穏やかなひととき
「しかし、おめでたい。」
「来年の7月8月は出産続きになります。」
「そうですね。神に感謝しないといけません。」
「ところで、乳母はいかがいたします。」
「アーニャさんの時はどうだったの?」
「はい、私の場合は授乳してくれる方と、エミーリア様の二人でお世話して下さったと聞いております。」
「エミーリア様が?」
「はい、今は第二夫人ですが、当時はまだ、お母様の従者をしておりまして。」
「さすが公爵家、伯爵令嬢を従者にしてたんだ。」
「母はエッセン侯爵家の出ですが、私とリサ同様、エミーリア様とは幼なじみで、お父様と3人でよく遊んだ仲だということです。」
「シュタインバッハ家は2代続けて公爵家に嫁いだ訳ね。」
「ええ、エミーリア様も姪が嫁いできて喜んでおりましたし。」
「そうかあ、じゃあ、どうしようかなあ。」
「旦那様はどうだったのですか?」
「授乳してくれた人はいた。乳母というか何というか。でもだいたいはマリアさんとオルガさんが世話してくれたんだよね。田舎の貴族ならまあ、そんなところじゃないかな?」
「では私が乳母をやります。丁度よろしいではありませんか。そして、できるなら奥方様のお子の従者に。」
「アルマさんが?まあ、適任ではあるけど、乳母ではなく、3人で交互に授乳すれば、個々の負担は小さくなるんじゃない?」
「私の子を奥方様がですか。それはなりません。」
「いいと思うんだけどなあ。なあローサ。」
「はい、私はやります。」
「もちろん、私もやります。誰が誰の子など、些末なことです。」
「そうだね。私も従者より生涯の友達がいいな。」
「旦那様、奥方様、ローサさんまで・・・」
「じゃあ、乳母は付けないことでいいかな?」
「お任せください。」
「それじゃあ、東の広間を出産と育児の部屋にしよう。巨大サイズのベッドを作って。」
「それはいいことですね。」
「そうと決まれば家具屋に直行だ!」
「あ、あの、うちの主人は・・・」
「大丈夫でしょ。」
「は、はい・・・」
「それより、アーニャさんとアルマさんは実家に知らせないとなあ・・・」
先に決めた者勝ち。




