収穫祭。
でも、身重な2人は屋敷でお留守番である。
「外は賑やかですね。」
「そうですね、収穫祭は初めてだったのですが、残念ですね。」
「あの人混みは危険だよ。」
「どのような出し物があるのですか?」
「主な出し物は仮装行列とその後に続く、市民の大ダンス大会だね。今年からは軍楽隊がパレードだけじゃなく、ダンスの伴奏も行うよ。もちろん夜は花火も打ち上げる。その他には大道芸や物産展も行われるんで、かなりの人出があるみたいだよ。」
「とても楽しそうですね。来年は是非近くで見たいですね。」
「奥方様、来年は一緒に出かけましょう。」
「はい、是非案内して下さいね。あっ、楽隊の音楽が聞こえてきました。」
「きっとその後ろに仮装行列がいるね。」
「間近で見ることはできませんが、雰囲気は伝わってきます。」
「そうですね、お祭り独特の雰囲気ですね。」
「来週は学校の運動会だけど、そちらなら大丈夫だからね。」
「本当にこの街には楽しい事がたくさんありますね。」
「そう言えば、今年は帝都に戻れないね。」
「はい、先祖祭は欠席のお返事を書きました。それに子供がある程度大きくなるまでは、長旅はできませんしね。」
「御祖父様も残念がるね。」
「いいえ、ひ孫ができるので、大変お喜びになると思います。」
「ケヴィン様たちも近いだろうしね。」
「お兄様はどうなのでしょう。まだまだのようにも思われます。」
「その可能性もあるね。リサさんもああ見えて、いざとなったら控え目になりそうだし。」
「そうですね。そこがリサの良い所ではあるのですが。」
「そう言えば、弟さんが入学したんだよね。」
「はい、でもメンフィスはお兄様以上に大人しいのです。いい子ではあるのですが、旦那様もほとんどお会いになられたことはないでしょう。あまり自分の部屋から出て来ないのです。」
「まあ、貴族社会は大人しい人に、あまり優しい世界じゃないよね。」
「そうですね。正直、私もあまり得意ではありません。」
「私もおそらく馴染めないと思います。」
「その割にはお祭りに行きたがっているような気が・・・」
「まあ、それとこれとは別ですわよ。」
「ああ、ちょっと外に食べる物を買って来るよ。」
「花火が始まるまでにはお戻りくださいね。」
「そうだね。祭りならではの物を沢山買って来るよ。」
お楽しみは、また来年だ。




